豊洲市場移転問題についてそれを推進した責任を問う証人喚問が行われたが、明らかになったのは各責任者が具体的な実務の執行に際し、細部を管理せず印を押していた問題である。何らかの汚職が今回の証人喚問された方々によりなされたようには見えなかった。
かつてロッキード事件で政治と汚職の問題が問われ田中元首相逮捕まで至っているが、豊洲問題はそのような構図ではなく、天下り責任者の利用されやすい弊害が真の汚職を隠すという構図になっている可能性が高い。証人喚問の様子を見る限り、何かを隠すというよりも責任の擦り付け合いという見苦しい光景だった。
豊洲問題ではこのようなトップレベルの責任よりも、実務レベルにおける杜撰な手続きが一つの方向に向かって進められた大きな問題がある。ガバナンスの問題と言ってしまえばそれまでだが、民主主義の統治下ではその責任を一極集中しない。例えば豊洲問題では現在証人喚問されている責任者の組織体制以外に都民の代表と位置付けられる議会組織、とりわけ都議会自民党の責任追及が必要だ。
すなわち石原元都知事の責任同様に議会の責任も問う必要がある。これまで行われた証人喚問で見えてきたのは、石原元都知事以下の責任者たちが誠実真摯に職責を全うしようと努力していた姿勢ではなく、無難に仕事が流れてくれればそれでよし、という無責任な姿勢である。すなわちこの方たちは皆マネジメントというものを正しく理解されていなかっただけでなく、重職渡り鳥として生き延びることしか考えていなかったのだ。
このような出世だけを考えて仕事をしても出世できてしまう日本社会の問題が豊洲市場移転に伴う利権に利用された構図が今回の証人喚問で見えてきたのである。すなわち今回の証人喚問だけでは真の黒幕をあぶりだすことはできず、豊洲移転に絡むお金の流れと実務の進捗、そして議会の動きとの対応関係を明らかにすることが必要になってくる。もしかしたら、実務レベルに黒幕から接待や何か便宜をもらったふとどき者がいるのかもしれない。
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昨日「彼はどのようにして地下鉄サリンの実行犯になったか」という江川氏の記事を読んだ。そこに、サリン事件の犯人の若者たちは、生きる意味を求めてオウム真理教に入信した、との説明があった。
入念な取材に基づく記事であり、これを読み驚いた。いつの時代でも若者は恋愛同様に生きる意味について一時期、病気のように悩むものだ。しかし生きる意味について悩んでみても一つの真理など見つかるわけではない。
さらに、科学の真理でも怪しいものがあるのに、他人の語る真理を素直に信じるところは子供だ。高分子科学の世界でさえ、自分の出したデータ以外信じないという元東大教授もいるのに、自分の人生の真理について他人を頼るのは危ない。
働く意味でもドラッカーが「貢献と自己実現にある」と明確に示してから、それがようやく社会に定着したのである。この意味さえいまだに否定する人がいるが、ドラッカーを読むと「貢献と自己実現」に働く意味を求めない限り、世の中はよくなってゆかないことがわかる。
すなわちこれは人が生きてゆく世の中をよくするための働く意味なのだ。この意味で働いていない人が偉くなった結果が東芝やオリンパスの事例だろう。社長の犯罪は、その会社で働く従業員に大きく悪影響が出る。やはり、ドラッカーが言うように社長は誠実で真摯な人が務める職業だ。
人間は死ぬまで生きているのだから、生きる意味をそもそも深く考える意味があるのだろうか、という見解をどこかで聞いたことがあるが、亡父はもっと説得力のある言葉を残している。
死ぬまで生きていると同じような意味かもしれないが、「今生きている以上必死で生きなきゃしょうがない」と生きる意味など考えている暇はない、と言いながら100歳まで生きた。
元警察官だったので十分な年金がありのんびり過ごしてもよさそうだったのだが、必死で読書をしていた。生きるために読書をするという姿をずっと見てきたが、死後の蔵書処理が大変だった。
当方は必死で生きるためには働かなきゃいけない、と思っても、既存の会社では60歳になれば追い出される。65歳まであるいは70歳までおいてくれる会社もあるようだが、定年がある以上居心地は悪いだろう。
当方は写真会社で十分な貢献をしたにもかかわらず50歳を過ぎて居心地が悪くなったので55歳で早期退職制度を利用する予定だったが、その決心をして会社への最後の貢献(注)のため2011年3月11日を最終出勤日と決めて57歳まで勤務した。
最後まで十分に貢献したつもりだったが、とんでもないことが起きて出勤最後の日は帰宅難民となった。誰もいない事務所で一人考えたことは、生きる意味ではなく、これから起業する定年の無い会社を死ぬまでにどれだけ大きくできるのだろうか、という夢だった。
(注)カオス混合の発明により、前任者が決めたPPS/6ナイロン/カーボンの配合系のままで中間転写ベルトを実用化している。この仕事以外にリサイクルPETボトルを用いた環境対応樹脂の開発も成功させた。家族と離れた単身赴任を初めて体験してみて料理という老後の備えとなる特技が身についた。
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パーコレーションについて研究を行うときに、コンピューターは大変便利な道具である。特に最近はメモリーも安くなり、なんといってもCPUが30年近く前よりもけた違いに高速になった。はじめてコンピューターに触れたのは、大学の計算機実習だが、フォートランの簡単なプログラムを動かす作業でも一日仕事だった。
プログラミング環境もRAIDが充実し、その使用方法を習得すれば、ベッドの上で寝転がって鼻歌交じりに窓の開閉が可能で見栄えのする入力デザインの計算プログラムを作成可能である。30年前は、Cの処理系をパソコンへインストールする作業から入り、エディターをセットしなければプログラミングを始めることができなかった。
苦労してプログラミング環境を立ち上げても、見栄えのしないプログラムしか作ることができなかった。当方はもっぱら入力も出力もファイルを通じて行うプログラムを作っていた。自分専用だからこれで十分だった。また、MS-DOS環境ではパイプラインを使えたので、ファイル形式さえ統一すればデータを他のプログラムで活用でき画面入力よりも便利だった。
さてパーコレーション転移のプログラムのアルゴリズムについては、シミュレーションの応用分野が高分子半導体だったので導電性微粒子を絶縁体に分散したときに生じる現象を立方体を用いたモデルにキルヒホッフの法則を応用したものである。プログラムを作成したときにまだ同様の考え方のプログラムは報告はなされていなかった。
しかし学会で報告するために文献検索を行ったら雑誌「炭素」の二か月前の号に同様の考え方の論文が投稿されていたことがわかった。学会報告はすでに申し込んでいたので発表するかどうかを迷ったが、論文に書かれていたプログラムのアルゴリズムと少し異なる部分があったので、その論文を引用してとりあえず資料を作成し発表した。しかし論文にまとめるところまでは諦めた。
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酸化スズゾルとゼラチンバインダーとを複合化して透明帯電防止層を製造する技術は、特公昭35-6616に書かれている。ただし実施例には一部重要なノウハウが書かれていない。この特許が出願された時代は、ITOが盛んに研究されていた頃で、酸化スズは透明導電体材料として注目されていた。ただしその導電機構については解明されていなかった。
高純度酸化スズが絶縁体であると科学的に解明されたのは1980年代で、無機材質研究所の成果である。長い間酸化スズの導電性について科学的解明が難しかったのは高純度単結晶を製造する技術が無かったからである。
無機材質研究所では、各種金属酸化物単結晶の研究過程で高純度酸化スズ単結晶の合成に成功し、その電気特性の解明が可能となり、それが絶縁体であるとの科学的結論を導き出した。そして高純度酸化スズ単結晶は絶縁体であるという科学的に正しい真理を確定している。
フィラーの電気特性でさえこのように科学的解明が難しいのに、そのフィラーとマトリックスとの相互作用になってくると天文学的な難易度になる。すべてが解明されてから技術を開発する、などと考えていたら技術開発競争で負けてしまう。
だから、どうしても非科学的技術開発が必要となってくる。科学的情報が乏しい中で開発が進められた酸化スズゾル透明帯電防止層は、間違いなく非科学的方法の成果だった。
面白いのは、写真会社へ転職したときに酸化スズゾルでは写真フィルム用の帯電防止層を製造できない、という社内論文が書かれた直後で当方がパーコレーションのシミュレーションプログラムのアルゴリズムを完成させたときだった。このような否定証明の科学的論文が正しく書かれていたのは、パーコレーション転移という現象が関係していたにもかかわらず、混合則で考察が進められていたからである。すぐにパーコレーションをシミュレートするプログラム開発に着手した。
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樹脂材料を製品に用いるときにその耐熱性が問題になる。困ったことに用途でこの耐熱性に対する考え方が異なるので注意が必要である。まず樹脂材料の熱物性を表すパラメーターには、ガラス転移点(Tg)、結晶化温度(Tc)、溶融温度(Tm)の3種類存在する。
無機材料では結晶が溶ける温度と融点はほぼ一致するから製品設計でTcとTmを区別して考える必要はないが、樹脂では耐熱性を考えるときにTcを区別してとり上げなければいけない場合が存在する。すなわち樹脂の応用分野における耐熱性がTmよりも低いTcにより左右される場合である。
もっともTgはそれよりも低い領域に現れ、強度や熱膨張が製品の耐熱性を議論するためのパラメーターであるならば、複合材料以外ではこの温度未満で樹脂を使用するように製品設計する、と簡単にいえる(簡単にいえるが、これがいつも当てはまるわけではないことを本欄で以前紹介している。すなわち一般に行われている判断でもそれを適用してはいけない場合が存在する。詳細は弊社へ問いあわせていただきたい)。それに比較し、Tcまで問題にならないと思われる製品性能で設計する場合にTcの決め方が問題になる。樹脂の物性表に書かれたTcを安直に耐熱性の上限として採用すると市場で品質問題を起こす原因になる。
よく教科書に材料の耐熱性はTgやTcで左右されると書かれていたりするが、製品設計で樹脂の耐熱性を考えるときには、開発の初期段階で実際の使用環境に近い最高温度に樹脂の成形体を置きその影響を調べる姿勢が求められる。安易にTgやTcでその耐熱性を判断してはいけない。
例えば強度や熱膨張が製品の耐熱性に影響する場合に樹脂のTgで使用温度の上限が決まると先に述べたが、繊維強化複合材料では樹脂のTg以上でも強度材料として用いることが可能となる場合が存在する(これは「簡単にいえる」場合と逆の事例である。早い話が高分子材料で耐熱性という品質を設計するときにはいつでも現物を実際の使用環境で評価する必要がある。TgやTc,Tmだけで耐熱性を決めてはいけない)。
科学的に考えると耐熱性はTgやTcで議論できそうで、実際に議論できる領域も存在したとしても、製品設計では現物でその使用環境における耐熱性を調べる実験を行いその使用できる上限温度を決める必要がある。非科学的かもしれないが、品質問題を起こさないために科学で安直に判断してはいけない。
製品の耐熱性がTgよりもはるかに低い温度領域となる場合も存在するからである。このような科学的に想像のつかない世界が存在するのが製品設計の世界である、というのはタイヤ会社において新入社員発表会の席で学んだ忘れられない言葉である。
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複合材料のパーコレーション転移で、フィラーで形成されるクラスターを自由に制御する技術は大変高度であり、この特殊なケースは自己組織化というカテゴリーに分類されたりする。
この制御因子が、科学的に解明されているのかされていないのかはっきりしていないのが現在の状況である。だからパーコレーションの制御技術について、前回は運に左右されるようなことを書いた。
すなわち、この制御因子は、複合材料の種類や材料を製造したり賦形したりするときのプロセシングで重要ではあるにもかかわらず科学的に解明されていない、と当方は考えている。
腕のいい技術者ならば概略の制御因子を述べる(注)ことができても、それが科学的に必ず成立するとは言いがたい。だからパーコレーション転移の制御技術は、時として非科学的方法が有効であったりする。
PPS中間転写ベルトにおいて、カーボンがパーコレーション転移を起こしている島状のクラスターをパーコレーション転移が起きないように均一に分配混合を進める技術は非科学的方法で開発された。ただし神棚を作ってお祈りをしたわけではない。いわゆるKKDだ。ただしKKDといっても弊社で指導しているPPAPやその他の問題解決技法を駆使したうえでのKKDだ。ヤマカン頼りではない。
ところで、このような技術を科学的に開発できると思っている人は、科学者として優秀な方かとんでもない勘違いをしている人かどちらかだろう。優秀な方であれば、いつでもどのような材料やプロセスでも成立する具体的な理論と方法を示すことができるはずである。しかし実際にはそれができないから、特殊な材料や特殊な条件でうまく組織構造を制御できた系について自己組織化と称して研究を進めている。
(注)中間転写ベルトのPPS/6ナイロン/カーボンという処方は当方が考えたのではない。前任者の部長とその部下のマネージャーが、PPS/カーボン系においてパーコレーションの制御ができなくて、島状に相分離する6ナイロンにカーボンをくっつけたらよいのではないかという願望アイデアから考え出されたらしい。このアイデアがよかったかどうかについては批判をする気になれない。このアイデアのおかげで退職前の仕事が生まれたのだから。現代の技術にも非科学的な成り立ちの技術が存在する。iPS細胞でもとりあえず24個の遺伝子を突っ込んでみた、という試みがノーベル賞のきっかけとなったことを山中先生はインタビューで話されていた。
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「不正を暴いて波風を立てることにメリットがない…
学生や研究員を追い詰めるような「ブラック研究室」は研究不正の温床になる。学生にとってはブラック研究室の実態を暴くことにメリットはなく、目標にはなり得ない。研究室から円滑に卒業し、就職やステップアップなど次の活躍の場を得ることがゴールだ。そのためには不正を暴いて波風を立てることは合理的でない。果たして倫理教育で学んだモラルはどこまで有効なのだろうか。」
以上は、昨日WEBニュースの記事の引用である。この記事では、先生の指示で実験を行っているが思ったような結果が出ない。どうも先生の仮説が間違っているようなので異なった実験で先生の意図されるようなデータを出して卒業した学生の事例なども紹介されている。
科学における捏造の問題は、20世紀末から多くなったのではなかろうか。記事に紹介されているような先生から請け負ったテーマでデータが出ないときに先生の顔をつぶさないようにデータを捏造する学生の話を聞いたことがない。
昔は学生と先生が対立することが多かったので、先生が無能と気がついた学生は、さっさと異なるテーマを立案し、研究を進めた。大学の先生も先生で、そのような元気のよい学生のご機嫌を損ねないように卒業させていた(注)。
大学のテーマ管理が今ほど厳しくなく、どのような研究内容でも論文が出ればよい、という研究室もあったくらいだから、捏造の問題は起きなかったのだろうと思う。今や研究費を獲得するために研究の競争が激しくなってきている。それが捏造を生み出す背景にもなっているように思う。
ただ、学生の姿勢にも問題があり、やはり不正は自らの卒業に心配があったとしても正すべきである。仮に卒業が危ぶまれたとしてもそのような学生を大切にする社会でありたいと思う。
(注)大学院に進んだときに教授から「ホスホリルトリアミドの重合」という研究テーマを頂いた。文献調査をしたところ、10年以上前に特許出願があったうえに研究発表も十分に成されていたテーマだった。助手の方から、さっさと他のテーマを研究した方がよいと言われ、当方もそのように感じて他の先生にも相談したりしたら、あの先生の出されたテーマで最後まで研究した学生は一人もいない、と言われた(このような状態でも大学教育が社会で認められていた時代でもある)。この一言で、教授の出されたテーマで論文を書いてみようという気持ちになった。ホスホリルトリアミドとホルマリンとの共重合体やホスファゼンとの共重合について研究し、修士論文は「ホスホリルトリアミド及びその誘導体の重合」というテーマでまとめるとともに、二年間に3報論文を発表することができた。この研究がゴム会社に就職したときに、ホスファゼン変性ポリウレタン発泡体やフェノール樹脂発泡体の無機高分子による難燃化研究に役だった。そして、30年以上も事業として続いた高純度SiCの前駆体高分子(ポリエチルシリケートとフェノール樹脂のコポリマー)の発明と実用化に至っている。科学の研究は捏造など考えず誠実真摯に行うべきである。当方の調査結果を基に、教授がどのような意図でテーマ立案されているのか直接説明を伺っても当方には理解できなかったので、さっさとテーマを放り出そうとも考えた。しかし当方は、まず教授を信じることにした。師と生徒の関係はまずそこから始まる、というのはそのときの亡父の名言である。その結果、有機金属化合物が多数研究されていても、当時それらは有機物から眺めた応用展開であり、無機物から眺めた誘導体の展開については一部のリン酸系に限られていて研究テーマの化合物の誘導体についてはまったく研究されていなかったことを見つけた。
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フィラーを高分子に分散するときには必ずマトリックスとなる高分子とフィラーとの間に相互作用が働く。フィラーのサイズが小さかったり静電気を帯びやすかったりしたなら、フィラーどおしの相互作用も問題になる。
このような相互作用を考えて科学的にこの問題を解こうとすると複雑になり難しい問題となる。科学の世界では、真理をわかりやすく導くために、しばしば現象を簡単にして議論が見えるようにする。
これをモデル化と言ったりしているが、パーコレーションの数学的取り扱いでは、最初に一切の相互作用を無視して統計的にパーコレーションが生じるモデルで議論している。そして今ではn次元のモデルまでパーコレーション転移の閾値が計算されている。
科学の世界は楽しく、何に活用できるのか分からないn次元までパーコレーションという現象が解明されているのだ。そしてモデルにより閾値が微妙に変わることまで確認されている。
すなわち、フィラーと高分子材料との間にまったく相互作用が無い、と仮定してもその閾値は、現象のモデル化すなわち現象のとらえ方で変化するのがパーコレーション転移である、と正しく理解していることは重要である。
具体的な知識として、導電性微粒子が真球でマトリックスとの間で相互作用がないと仮定したときに、体積分率で30vol%から60vol%の間で、閾値はばらつくということである。微粒子に異方性が出てくれば、それが20vol%あるいは10vol%さらにはそれ以下になる場合がある。
導電性のカーボンを高分子に分散して10の9乗Ω前後の体積固有抵抗で安定に作るという技術は、配合やプロセシングで工夫しなければ不可能に近いことだと容易に想像がつく。またもしこれがうまくいっているのなら、それは運がよかったということになる。
PPSと6ナイロン、カーボンという配合を変更せずにそのような体積固有抵抗で安定な無端ベルトを半年で完成してください、という要求は、パーコレーションという現象を正しく理解しているなら神頼みと同じことなのだ。引き受けた当方もプロセシングに一縷の望みをかけてサラリーマン最後の仕事としておみくじを引くつもりだった。
それがカオス混合技術という大吉のおみくじを引くことになっただけのことだ。ここまでは運がよかったが、退職日を2011年3月11日に決めたことは運が悪かった。当方のために用意された最終講演会も送別会も吹っ飛び帰宅難民になった。
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フィラーを高分子材料に分散しようとすると、フィラーと高分子材料との間には必ず何らかの相互作用が働き、思うような高次構造を実現出来ない、というのが材料屋の悩みで古くから混合則が議論されてきた。
混合則では、例えば導電体を高分子材料に分散して抵抗を制御しようとする問題において、その抵抗変化の関係がR=n1xR1+n2xR2(直列接続)と書き表されるのか、1/R=(n1/R1)+(n2/R2)(並列接続)と書き表されるのか、といった議論となる。
すなわちフィラーが直列接続的に高分子材料に分散しているのか並列接続的に分散しているのか、という議論である。そのままこの議論を聞いていると科学的な議論に聞こえる。
電子顕微鏡など直接高次構造を見ることが可能となってもこのような議論がなされており、さらに、フィラーの分散状態について混合則の式を改良してより近似式として「自分の実験データ」をうまく説明できる式が幾つか提案される始末である。
この混合則の議論について歴史的に調べたなら、科学が重箱の隅をつつき始めたときにどうなるかが見えてくるのではないかとさえ思いたくなるぐらい幾つかの近似式が過去に提案されている。
複合材料の世界では、混合則による議論が30年以上続けられており、それをまじめに扱った学位論文を読んだときには、思わず吹き出してしまった。重回帰式で式を求めるだけの仕事で学位が取れた時代がこの半世紀の間にもあったのだ。
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PPS中間転写ベルトの高次構造の話を先週書いていたら、パーコレーションの理解が重要であることに気がついた。パーコレーション転移については、数学者によりかなり昔から研究されていた内容だが、複合材料の世界ではその現象を混合則で1980年代頃まで議論していた。
当方が日本化学会で酸化スズゾルのパーコレーション転移に関する研究を1990年代に発表しても同じセッションで混合則を用いた現象の考察がされていたような状況だった。
まず、混練機などを用いてフィラーを高分子材料に分散するとどのような現象が起きるのか簡単に説明すると、フィラーと高分子材料との間で相互作用が全く働かなければ、フィラーは高分子材料に統計的に分散して行く。教科書には分散混合と分配混合で分散が進行すると説明しているが、ここでは現象を簡単にとらえて説明する。
フィラーの添加量が少なければ、フィラーは凝集することなく高分子材料にばらばらに分散する。今フィラーが真球だとすると、30vol%前後添加された段階で、フィラーどおしの接触(凝集)がどこかで起きやすくなる。
これが60vol%前後になるともはや凝集を全く起こさずに分散することは難しくなり、必ず凝集ができる。このフィラーどおしがくっついた状態をクラスターと呼ぶ。
このクラスターの生成する現象について科学的に論じようとしたのがパーコレーションの理論である。パーコレーションの問題は材料の世界だけでなく、例えば山火事でも問題になり、数学者は山火事の問題を議論していて、抵抗変化などもその議論の中に組み入れていったらしい。
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