32年間の材料開発で、セラミックスや金属、高分子材料まで担当し、金属以外の2つの材料分野で日本化学会や写真学会、化学工業協会、印刷学会などから賞を頂ける技術を研究開発成果として出すことができた。学位論文にはセラミックスと高分子材料のプロセシングがまとめられており、審査してくださる大学を探すのに苦労した。その過程で学位取得の裏側事情も知ることになり、学位というものが世間で評価されない理由も理解できた。
30歳を過ぎるまで物事の裏側事情など考えずに純粋に生きてきたが、学位取得の苦労で学問というものにも裏があるという現実に愕然とした。今は年を重ね、世間の多少のことには驚かなくなったが、当時はその裏側事情に接する度に驚きが新鮮な興味に変わっていった。
高分子材料技術にも裏側事情があり、例えば成形技術とコンパウンド技術の関係は面白い。前者の学会に参加し、その技術分野の最終ゴールを質問すると「どのようなコンパウンドでも成形できる技術」という回答が返ってくる。もの凄い理想であると同時にこの学問は永遠に完成しない、だから研究者は食いはぐれは無いだろう。学問として正しいゴールかどうかは知らないが、研究テーマに困らないゴールである。
後者は担当している材料により研究者の答は様々で、新材料を追求するというミッションを答える研究者が多い。高分子には多数の種類があるので組み合わせは無限に近く、こちらもテーマに困ることなく永遠に研究開発を継続できる分野である。
ところでタイヤのような高性能なゴム製品のプロセシングには未だに生産性の悪いバンバリーとロールが混練プロセスで用いられている。しかし、樹脂材料やTPEでは生産性の高い二軸混練機が用いられる。高性能ゴムに生産性の悪い混練プロセスが用いられているのは、そのプロセシングを用いなければ性能を出せないからである。すなわち、この事実は混練プロセスがコンパウンドの性能に大きく関わっている、ということを示している。
退職前の5年間外部の樹脂メーカーと性能の悪い樹脂について何度も議論したが、混練技術に問題は無い、と最初に必ず回答が返ってくる。すなわち樹脂の性能品質がお客様のニーズに合わない原因として混練技術は最初に除外事項とされてしまうのである。純粋な若僧であれば樹脂メーカーの技術者をうっかり信じてしまうが、成形技術を担当した時はその様な年齢ではなかった。
納期が目前に迫っていたあるテーマで、混練プロセスの中古機を買いそろえ3ケ月で生産立ち上げを行う、という離れ業をした。その時には同じ材料メーカーの原料を用いながら混練プロセスを変更しただけで、それまで樹脂メーカーが実現できていなかった性能を簡単に実現できた。
混練プロセスの変更に伴うコンパウンドの価格は、内製化のため原料の価格と設備の固定費で決まる。この時、樹脂メーカ-が混練プロセスを変更したくなかったのはコストへの影響のためだが、わずかなコスト上昇を躊躇したために、お客様の内製化という決断を引き出し市場を失うという結果になった。
混練プロセスの変更は利益を圧迫するので対策として採用したくない、というのが裏事情である。お客は混練プロセスなど知らないから問題ないとごまかせば、それで済む、と安直に考えたのか、その樹脂メーカーの技術レベルが低かったのか知らないが、どんなことがあっても混練プロセスを変更したくない、という裏事情が樹脂技術にはあるようだ。
混練プロセスの変更は多くの場合コスト上昇となるが、この時の内製化技術ではコストへの影響を最小限とする方法で対応した。退職した会社から特許がすでに公開されているが、二軸混練機の先に弁当箱のような装置をつけただけである。ゆえに生産性への影響はほとんど無くコスト上昇は弁当箱の固定費分程度である。この弁当箱のような装置にはゴム技術で学んだ知識が詰められている。この弁当箱に興味のある方は問い合わせください。
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昨日まで中国の華南にある某会社に依頼されコンサルティングをしてきた。日本企業とは取引が無く中国国内の市場で成功している樹脂会社だが、そこで生産されている製品品質は日本の100円ショップのそれよりも劣っていた。しかし、それでも中国国内の市場で成功しているので中国のお客様の品質基準を満たしていることになる。
市場で成功していても経営者はそれなりの問題意識を持ち依頼してきたわけだから、向上心は旺盛である。恐らくこのような企業は指導すれば、1年程度でそこそこの品質を作れる会社になる可能性がある。
問題は、中国市場のお客様の品質感覚である。上海のデパートの樹脂製品は、海外製品が多いので品質がそれなりに見えた。しかし華南の市街にある雑貨店に並ぶ樹脂製品の品質は日本の100円ショップよりも明らかに劣っている。それでいて日本の100円ショップよりも値段の高い製品が存在する。このような市場へ同価格で高品質の製品を投入すれば確実に目立ち、さらに売り上げを伸ばすだろうと思った。
しかし、朝早く帰路の空港の喫茶店でサンドウィッチを頼んだら、待たされたあげくとんでもない見栄えのサンドウィッチが出てきた。食パンの端部(みみ)が使われているのだ。さらに目玉焼きとハムがはさまれているのだが、それが焦げている。炭にまでなっていないが黒焦げだ。店員にクレームをつけたかったが、複雑な中国語を話せない。
100円ショップの樹脂成型品よりも品質の劣る製品が売れる国である。焦げた目玉焼きやハムなど平気なのだろう。さらに食パンのストックが無かったから昨日の残りのみみでサンドウィッチを作ったのは良いアイデアとでも思ったのかもしれない。毎晩接待されたレストランは日本以上のサービスもあり高品質であった。品質のばらつきの大きな国である。このような国で売れていても自社の品質に問題意識を持った社長は優れた経営者だろう。
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アイドリング時と高速走行時の両者で振動吸収できるゴムを樹脂補強ゴムで30年以上前に開発した。この時勉強になったのは、同一配合であってもプロセスが異なると耐久試験の結果に大きな差が出る、という経験をしたことだ。この経験のおかげで高分子材料を配合処方だけでなくプロセス履歴も総合して眺める習慣がついた。
ゴムの耐久試験方法は幾つかあるが、スクリーニングの段階で行う評価法として繰り返し引張耐久試験法が用いられる。エンジンマウントの場合には圧縮永久歪みが耐久試験として重要だが、最初のスクリーニングは繰り返し引張耐久試験法を行うのが良い、と習った。
繰り返し引張耐久試験法は圧縮永久歪み試験よりも過酷である。しかし、スクリーニングで過酷な試験を行っておけば、商品化の段階で行われる品証評価でトラブルを防ぐことができると教えられた。また、過酷な試験法はエラーの検出感度が高い試験でもある。
この高い感度のおかげで、新入社員の1ケ月は何度もロール練りの工夫をすることになった。すなわち、レオロジー特性は良好でも耐久試験に通過しないサンプルばかり作っていた。その結果耐久試験とプロセスの関係が体に染みついた。
樹脂補強ゴムはTPEの仲間であるが、一般のTPEは二軸混練機で製造される。昔はコポリマーのTPEが多かったが最近はコストの安い動的加硫されたTPEが増えている。新入社員時代に開発した樹脂補強ゴムは二軸混練機で動的加硫して製造することも可能であるが、バンバリーとロール混練で製造された材料に比較すると極端に性能が悪い。
耐久試験は100倍異なり、圧縮永久歪も10倍以上異なる。同一処方でこれだけ圧倒的な物性の差を体験すると高分子材料におけるプロセシングとは何か、という問題意識を持たないほうがおかしい。バンバリーとロール混練のプロセスを用いた場合でも、ロール混練の技が未熟であると耐久試験で10倍、圧縮永久ひずみで4倍ほどの差が出る。
このテーマのあと高分子の難燃化技術開発を担当し、その難燃化技術で見出した高分子材料変性技術を用いた高純度SiCの開発をスタートするのだが、防振ゴムの開発で体験した高分子のプロセシングの効果は強烈な印象として残っている。セラミックスの開発に比較すれば短期間であったが、ロール混練に関しては職人並みの技を身に着けた。
ロール混練で悩まれている方はご相談ください。
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東京モーターショー2013で樹脂製ボールベアリングを見つけた。すでにハンドルの部品として実用化され、軽量化とコストダウンに寄与しているそうである。エンジニアリングプラスチックスの用途として過酷な使用環境である。実用化するためには、それなりの信頼性試験が要求されたと思われる。
樹脂は軽量化とコストダウンを実現する手段として自動車部品に使用されていることは知っていたが、金属部品しか使用できそうもない、と思っていたところにも樹脂が入ってきている。かつてセラミックスフィーバーの時に、自動車部品にセラミックスが普及したが、その置き換わったセラミックス部品の幾つかは、また耐熱合金に市場を奪われている。ファッション機能だけで普及した部品はコストダウンの波に勝てないのである。自動車部品の樹脂化は軽量化とコストダウンの2つの目的でどんどん進んでいるようだ。
国内の汎用樹脂事業は、統合に次ぐ統合で苦戦が続き、エンプラ分野も一部はコモディティー化が進み、コスト競争に移ってきている。素材会社は大変だが、部品メーカーは技術力があればそれなりの商売ができているのかもしれない。
ここで技術力とは評価技術である。すなわち自動車分野では軽量化とコストダウンの目的のため、金属から樹脂に置き換える動きは今後も続くが、その時に金属なみの信頼性を樹脂で確保できるかどうかが鍵になり、そのためには信頼性試験をうまくできなければならない。金属材料と同じ評価試験を行うのは当然だが、樹脂の弱点が信頼性に影響を与えていないかどうかを見るための評価技術が重要となる。
この評価技術は樹脂の問題点をよく理解していなければ構築できない。高分子科学についてはアカデミア以上の経験が要求される難しい分野である。評価技術で悩んだら弊社へご相談ください。自動車部品メーカーと精密機器メーカーで高分子材料の開発から評価技術開発まで多くの実績があります。
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高純度SiC前駆体は、フェノール樹脂とポリエチルシリケートを酸触媒存在下で反応させて均一混合を実現している。有機無機複合材料の合成手法として30年以上前には画期的な方法だった。この30年間に京都大学中條先生や東京理科大阿部先生、郡司先生その他無機高分子研究会に関係されている諸先生方により、様々な有機無機複合材料の新しい合成手法が提案された。
分子レベルでハイブリッドにする方法以外に多段湿式法という超微粒子を均一に混合する手法もセラミックス合成において有機無機ハイブリッドと同様の効果があることが見いだされた。すなわち新しいセラミックス材料を合成するときに分子レベルまで均一に分散していなくてもナノオーダーレベルの超微粒子を用いれば同様の効果が得られるらしいことが分かってきた。
ここで「らしい」と書いたのは、高純度SiCの反応機構解析を行ったときに、前駆体中にエアロゾルのシリカを混合した場合には、気相反応が少し関与することが観察されたからである。しかし、多少反応機構が変化しても生成するSiCの形態に大きな影響は無かったが、シリカ源としてエアロゾルの割合を増やすと、SiC化の条件によってはウィスカーが生成する場合がある。フェノール樹脂とポリエチルシリケートから合成した場合には、どのようなSiC化の条件でもウィスカーは生成しない。
このように前駆体の構造(分子レベルで均一になっているのか、超微粒子で構造を作っているのか)は生成物に多少なりとも影響を与えるが、工業的見地からは経済性が優先される。ナノオーダーの超微粒子でも分子レベルで均一に分散した場合でも生成物に大きな影響が無ければ、経済的に有利な手段が選ばれる。一般に金属アルコキシドの価格は高い。
そこで超微粒子を有機化合物と均一に混合する新しい経済的な手法が意味を持ってくる。写真会社に転職してこのような問題意識も有り、ゾルをミセルに用いたラテックス重合技術というアイデアを煮詰めていた。また、セラミックス合成の前駆体以外の用途として、薄膜にセラミックス超微粒子の持つ機能を付与したい場合にもこの方法は有効である。たまたま転職した写真会社でこの技術を実用化しなければならない状況になった。1991年の話である。
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ポリアセチレンが発見されるまで、有機半導体の研究は、どこまで導電性が上がるのかが興味の関心だった。「有機半導体」という教科書を購入して間もなくポリアセチレン発見のニュースを聞き、高価な教科書がゴミになった悲しい思い出がある。
ホスファゼン導電体の研究は、プロトン導電体として企画された。大学院の修了式を終えた後、残務整理として10日ほどでまとめた。導電体以外に数種類新規のホスファゼン誘導体を合成して楽しんだ。大学の研究生活が楽しくて上京するまで実験していた。
ポリアセチレンが発見された後だったので、研究の価値はほとんど無かったが、これが電気粘性流体用絶縁オイルの設計やLiイオン電池の電解質用難燃剤へのアイデアにつながってゆく。この経験から研究というものが時代の流れで大きな価値を失ったとしても納得のゆくまでまとめる必要がある、と学んだ。指導してくださった先生に感謝している。
会社を退職して満足な研究環境ではないが、会社で十分にやりきれなかったことについて見直しを進めている。セラミックスから有機高分子まで、タイヤや防振ゴムからSiC半導体や感光体、電子情報機器まで様々な材料や商品の開発を経験した。大学では体験できないことである。企業の研究開発の面白さでもある。
ホスファゼン導電体同様に今では研究開発テーマとして価値の無いものもあるが、少しずつまとめてみると、面白いことにそこから未来が見えてくるのである。これは経験者で無ければ理解できないことかもしれないが、一生懸命開発していたときには気がつかなかった技術の新しい応用方法が見えてくるのである。温故知新という言葉が好きだが不易流行という言葉が合っているのかもしれない。
技術の営みには不易のものがあり、それが新しい技術を生み出す原動力になるのであろう。ホスファゼン導電体を導電体として見ている限りでは、不易はわからない。しかし、PN環の特殊性は不易のものである。その特殊性は時代のニーズの流れの中で新しい発見も加わりいつの時代にも新素材として生まれ変わる原動力になっている。技術も製品化ではそれが具体化された姿しか見えないが、それを概念として眺めなおすと新しい機能を生み出す手段に見えてくる。
本欄ではサラリーマン生活32年間の研究開発生活を中心に書いているが、見えてきた未来について別途HPを立ち上げ未来技術をまとめる企画を検討中。
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複合材料の設計にタグチメソッドは便利である。また複合材料の設計思想として強相関ソフトマテリアルの考え方はハードマテリアルにも使用できる。この両者の手法は時々材料設計に利用している。
25年ほど前にセラミックス製切削チップを企画した。当時SiCで鋳鉄を研磨できないと言われていた。表面にフェロシリコンが生成し摩耗速度が速くなるケミカル摩耗が進行するため、と言われていた。SiCをベースにした切削チップでこの常識にチャレンジした。
当時Si-Al-Cの3成分の相図について研究報告が出始めていた。またSi-Ti-Cに関する研究も行われていた。ゆえに情報が出始めたこれらの組成に着目し、プリカーサー法で元素を均一に混合する技術を使用し、S―Ti-Al-Cという新材料の合成を企画した。開発効率を上げるために実験計画法を用いた。ただし、ラテン方格の外側には、荷重を変えた硬度測定で観察される亀裂の幅を変数に割り付けた。
タグチメソッドなど知らなかった時代に、タグチメソッドの感度をラテン方格の外側に割り付ける実験計画法を行っていた。これは新入社員時代から開発戦術として統計手法にこだわり続け編み出した方法である。特性値をそのまま割り付けると実験計画法で見いだした条件で最適解が得られないことが多かった。ゆえに研究所では実験計画法が使われなくなったのだが、これをうまく使いこなすことにこだわり続け、相関係数を割り付ける方法を考案した。不思議なことに、この方法で行うとうまく当たるようになったので、愛用戦術の一つになった。
TEOSと、Alイソプロポキシド、Tiイソプロポキシド、フェノール樹脂を高速撹拌し前駆体を合成した。ここで、アルコキシドだけ事前に撹拌しておくとフェノール樹脂との反応をマイルドに行う事が可能になる。なぜかという理由は化学の専門であれば考えるとすぐにわかる処方である。SiC化の条件と同様にして、36種類の処方で粉体を合成した。得られた粉体をそのままHPにかけると、99%以上の密度まで全ての処方が焼結した。処方の中には、低温度で液相を生成する場合もあったので、36種の粉体でHPの条件は異なっている。
驚くべきことに、硬度計によりつけられた亀裂から求められるK1cが20を越える処方が一つ見つかった。他の処方は、高くてもせいぜい8前後である。ちなみにSiCは2-3と計測される。20以上というのはサーメット製の切削チップと比較しても遜色の無い材料である。電子顕微鏡で組織観察を行うと、大変細かい組織が得られていた。すなわち、焼結過程で液相が生成していてもSiCが異常粒成長を起こしていなかったのだ。
この材料で切削チップを作成し、東京都立工業技術試験所で評価して頂いたら、鋳鉄の研磨ができたのである。それを狙って材料設計したのだから当たり前の結果であるが、当時びっくりしたのと感動で、太い鋳鉄が何本も細くなってゆく評価実験を見ながら涙が出てきた。
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TEOSをフェノール樹脂球に含浸させて熱処理を行うと、シリカが炭素中に傾斜組成で分散した球体を製造することができる。熱処理温度を変えることで、中心部分の炭素の抵抗を制御できる。シリカは表面部分に濃度が高く中心にゆくに従い少なくなる傾斜組成をとっている。この分散の仕方は含浸条件を制御することで自由にデザインできる。すなわち表面を高抵抗にして中心部分を導電体にした、帯電しやすく放電しやすいという矛盾した性質を持った粉体を設計できる。
この粉体は電気粘性流体用に開発された材料だが、その技術は昨日書いたC-SiC繊維の技術をそのまま使用している。ゆえにこの粉体を1600℃以上で焼成すれば、表面がSiCの粉体を製造可能である。ところがSiC化まで進行させると、表面の抵抗が10の8乗Ωcm以下まで下がるので電気粘性流体には使用できない。電気粘性流体にこの粉体を利用する場合には、1400℃以上の熱処理を行ってはいけない。
この傾斜組成の粉体(これをAとする)の御利益がどのくらいあるのか電気粘性効果で比較したことがある。フェノール樹脂球を炭化した後TEOSで表面処理し、表面だけにシリカを析出させた粉体(これをBとする)、非晶質シリカとフェノール樹脂をメタノール中で混合後スプレードライして製造した、シリカ分散カーボン(これをCとする)について電気粘性効果を評価したところ、A>C>>Bとなった。
Cの材料でそこそこの性能が発現しびっくりした。当時のプロジェクトで評価していた粉体と同程度の性能が出た。実験結果を基に考察を進めると、Cでも帯電しやすく放電しやすい性質を持っていることがわかった。
二律背反の物性を持った材料を設計するときに、複合材料設計というのは考え方の定石であるが、どのように設計したら良いか、すなわち複合化方法にはどのような方法があるのか可能性のある複合化手段をすべて評価しておく必要がある。この時実際に材料を製造し評価するのが最も良いが、時間とコストの問題がある。その時便利なのがシミュレーションである。どんな場合でも適用できるシミュレーション手法があるのでご興味のある方は問い合わせください。
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炭素繊維はエジソンの発明だが、東レのPAN系炭素繊維で新素材としての用途が拡大した。ピッチ系炭素繊維や、故矢島先生のジメチルポリシランを前駆体とするSiC繊維など各種無機繊維が登場したが、東レの炭素繊維が最も多く使用されている。コストも下がってきており、自動車用途にも使用されるようになった。
SiC繊維が登場した数年後に開発されたC-SiC繊維は、表面がSiCで中心が炭素繊維という傾斜組成の繊維である。炭素繊維をFRMに応用しようとしたときに界面で金属炭化物が生成し脆くなる問題がある。その問題の解決を狙い、約30年ほど前に表面だけSiC相を形成した繊維を開発した。
作り方はフェノール樹脂繊維(カイノール)にTEOSを含浸させ、特殊なパターンで熱処理を行い、最後に1600℃以上で焼成する。この最後の温度は2000℃まで上げることが可能で、ポリジメチルシランを前駆体とするSiC繊維を1500℃以上に上げると著しい強度低下が生じる欠点があるのに対し、差別化の特徴となっている。
ポリジメチルシランから合成されるSiC繊維が1500℃以上の熱処理で強度低下を生じるのは、繊維を形成していた非晶質SiCが結晶化するためで、結晶化を抑えるためにTiを添加したチラノ繊維が上市されている。しかし、C-SiC繊維は、傾斜組成となっているので、1600℃以上の高温度で熱処理を行ってもSiCが異常粒成長することなく繊維形状を保ち、強度低下はわずかである。
面白いのは繊維断面の顕微鏡写真で、CとSiCとの界面が見えない。但し、XMAでSiのマッピングを行う事は可能で、中心までSiは拡散していないことがXMA像でわかった。
約30年前に少し研究しただけなのでデータは少ないが、Alを用いたFRMの検討まで行っている。炭素繊維を用いたAl基FRMはAl単体よりも強度は上がる。しかしC-SiC繊維を用いたFRMは、それよりも強度が上がり靱性が著しく高くなる。界面のSiCの効果である。
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TPEとは、加熱すれば流動して通常の熱可塑性プラスチックと同様の成形加工ができ、常温ではゴム弾性を示す材料である。ちょうどゴムと樹脂の両者の性質を持った材料である。通常の加硫ゴム成形体がバンバリーとロールで混練され成形工程で加硫に長時間かかるプロセシングの問題を一気に解決した。
しかし、動的に使用される部分には加硫ゴムほどの信頼性に乏しく、全ての用途を置き換えるまでに至ってない。この状況はおそらく将来もかわらないであろう。なぜならTPEの加硫ゴムと異なる特徴が熱可塑性であり、また分子間で自己補強性を持っている点である。特に前者の特徴から高温クリープという点で加硫ゴムと同等の性質にならないことが予想される。
TPEの分類方法は教科書により様々であるが、架橋型と非架橋型の分類が理解しやすい。この分類は、高温では流動するが常温では塑性変形を阻止するTPEの仕掛け、すなわち拘束成分に着目している。架橋型には、拘束形式が動的加硫を行うタイプとイオンクラスターによる場合がある。非架橋型には、凍結相や水素結合、結晶相という拘束形式がある。
TPEが登場してすでに70年以上が経過したが、未だに特許出願が多数行われている発展途上の材料である。特に1980年前後に登場した動的加硫技術によるTPEに関する特許が多い。タイヤをはじめ厳しい条件下で使用される歴史のある加硫ゴムに比較し、機械物性が圧倒的に低いからである。
TPEと古典的加硫ゴムとの機械物性の差はプロセシングの改良を行わない限り埋まらないのではないかと考えている。それは30年前に樹脂補強ゴムを開発した経験から、古典的加硫ゴムにおけるプロセシングの効果が身にしみついているからかもしれないが、加硫剤の分散一つ取り上げても二軸混練機で容易にロール混練並の分散を実現できると思えないからだ。もしこの点に疑問を持たれた方はご質問ください。
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