コンパウンディングで使用するフィラーは、その供給メーカーにより粒度調整がすでに行われている。
しかし、カーボンのようなストラクチャーを形成している粒子を添加する場合には、混練中にそのストラクチャーが破砕されて分散する場合もある。
このような粒子の粉砕理論については、1800年代にRittinger (1867年)とKick(1885年)により法則が発表されて以来研究されてきて、Bond(1952年)の仕事により形式知が完成したと言われている。
すなわち、固体の粉砕に必要なエネルギーとその粒径、あるいは生成比表面積との間には一定の関係がある。
ちなみに、粉砕による微粒子化の限界は、1987年頃0.5μmと予想されていた。しかし、現在では10-30nmの粒子を簡単に生成できるようになった。
ただし、一次粒子を小さくできても高分子にフィラーとして添加されるときには数μのアグリゲートとなっている。
粉砕による微粒子化には形式知から限界が見えていたので、化学合成や蒸発、晶析などを活用し、一次粒子の超微粒子化の努力がセラミックス分野で1980年代になされている。
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科学的ではない経験知から生まれたアイデアでも、形式知に基づく一流コンパウンドメーカーの技術レベルを越える技術に結びつけることができる。
そして、このきっかけになったのは、過去に経験したセラミックス粉体処理プロセスで学んだ伝統的形式知である。
これを参考にして、高分子中におけるカーボンの分散状態をパーコレーション転移の概念により考察した。すなわち温故知新の姿勢である。
セラミックス成形体製造プロセスにおいて、粉体処理プロセスは重要な技術であり、混合と分散に関する形式知についてセラミックス分野では古くから整理されている。
例えば、スラリーを製造するときに、「だま」の生成は注意しなければいけない、とセラミックスのプロセシング技術では指摘されている。
混練におけるフィラーの分散でも同様であるが、原料投入前に存在する「だま」の生成とそれがコンパウンドに及ぼす影響を見落としがちである。
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日本語では微粒子が集まると粉体と呼んでいるが、英語では粒子の凝集体について、そのサイズにより呼び方が異なっている。
粒子の一個一個は、primary particleと呼び、これは一次粒子と日本語で訳される。この一次粒子が集まると日本語では凝集体であるが、英語ではaggregates(アグリゲート)とagglomerates(アグロメレート)に分かれる。
さらに溶媒中でアグロメレートは、粒子が十分に濡れ凝集体の中に全くボイドを含まないflocculation(フロキュレーション、凝集)となり、一次粒子が十分に溶媒に濡れて分散した状態までdispersion(ディスパージョン)する。
粉体の分散に関して、日本語よりも英語のほうが現象を表現する言葉が多い。それゆえ、実務の現場でもアグロメレートがフロキュレーションを起こし、しばらくしたらディスパージョンした、などといった会話が飛び交い門外漢には理解できない場合がある。
しかし、これはこの分野における短い日本語表現が無いためで仕方がないことである。
また、湿式粉砕では、一次粒子と溶媒との濡れという現象が重要で、一次粒子の表面が十分に濡れるようにするために界面活性剤の添加も湿式粉砕で行われる。
この時、焼結で必要な助剤と呼ばれる添加剤も同時に添加し、超微粉砕と混合が同時に進められる。
ここで注意しなければいけない現象がある。粉砕には、体積粉砕と表面粉砕の2つの現象がセラミックス分野で知られている。ところが、混練の教科書にこの問題が取り上げられていない。これは、混練でも起きる現象である。
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高分子へフィラーを分散した時に生じる現象では、フィラーと高分子との相互作用を考えなければいけないので複雑になる。
そのため分配・分散モデルによるシミュレーションが長年研究されてきたにもかかわらず、現実の系と一致する満足な成果が未だに得られていない。
ところで、このようなフィラーの分散と混合のプロセスで発生する現象に関しては、セラミックス分野でも類似の現象があり古くから粉砕技術として研究されている。
セラミックス粉末の分散では、溶媒が液体かあるいは空気である。緩和時間の長い高分子の融体を溶媒とした分散現象よりも緩和時間が極めて短いので扱いやすい。
セラミックスでは、一次粒子の形状と添加剤(焼結助剤やバインダー)の分散状態が成形体物性へ大きく影響するので、粉体に含まれる粒子を如何に小さく均一に粉砕し混合するのか、という命題を古くから技術者や職人が持ち続けてきた。
この命題の解答は混練でも参考になるので、以下にその要点について内容をまとめた。
A.ビーズミルやボールミル、ジェットミルは、メディアの衝突や粒子の衝突による衝撃で粉砕が進行している。
B.ローラミルは、圧縮力と剪断力により粉砕を行っている。
C. 粒子は微粒化により表面エネルギーが増加して凝集しやすくなる。乾式で粉砕を進めてゆくと数μmまでが限界であり、それ以下の粉砕を行うには湿式粉砕となる。
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混練プロセスでは、高分子をマトリックスとした混練物の「混合」と高分子の「練り」が進行している。
「練り」では、高分子の絡み合いが進むのでレオロジーも変化する。加硫ゴムでは、この絡み合いの効果が成形体の物性に現れるが、樹脂ではその効果が現れにくい。
中間転写ベルトの体験は、この「練り」の効果が樹脂に大きく現れた事例である。高分子の混練効果について一般に使われる分配・分散モデルについて説明する。
混練における分散については、二つの形態で考える。
一つは破砕分散(DispersionあるいはDistructive dispersion)で、剪断力の様な大きな力で行われる分散である。
もう一つは単純混合(Simple mixing)あるいは分配分散(DistributionあるいはDistributive dispersion)と呼ばれる分散である。前者を分散混合、後者を分配混合という場合もある。
また、混練では、分散される材料を分散相(Dispersed phase)といい、分散相を分散させたい高分子を連続相(マトリックスあるいは Base polymer)と呼んだりする。
溶液であれば、前者は溶質であり後者は溶媒に相当する。よく体積分率の多い方をマトリックスと称したりするが、分散相が無機フィラーの場合には高分子相(連続相)の体積分率が50%以下でもその高分子相をマトリックスと称する場合もある。
混練過程の分配・分散モデルにおいて、分配混練とは、位置交換を主体とした混練で、破壊を伴わない場合、と説明されている。
一方、分散混練とは、粒子が破壊されて分散が進む過程として説明されている。しかし、実際の混練ではこのような最終状態のように規則正しくならない。
高分子とフィラーを適切な条件で混練した場合には、フィラー表面が高分子でよく濡れるため、さらに高分子の緩和(後述する)もありフィラーの分散では整然とした分散状態の構造をとりにくい。
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これは、1980年代に日本で起きたセラミックスフィーバーと呼ばれる無機材料のイノベーションの成果である。
このイノベーションが米国を刺激して、クリントン大統領は国家ナノテクノロジー戦略をスタートする。
こうして始まったナノテクノロジーの世界的潮流に日本も飲み込まれてゆくのだが、材料の構造制御技術を一気にナノ領域まで高め、20世紀末に金属やセラミックスの材料科学が大きく進歩した。
そして、無機材料では結晶構造を基本とした形式知の体系が完成した。バブル経済崩壊の影響もあるが、金属材料やセラミックス材料を冠した研究講座が多くの大学で廃止されたことからもこの状況を理解できる。
その結果、金属やセラミックスのプロセシングでは、仮にその中間がブラックボックスだったとしても、目標となる同一の結晶構造を製造できるプロセシングを見つけさえすれば、類似機能の材料をとりあえず製造することが可能となった。
しかし、高分子では、ミクロ構造の写真が今でも科学の研究対象となったりする。このようなミクロ構造解析の難しさだけでなく、仮に配合組成の分析ができたとしても、同一機能の材料を第三者が製造することができない、といったことが生じる。
あるいは、同一配合組成であっても劇的に機能が向上したコンパウンドを第三者が市場へ突然供給してくるケースもある。
例えば、10年ほど前にレーザープリンターとスキャナー、ファックスが複合化されたカラー複写機(MFP)に用いる機能部品の一つ、中間転写ベルトの開発2)を担当した。
中間転写ベルトは、YMCK別々の感光体ドラムに描かれた4色のカラートナー画像を紙に転写する前に一度この上に完成された画像情報としてまとめる部品である。そのため、ベルトは、表面全体が均一な抵抗値の半導体となっていなければならない。
この開発では、国内一流メーカーの納入していた、ポリフェニレンスルフィド(PPS)と6ナイロン(PA6)、カーボンという配合組成のコンパウンドについて、原材料や配合組成をそのままに、まったく異なる高性能なコンパウンドをカオス混合技術3)4)による混練で短期間に開発している。
このプロセスだけが異なる高性能コンパウンドを用いてベルトを製造したところ、面内の抵抗変動がわずかで靭性も国内一流メーカーのコンパウンドよりもはるかに向上した高性能ベルトを押出成形で製造できた。
この成功要因は、外部の技術がブラックボックス化されていたので、独自のカオス混合技術を開発しなければいけなかった点にある。そして、この技術でPPSとPA6を相溶5)させるというフローリー・ハギンズ理論で否定される現象を活用し、原料や配合組成は同一でもその性能が全く異なる材料を開発できた。
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セラミックスでは、0.5μm未満の粉末を成形に必要な添加剤といっしょに混合後、製品の形状に近い成形体(この密度は原料に全く空隙が含まれない場合の65%以下となる。)に加工する。
これを高温度の炉の中に入れて焼結という反応を行う。焼結では、サブミクロンの粒子が成長しながら緻密化してゆく。粒成長と緻密化が同時に起きて成形体密度は理論密度の90%以上に達する。
焼結されたセラミックス成形体の概略ミクロ構造は、金属やSiCなど一部の無機材料で粒界相が存在しない場合もあるが、あたかも高分子の海島構造のようで、海に相当する粒界相は結晶をつなぎとめるノリの様な働きが主な機能である。
この構造サイズを説明すると、茶碗や衛生陶器では、結晶の大きさは不揃いで数10μmから100μmまで達する場合もある。
しかし、SiCやSi3N4などのエンジニアリングセラミックスでは、10μm前後あるいはそれ以下に制御された構造となる。
ホウ素とカーボンを添加したSiC配合物スラリーから製造した成形体のミクロ構造の写真について。棒状に見える組織は6h型平板結晶の断面である。原料のSiC粉末の平均粒径は、0.1μm前後であり、これが10μm前後の結晶まで成長している。
また、この成形体では、粒界相の有無が1980年代に議論されたが、研究の結果、結晶と結晶の界面にはホウ素の存在だけが確認され粒界相は存在しないと結論された。ホウ素とカーボン以外の配合によるSiC成形体では粒界相が見つかっている。
今では体系化された形式知から、セラミックスの機能をその結晶構造から推定することができる。
結晶と機能の関係が体系化されているので、セラミックスのプロセシングでは、目標とする結晶をどのように作りこむのかが技術課題となっている。
ただし、X線回折データから同定可能な結晶については、14のブラベイ格子のいずれかの構造に属することが知られているので組成分析データが得られているならば、プロセシングの結果得られる生成物の管理を形式知の活用で可能なので、こうした技術課題について体系化された形式知と若干の経験知で解決できる。
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材料のプロセシング技術に関する形式知の部分は、化学工学に属するが、1980年前後までそれは未完成であると授業で習った。それから40年ほど経過しているが、この分野の形式知は今でも未完成と言わざるを得ない。
例えば、混練プロセスについて未だにコンピューターによるシミュレーションもままならない。これは、高分子のプロセシング技術が形式知よりも経験知の占める割合がかなり大きいことを示している。
高分子材料も無機材料も加工されて製品になるまで、その物性にプロセシングの履歴が残ると言われている。
とりわけ、高分子材料は物性のプロセス依存性が無機材料よりも大きい。そのため同一ロットで合成された高分子を用いて同一処方の配合で混練を行い、射出成形を行っても、二軸混練機や射出成形機が異なると、成形体の物性が異なったりする。
セラミックスでも同様の現象は見られるが、同一合成ロットの樹脂を用いて2台のまったく同一仕様で製造された二軸混練機を用いて、それぞれから得られた2種類のペレットのレオロジー特性が異なる、というような現象はセラミックス材料の開発で経験していない。
高分子材料のプロセシングでは、このような形式知で説明のできない現象が時々起きる。
こうした経験から、高分子のプロセシング技術は無機材料のそれよりも難しいと思っている。
混練プロセスに至っては、技術者それぞれの経験知が異なるゆえに議論さえできない時もある。例えば、タイヤ開発に携わったゴム技術者とPETの成膜技術に携わった樹脂技術者とでは、混練についてほとんど議論がかみ合わないかもしれない。
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高分子材料では合成された素材をそのまま製品に用いている事例は稀であり、要求される機能を高分子に付加した部材とするために、様々な添加剤を高分子に混合して組成物(コンパウンド)とする必要がある。
例えば、多くの高分子材料は可燃性であり、難燃性の成形体を得たいならば適切な量の難燃剤を配合したコンパウンドの配合設計を最初に行わなければならない。
また、このような配合設計以外に、成形加工で扱いやすいように固体のペレットにしたり、その形状を調製したり、液体であれば粘度調製したり、といった様々な前処理が良好な成形体を得るためにプロセシングとして必要である。
さらに、成形時に反応して硬化することを特徴とするポリウレタンRIM(Reaction Injection Molding)やシリコーンLIMS(Liquid Injection Molding System)では、混合の均一性が成形時の反応に影響を与え、その影響は完成した成形体の物性に現れる。
ゆえに均一に混合できるように、設備の設計以外に配合処方のプロセス適合性まで検討しなければいけない。
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ここでは、高分子のプロセシング技術の難しさをセラミックスのプロセシングと比較しながら説明する。
セラミックスでは、0.5μm未満の粉末を成形に必要な添加剤といっしょに混合後、製品の形状に近い成形体(この密度は原料に全く空隙が含まれない場合の65%以下となる。)に加工する。
これを高温度の炉の中に入れて焼結という反応を行う。焼結では、サブミクロンの粒子が成長しながら緻密化してゆく。粒成長と緻密化が同時に起きて成形体密度は理論密度の90%以上に達する。
焼結されたセラミックス成形体の概略ミクロ構造について、金属やSiCなど一部の無機材料で粒界相が存在しない場合もあるが、粒界相は結晶をつなぎとめるノリの様な働きが主な機能である。
この構造サイズを説明すると、茶碗や衛生陶器では、結晶の大きさは不揃いで数10μmから100μmまで達する場合もある。
しかし、SiCやSi3N4などのエンジニアリングセラミックスでは、10μm前後あるいはそれ以下に制御された構造となる。
ホウ素とカーボンを添加したSiC配合物から製造した成形体のミクロ構造では、棒状に見える組織は6h型平板結晶の断面として見える。
原料のSiC粉末の平均粒径は、0.1μm前後であり、これが10μm前後の結晶まで成長している。
また、この成形体では、粒界相の有無が1980年代に議論されている。研究の結果、結晶と結晶の界面にはホウ素の存在だけが確認され粒界相は存在しないと結論された。ホウ素とカーボン以外の配合によるSiC成形体では粒界相が見つかっている。
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