混練技術に「カオス混合」と呼ばれる混練方法がある。いつから知られていた混練方法か知らないが、ゴム会社の新入社員時代に指導社員から教えられた。
ちなみに高分子を混練する時に働く力は、剪断流動と伸張流動の二つで発生する。剪断流動は剪断で生じる流動で、伸張流動は引き延ばしたときに発生する流れの力である。
一般の混練機の中では、この二つの組み合わせの流動が生じているが、カオス混合とは、急激な伸張流動と折りたたみで発生する剪断流動の組み合わせで混練を進めて行く。
すなわちパイ生地や餅つきで発生している力がカオス混合の時に生じている。臼と杵でつく餅がよく伸びるのは、効率のよい混練で練り上げられデンプンの分子がよく絡み合っているからだ。
市販の餅で伸びが悪い餅はうまくつかれていないためで、市販の餅を再度「あさイチ」で紹介されていたような処理を行えばよく伸びるようになる。また、うまく混練をする自信があれば、砂糖を入れなくても、「あさイチ」でイケメンゲストが見せてくれたようなレベルの伸びの餅ができる。
この餅の例に見られるように高分子のプロセシングにおける「混練技術」は、高分子物性に影響する。高分子結晶の寄与が大きい樹脂ではそれが顕著では無いが、ゴムでは混練技術の差異で耐久性などの品質が大きく影響を受ける。
樹脂成形技術者は要求物性が混練プロセスに左右されていても、なかなか混練技術までさかのぼって問題解決にあたらないが、ゴム分野では、問題解決の最初に混練プロセスを疑うのは定石である。
餅についてもその伸びに不満があるならば、杵と臼でよくついた餅を購入するとよい。子供のころ餅つきをしていて、食べるのに夢中になっているとよく叱られた。
今から思い出すと危険作業を小さな子供に親が平気でやらせた時代だったのだ。年末の餅つきは、今なら児童虐待と言われるような風景だったかもしれない。
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本日も4日の「あさイチ」の「よく伸びる餅」の話題で申し訳ない。この餅の話題で、2000年頃元東工大中浜先生がリーダーで推進された国研「高分子精密制御プロジェクト」をふと思い出した。
そこでは元東大西教授のグループで高分子1本の粘弾性測定の研究が企画推進されている。餅を引き延ばしている姿を見て、この研究を突然思い出したわけだ。
しかし、餅を引き延ばすことさえTVの生放送でうまく行かなかったのに、高分子1本をAFMの針先にくっつけて引き上げ、レオロジー測定を行った研究が如何に困難を極め、そして得られた成果が驚くべき結果だったのか、あまり知られていない。
よく伸びる餅を引き上げることさえ失敗したのである。高分子1本をうまく針先にくっつけて振動させてレオロジーを研究する、という活動が失敗の連続であったことは想像できる。そしてそれを粘り強く研究されたスタッフの方々の努力は、きっと高分子物理の進歩を加速している。
「あさイチ」のよく伸びる餅が、生放送でうまく再現されなかった事実は、基礎科学の成果がうまく一般にまで浸透していないことをしめしている。
高分子学会誌「高分子」の今月号(2018年1月号)の特集は「デモンストレーションに使える高分子実験」だが、古典的(注)な「水ガラスからスーパーボールを作る」以外は、もう少し記事の書き方に工夫が必要である。
著者の先生方が基礎科学を普及しようとする努力には頭が下がるが、もう一歩大衆の方向に歩み寄って欲しい。例えば「プラスチックで遊ぼう」は、がんばって6ページほど書いていただけたなら、その面白さが誰でも分かるような記事になったのではないか。
手軽に遊べそうな写真がついていたので、もう少し詳しくやさしく丁寧に書いていただけたなら、高分子の深い知識が身につきそうに思われるもったいない記事だ。
恐らく編集の都合もあったかもしれないが、このような特集では執筆者の自由に書いてもらうべきだろう。「プラスチックで遊ぼう」には著者の豊富なアイデアがにじみ出ていたのでもったいないと思った。
もし、高分子の研究成果が一般にまで理解されていたのなら、「あさイチ」でイケメンゲストがあのような失敗をしなかったのではないか。ゲストの引き上げる速度が早かったことも餅が切れやすかった事と関係している。
伸張速度が速すぎると高分子は(実際には弾性率は変化していないが)見かけ上硬くなったような挙動をとる。これを昨日書き忘れた。
(注)1970年代に旧大阪工業試験所椎原先生がマスコミに紹介されていた。
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1月4日の「あさイチ」で紹介されたよく伸びる餅は、市販の餅を水にいれて、沸騰させてから、砂糖を加えて作る。この時大切なのは、よく練り上げることだ。
「混ぜる」と「練る」は、材料のプロセシング技術として見たときに異なるプロセスである。少なくとも材料へ働く因子が異なる。高分子は「練る」ことにより、分子の絡み合いが促進され、いわゆる「粘っこくなる」
例えばゴムに配合剤をただ混ぜただけでは壊れやすいゴムとなるが、よく混ぜて練られたゴムは、耐久性のあるゴムになる。樹脂でも二軸混練機で混練した場合とロール混練した場合では、脆さの指標である靱性がわずかに変化する。
すなわち「あさイチ」で紹介された「ビデオの餅」と「スタジオの餅」では混練プロセスの条件が少し異なっていたのだ。明らかに「ビデオで紹介された餅」のほうがよく練られていた。
よく練られていない餅であったが、もし男性ゲストがこのことを知っていたなら、引き上げるときに一工夫すればよく伸びるように見せることが可能である。
それはできるだけ多く引き上げ、引き上げられた餅を下へ流すように見せることだ。するとよく伸びるお餅のように見せることができた。ここでは、水と砂糖が可塑剤の働きをしている。
すなわち、可塑剤がただ混ぜられただけでは流動性は出るが、分子の絡み合いができていないと切れやすい餅となる。デンプンがよく絡み合っていたなら、引き上げただけでも高分子の絡み合いの力で下からひきあげ、さらにはモチあげてくれる。
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昨日のNHK「あさイチ」で「よく伸びる餅」の作り方を紹介していた。そしてどの程度伸びるのか、それを指導した先生がビデオで見せて、170cm以上も伸びます、とやっていた。
ところがスタジオで用意されたその餅を男性ゲストが、「僕の身長は180cmですから」、とやってみたら、ぷつんときれて伸びない。柳沢さんから「やり方が悪いんじゃない」といわれ、再度へらを斜めにしてようやく、そこそこ長く伸びたところであわてて伸ばすのをやめた。
そしたら、柳沢さんの手に餅がベチャリとついて、あわててそれを柳沢さんはなめていたが、手はきれいだったのか?NHKらしからぬシーンがお茶の間に飛び込んできた。
この欄で取り上げたのは、最近のNHKらしからぬ放送を批判するためではない。初老のアナウンサーが洗っていない指についた餅をなめたところでさほど問題ではないが、「なぜスタジオの餅は伸びなかったか」が、本欄で取り上げた理由である。
ビデオで紹介された餅は、おそらくその状態から2m以上は伸びたかもしれないが、スタジオの餅は、明らかにそれと違っていた。餅が伸ばされて行く状態をTVで見ていた先生も気がついたかもしれない。
我が家のTVは、4Kの効果かどうか知らないが、明確にスタジオの餅とビデオの餅の違いを映し出していた。また、それは男性ゲストの伸ばし方も一部影響していたが、明らかにプロセシングの効果が伸びない原因ではないかと伺われた。面白い話なので、明日もう少し詳しく述べる。
ちなみに、男性ゲストが混練技術を知っていたら、そして高分子の可塑化という現象を知っていたならば忖度してあたかも長く伸びるような伸ばし方をしたかもしれない。このあたりも説明する。
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見た目の悪いペレットの高次構造に対して、R社担当者から形式知でいろいろと説明してもらったが、へりくつにしか聞こえなかった。ただ、へりくつにしか聞こえない説明でもゴムの混練と樹脂の混練という技術について、その考え方が大きく異なることが見えてきた。
経験知によれば、ゴムの混練では、「高分子を練り上げる」である。しかし、へりくつから見えてきた樹脂の混練では、「高分子をうまく混ぜる」作業だ。すなわち、樹脂では高分子が練れている必要はない、ということだ。
同じ高分子というカテゴリーの材料のプロセシングでも樹脂とゴムの混練に対する考え方の違いは、面白かった。しかし、混練の形式知をまとめた教科書には、このあたりについて詳しく書かれていない。
ゴムの経験知から、樹脂の経験知不足を不安に感じ、徹底的に調査した。その結果分かってきたのは、混練について高分子材料の視点から見て当方の知的欲望を満たしてくれる教科書が無い、と言うことだ。高価な混練に関する教科書を3冊ほど買い込んだが、どれも欲求不満となる内容だった。もちろんそれらの教科書には、当方の発明したカオス混合装置のことなど触れていない。
技術開発では、形式知と経験知の整理ができていることは大切である。技術開発の過程で様々な現象に遭遇することになる。それらの現象の中には、科学で解明されていない現象も多く存在する。
科学で解明されていない現象に遭遇したときに、形式知ではなく経験知で処理をすることになる。この時、うまく行くかどうか保証されていない。さらには、目の前で起きている現象が、過去の経験知と異なる経験知を要求してくる場合がある。
形式知は、教科書で簡単に補うことが可能だが、迅速に経験知不足を補うことは難しい。ゆえに技術開発を行うときに、この経験知不足の問題をどのように克服するのか、いつも考えておかなければいけない。経験知でも短時間で補う方法があるのだ。これは技術開発のノウハウだ。
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中間転写ベルトの処方は、PPSと6ナイロン、カーボン2種の単純な構成だった。これを、外部のR社が二軸混練機で混練してペレット形状で写真会社へ納入していた。
形式知に反せず、PPSと6ナイロンは相分離しており、その島相が巨大化しないように6ナイロンの添加量は設計されていた。また、カーボンを2種類使用していたのは、抵抗安定化のため、という説明だった。
業務を引き継ぐときには、この処方がすでに確定した処方であり、製品化に向けて処方変更は不可能なところまで開発ステージは進んでいた。
さらに、パーコレーション転移の制御を行なわなければいけないのに、6ナイロンの島相が活かされていないところが気にいらなかった。また、カーボンを2種類使用しているところは、当方の経験知から意味不明だった。
コンパウンド設計の視点で、当時のペレットの高次構造は、「適当な処方をただ混ぜてできた構造」であり、そこに工夫の痕跡は無かった。しかし、外部のコンパウンダーは、いろいろ工夫した結果だという。
形式知の観点からいろいろと説明してくれたが、ペレットの高次構造の見た目が悪ければ、設計されていないのと同じである。今、お見合いはあまり歓迎されていないが、いくら肩書きがよくても見てくれが悪ければ、その段階で躊躇するはずだ。
技術開発も同様で、形式知の観点からいくら妥当性があったとしても、高次構造の見た目が悪ければ、まず疑問を持たなければいけない。これは樹脂補強ゴムを開発したときの経験知である。
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科学的方法による技術開発は日本中で行われている。ここでは科学誕生以前から行われてきた”かもしれない”技術開発のやり方をPPS中間転写べルトの開発を事例に説明したい。
まず、開発目標(ゴール)を明確に具体化する。業務を引き継いだ時に言われたゴールは、「押出成形で問題になっているウェルド部の表面比抵抗の偏差を小さくすること」だった。
タグチメソッドをここで使用するならば、基本機能をベルトの抵抗にして、電圧と電流の動特性を用い開発を進めることになるのだが、残念なことに、業務を引き継いだ時のシステムに対して、タグチメソッドを使っても、せいぜい歩留まりを数%改善できる成果しか得られない状況だった。
一人前の技術者ならば、何が何でもすぐにタグチメソッドを使う、というような愚を行ってはいけない。
タグチメソッドは良い方法だが、使用するタイミングが悪いと、十分な成果を出せない場合がある。例えばシステムが悪い時である。システムに問題がある場合には、いくら最適化を行っても満足な結果は得られない。
ところが故田口先生は、システム選択は技術者の責任、と言い残されて他界している。目の前のシステムがよいシステムか悪いシステムかを判断する方法を遺言で残しておいてほしかった。3年ほど田口先生に直接ご指導いただいたが、システム選択は技術者の責任という姿勢を変えられなかった。
それでは、良いシステムをどのように選んだらよいのか、あるいはどのように組み上げたらよいのだろうか。当方が行っている方法は、自分の経験知で不足している部分をまず整理し、その不足部分を補う作業から始める。すなわち、自分の知識不足を補う情報調査が大切である。
前任者がすでに情報収集を行っていた場合でも、自分の経験知を基準に、情報調査をやり直すべきである。情報収集を専門に行っている会社があるのでそこに依頼する方法もあるのだが、これはお勧めしない。
すでに開発が進行している段階のテーマを引き継いだ時などでは、前任者の説明を鵜呑みにしてはいけない。その開発が、本当に成功するのかどうかの正しい判断を再度「自分で」下さなければいけない。
だから総花的な情報はあまり役立たない。自分の弱点を補強できる情報こそ必要である。仮に多くの情報が集められている状態でも、それらの情報を自分の知識の弱点を中心に再度整理しなおす努力を惜しんではいけない。特に形式知の視点よりも経験知の視点が優先される。
1年以上ある学術分野の業務を担当した経験があれば、その分野の形式知など身に着けているはずだが、経験知は、実際に経験しなければ身につかない。情報の大半は形式知であるが、経験知の視点でそれらを眺めると、仮に科学的に書かれた論文でさえも不思議な論文というものがある。
PPS中間転写ベルトの開発では、PPSに関する情報やそのコンパウンディングに関する情報(注)を収集整理した。また、不思議に感じた論文の著者である大学の先生2名にヒアリングも行っている。ただし、これらは、単身赴任前に実施している。(サラリーマン技術者の心得として、異動が決まったら移動先の仕事について、知識を整理しておくことは常識である。赴任してから勉強している人が多いが、「働く」という視点でみるとそれは間違っている。)
この時、樹脂の配合設計の考え方とゴムの配合設計の考え方に違いのあることが分かった。ゴムの配合設計では、必ずプロセス因子も取り込むが、樹脂で配合設計と言えば単に組成の設計のような考え方である。また、賦形プロセスに関する考え方もゴムと樹脂で微妙に異なっていた。
(注)樹脂のコンパウンディング技術は、この時が初体験であり、外部業者から「素人は黙っとれ」とまで言われたぐらいである。だから単身赴任してからも徹底して情報収集した。その道の専門家にもヒアリングしたり、自費でセミナーに参加したりしている。そして、コンパウンド工場を設計できるまで形式知や経験知の吸収とその整理に努めた。こうした活動ができたのも、単身赴任前に窓際族だったからである。50過ぎて、豊富な自由時間と給与をもらえる窓際は、ある意味で特権である。これを無駄にしてはいけない。給与を自分に投資するのである。成果は奪われたりするが、身につけた知識を誰も奪うことはできない。
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1980年前後に高分子の難燃化に関する形式知の方向がほぼ整理されてきた。すなわち、燃焼という現象の前に高分子を不燃化する技術、というのは経済的にナンセンスであるという考え方に基づき、1.燃焼時に高分子を溶融させて火を消すアイデア、や2.燃焼時に空気を遮断し火を消すアイデア、3.火炎から逃げるように高分子を変形させ、初期火災の燃焼を防ぐアイデアなどである。
また、これらのアイデアを実現するための研究が加速し始めたのもこの時代である。同時に評価技術も業界における火災の状況に応じて制定された。燃焼に必要な最低限の酸素濃度を指数にした極限酸素指数値(LOI)は1980年代にJIS化されている。
この時代に登場した難燃化手法で今ではその考え方が否定されている3のアイデアや評価技術などが存在していた事実は、難燃化技術を科学で取り扱うときの難しさを示している。
建築の難燃化基準だったJIS難燃2級という試験法では、変形して炎から逃げるような材料でも合格とする試験法だった。その結果、燃焼時の熱で餅のように膨らみ変形して燃焼試験の炎から逃げるプラスチック天井材が難燃基準合格品として市場に普及していった。
また、アカデミアの先生もこのような材料がよいアイデア、と発言したこともあって各社が燃えやすい材料で変形して炎から逃げる天井材が開発されたので、防火基準に沿って建設された新しい建築で火事が多発し社会問題になっている。
社会問題化する前に当方は社内にあった天井材のLOIを測定し、その低い値に驚き、フェノール樹脂発泡体の開発を企画している。誤った形式知が正された時代という見方もできるが、高分子の難燃化技術は科学で取り扱いにくい(科学ではなく技術としてとらえるべき)と捉えたほうがよい。
ちなみに当時問題となった硬質ポリウレタン発泡体天井材料は、建築研究所で天井材の難燃基準が見直され、新しい準不燃規格が制定されたので規格外となり、市場から消えた。そして、フェノール樹脂発泡体天井材が新しいプラ天井材として採用されていった。このフェノール樹脂発泡体の研究過程で半導体用高純度SiC前駆体技術が誕生している。
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前回まで当時の様子を書いてきたが、高分子の難燃化技術について誰かに指導を受けたとか、テーマ担当前に特に勉強をしたとかいう機会はなく、いきなり実戦で戦った状態である。
樹脂補強ゴムについては、技術の神様のような指導社員のおかげで、毎朝座学で午後実験という大変恵まれた日々だったが、難燃性軟質ポリウレタンフォームの開発では、美人の上司に仕え、ただ一生懸命頑張る以外に道はなかった。
当時なぜ当方が始末書を書かなければいけないのか疑問にも思ったが、それでやる気を無くすと言うよりも上司の「頼りにしてる」という一言で次の目標を提案するぐらい前向きで活性が高くなる日々だった。
この上司のもとで高純度SiCの最初の企画「高分子から高純度セラミックス」を立案しているが、多くの新しいアイデアがわき出てきたのは、若さゆえに職場環境の影響を受けて活性化された能力のおかげである。
そして、特に誰かに指導されるというわけでもなく、「デキル男」を目指し、マラソンの川内選手のように、ただひたすらがむしゃらな努力で開発を進めてゆく過程で高分子の難燃化技術の極意を自然に体得した。
美人の上司は、溶融型の難燃化システムによる軟質ポリウレタンの開発が主担当業務だったが、これをお手伝いできた影響も大きい。
高分子の燃焼とは急激な酸化反応だが、これをモデル実験で定量化することは困難である。しかし、溶融型では、溶融エンタルピーを見積もることができ、溶融による吸熱を考察することでその難燃化現象を見える化できた。
代表的な高分子の難燃化システムである炭化促進型システムと溶融型システムの実際について同時に評価し研究を進めることができた。さらに新製品の開発と高分子の難燃化研究がコンカレントに進行したので、大変に勉強になった。
新入社員故に残業代無しで、あいかわらずの過重労働という大変な毎日ではあったが、この苦労のおかげで両方のシステムの特徴を十分に理解することができた。高分子の難燃化技術の獲得は、まさにOJTの賜である。
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プロトタイプの難燃性軟質ポリウレタンフォームは簡単にできたが、商品として評価したときに幾つか問題があった。新人発表までにそれら問題解決することが主要な仕事になった。
しかし、反応性など量産化に制約を受ける問題は軽微であり、新人発表までに工場試作を成功させている。これが大問題を引き起こした。
すなわち工場試作に成功したので原材料の調達方法をまとめなければいけなくなり、原料のホスファゼンをどのように購入したら良いのか分からなかった。
国内で数社事業を開始しようとしているところはあったが、ホスファゼンのジアミノ体を販売している会社はおろか、原料のホスファゼンを販売している会社も無かった。
このことが原因で大問題となり、その責任が新入社員の小生に回ってきた。責任を取ると言っても、まだ会社を辞めるところまで考えなくても良いとか、いろいろ言われ結局始末書を書くことになった。
このあたりは以前この欄で書いているので詳細を省略するが、始末書で新たな難燃化技術提案をしている。始末書で提案したことで是が非でも成功させなければいけない状態になり、好むと好まざるとにかかわらず、毎日が残業代の無い過重労働の日々となった。しかし、楽しかった。
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