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2016.01/20 21世紀の開発プロセス(8)

科学と技術の関係について問題意識を持つようになったのは、ゴム会社でタイヤ開発実習を体験し、その成果発表会でプレゼンテーションを行った時に頂いたS専務の辛辣な言葉がきっかけだった。新入社員の立場としてその一言はショックだった。
 
しかし、直後の人事部の激励で深く考えるまでには至らなかったが、その2ケ月後の配属の日の朝、同期が会社をやめて故郷である長野に帰ると伝えてきた出来事で、その言葉を深く考えるきっかけとなった。そのような心理状態で出会った、レオロジーの問題について電卓で常微分方程式を解くほどの有能な指導社員の言葉は、一つの解答のように思われた。
 
タイヤ開発実習は、オイルショック後という状況を如実に表していたテーマで、「タイヤの軽量化設計に必要な因子探索」という課題だった。但し、実習期間である2ヶ月で一つの結論を出さなければいけないという厳しいテーマに思われた。それは、世界12社のタイヤを解剖してデータを収集し、軽量化因子を探すという作業である。早い話が、新入社員6人の人海戦術で行えるように考えられたリバースエンジニアリングである。
 
しかし、実際にタイヤを解剖しデータを収集してみたところ、これが大変なことになった。同じサイズでありながら、重量が重いタイヤから軽いタイヤまで800g(1本のタイヤ重量の約10%に当たる)ほどの分布があり、さらに各社タイヤの構造がばらばらで、これをどのようにまとめるのかデータを集めた後で問題になった。
 
テーマを指導してくださった方も予想外の技術のばらつきにびっくりしており、新入社員技術発表会をどのように乗り切るのか頭を抱えていた。この時調査した乗用車用タイヤ1本の重量は8kg前後であり、40以上の部材で構成され、この部材の個数も各社ばらばらならば形状も様々で、軽量化傾向をどのようにまとめるのか誰もアイデアが無かった。
 
そのとき、統計学に強い同期が多変量解析を提案してくれた。データは12組であるが、多変量解析でデータを整理したら何か傾向が出るかもしれない、と言うことになり、多変量解析できるようにデータを整理しなおした。ゴム会社には当時IBM3033という大型コンピューターが開発部門に解放されていた。
 
そのパッケージに多変量解析パッケージがあったので、1000ページ近くあった英文のマニュアルを皆で分担して理解し、何とか3日で多変量解析パッケージを使えるようになった。メンバーには生まれて初めて真剣に勉強をした(注)、という不心得者もいたが、この作業は、専門の異なるメンバーがお互い先生になり自分の割り当てられたところをわかりやすく他のメンバーに説明しなければならなかったのでそれぞれの個性がわかり面白かった。(22日へ続く)
 
(注)英文のテキストをただ翻訳するのではなく、それを理解し、他人に説明するという一連の作業を短期間に行う課題は、専門外には地獄の作業となる。しかし、メンバー全員大学院まで修了していたので、それができるはずだ、という意気込みで取り組んだが、ほとんど徹夜作業になった。おそらく学生時代ならば適当にやっていたかもしれないが、初めて担当した責任ある仕事として、皆一生懸命取り組んだ。残業代も無ければ深夜勤務手当も無い仕事であったが、楽しい思い出である。
 

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2016.01/19 21世紀の開発プロセス(7)

LED電球の低価格化と普及がめざましい。登場したときには数千円したLED電球が、いまや数百円である。この価格低下の裏側ではLED電球の構造も大きく変わった。まずソケットなどの外装が金属から難燃性の熱伝導樹脂に変わっている。この変化だけで、生産性は大きく変わりCDに寄与する。
 
さて、難燃性の熱伝導樹脂だが、これは先端材料の部材で、日本の樹脂メーカーが高い技術力を持っている分野だ。そして高い値段で取引されてきた。なぜ、この材料が高価格を維持できるのか。理由は簡単で、高い難燃性と、高い熱伝導率、そして電気的に高い絶縁性能と割れにくい力学物性を満たす材料は、形式知だけで作り出せないからだ。
 
特許を見なくても、熱伝導樹脂をリバースエンジニアリングすれば、難燃性能と熱伝導性を向上できる技術をすぐに知ることは可能である。すなわち、難燃剤と熱伝導性の高い粒子を樹脂に混ぜれば良いだけである。難燃剤と熱伝導性の粒子に絶縁体を用いれば、樹脂も絶縁体なので、高い絶縁性能を実現できる。しかし、最後の割れにくいという力学物性は、形式知でどうにもならないのだ。
 
線形破壊力学という形式知を活用すれば、熱伝導粒子の粒径やその分散状態を知ることができるが、混練というプロセシングが実践知の塊で、せっかくの形式知に基づく成果を科学の力だけでは実現できない。どうしても非科学的な問題解決プロセスを採用しなければならない。
 
それを割り切って採用するか、従来通りの科学こそ命、と科学の殉教者の如く取り組みを行うかで、できあがる樹脂の品質は大きく変化する。
 
実際に、某企業から指導を依頼されて研究開発必勝法のセットでこのテーマに取り組んだところ、オリジナル処方で既存の市場の製品よりも優れた力学物性の樹脂を生産できるようになった。他社品同等の品質というおおよその期待はしていたが、他社製品よりも品質が優れた材料ができるところまでは予想していなかった。実践知のすごいところである。
 
その企業は、市場に参入したときに某日本メーカーの物まねで材料を供給していたが、力学物性が悪い、ということで売り上げが伸び悩んでいたのだ。この状態を野放しにしておいては、この企業の安価な樹脂を使ったLEDが日本に流れてきては大変と思い、指導を引き受けたのだが、今度は日本メーカーの売り上げを脅かす問題の心配をしなくてはいけなくなった。
 
 

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2016.01/18 21世紀の開発プロセス(6)

(注)ヤマナカファクターは4本のDNAで構成されているが、なぜ4本必要なのか、とか、現在見つかっている4本の組だけしか存在しないのか、など科学的に解明されていない事柄が多い。しかし、細胞を初期化できる「機能」として、非科学的方法で取り出すことに成功している。モノを創りだす、という行為である技術は、科学が誕生する前から存在していた。科学が生まれる前でも、ゆるやかなスピードであったが技術は進歩していた。ゆえに非科学的方法でもモノを創りだすことは可能であり、それを試してきた経験から、科学はモノを創りだす確率(効率)を上げるが、科学的に解明されていない現象からモノを創りだすことが苦手である。また、不可能かもしれない。20世紀に科学は著しく進歩し、それとともに技術も過去にないスピードで進歩したが、技術開発における科学的方法の問題も見え始めてきた。
 

<本日の記事>
イムレラカトシュによれば、科学における証明で完璧にできるのは否定証明だけだそうだ。確かに仮説を設定し、実験を行っても必ずその実験が成功する保証はない。否定証明が目的の実験ならば成功できなくてよい。STAP細胞の騒動では、「とにかくSTAP細胞を一つ作ればよいから」と記者会見で言っていた科学者がいたが、追試にすべて失敗し、STAP細胞は存在しない、という結論になった。
 
ところで、iPS細胞のヤマナカファクター(注)について、非科学的方法で発見されたことがTVのインタビューの中で語られている。そこで語られた、24個の遺伝子を一つの細胞に組み込むという操作自体も常識外れの実験であるが、それを学生はいとも簡単に実行している。このセンスが、形式知の整備されていない分野では特に重要であるが、科学の時代では、これを評価しない人は多い。
 
技術開発では、自然界に潜む有用な機能を取り出し、実体として機能させ、新しい価値を作り出さなければならない。さらに21世紀の新たな動きとして、市場という人工の世界も自然界と同様に扱う必要性が出てきた。科学では自然界のモデル化という方法により形式知を生み出してきたが、今日の技術開発ではモデル化が難しい世界からも新たな機能を取り出し、新たな価値を生み出さなければいけない時代になった。
 
科学の重要性は、21世紀も変わらないと思われるが、科学一辺倒であった20世紀の開発プロセスを見直す必要があるのではないか。少なくとも科学による形式知の範囲だけで行われる技術開発では、モノができない可能性以外に今日の企業間の競争で勝つことも難しくなる。
 
例えば、液晶TVや太陽電池などの先端商品が瞬く間にコモディティー化し、「亀山ブランド」さえも電気店からいつの間にか消えたことを教訓として思い出していただきたい。仏壇店に行かない限り、亀山ブランドを見ることができない状況は、形式知の占める割合の高い技術では、例えそれが高度であっても、コモディティー化のスピードがますます速くなると言うことだ。
 
これは、高度に発達した情報化社会が、形式知をすぐに陳腐化させるためだが、材料の世界では新素材のコモディティー化サイクルとして以前から指摘されていた。そして、素材メーカーは、形式知以外の実践知を埋め込みしやすい部材産業へ転身し成功している。
 

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2016.01/17 21世紀の開発プロセス(5)

(注)(本日の内容において重要な点なので冒頭に記載している。)導電性微粒子を絶縁体高分子に分散したときに、「混合則で記述される抵抗変化が生じる」、と当時の教科書にさらりと書いてあった。当方もパーコレーションを勉強するまでは、すなわちゴム会社で指導社員に指導されるまでは、教科書を信じ、混合則で現象を整理するものだと思っていた。ところが微粒子と高分子の間に相互作用が存在しないときに、確率的に現象は変化する、というのが正しい現象のとらえ方であり、現実には相互作用も影響するので現象はさらに複雑になる。混合則は、特定の条件で成立するルールであって一般的なルールではないが、教科書にはそのようなことが書かれていなかった。これを科学の真理と信じて技術開発を行った場合には、モノができない場合も出てくる。科学の真理の中にはこのような不親切な真理が少なからず存在する。

ゆえに、「科学的に開発を行い、モノができないとき」にも「非科学的な開発でモノができる」場合がある。以前紹介したPPS中間転写ベルトでは、その開発プロセスを詳しく書いていないが、「科学的に業務を行わなかったので」効率的に業務を進めることができ、短期間にコンパウンド工場を立ち上げることができた。「科学的に行うこと」と「開発期間の短縮」との関係について詳細は問い合わせていただきたい。
 
<ここから昨日の続き>
ERFの事例は特殊ではない。科学的な否定証明の展開により機能が無い、と結論されていたにも関わらず、それをひっくり返した事例が他にもある。以前この欄で紹介した酸化スズゾル帯電防止技術もこの例である。この例は、数学の分野では形式知として知られていたが、化学分野では他の形式知が存在したために問題解決できなかった、という話である。
 
この事例では科学的に否定証明された結論について、他分野の形式知を導入して科学的に結論をひっくり返しているので、受け入れやすいかもしれない。日本化学会の年会におけるシンポジウム企画でも招待されて発表しているが、その時は温故知新による技術開発としてプレゼンを行っている。
 
酸化スズゾルを用いた帯電防止材の技術内容については、以前の活動報告を読んでいただきたいが、この事例では、1990年頃パーコレーション転移という形式知が化学の分野で普及していなかったために現象のとらえ方が偏り、否定証明に至っている。報告書は科学的に書かれていたが、混合則という形式知がその論理展開で使用されていた。これは複合材料の教科書に書かれていた形式知であり、混合則で議論するのは当時のこの分野では常識だった(注)。
 
但し、この報告書に疑問を持ったのは、ライバルの特許を整理していて、特公昭35-6616という古い特許を見つけたのがきっかけである。この特許の実施例では実用的な帯電防止層ができていたことになっているのだが、この報告書や当時書かれた他社の特許も含め酸化スズゾルを絶縁体としていた。
 
極めつけは、特許の実施例はあてにならない、という報告書の著者の感覚である。特許は技術の権利書であり、仮に実施例が捏造されていたとしても、特許が権利化され年金が支払われているならば、その特許に書かれた実施例の実現可能性は高い。またそのような実施例としなければ特許の価値が無い。
 
また、特許は科学の制約を受けない、ということも知っておかなければならない。自然現象から取り出した「驚くべき」機能であれば、非科学的でも特許として成立するのである。但し、実施例が必ず再現可能という前提があるが。
 
この酸化スズゾルを用いた帯電防止技術では、パーコレーション転移のシミュレーションプログラムと帯電現象に関わる新たな評価技術を開発している。この評価技術については、非科学的方法で技術を作り、大学の客員教授になってアカデミアで研究を行い、その妥当性を検証している。
 
社内で標準評価法として使用するために科学的な意味を正しく調べておいたほうがよいと判断し、少し手間と金をかけた。あらかじめデータを揃えていたので、研究に無駄な投資も時間もかからなかった。これは、大変効率の良い研究だったと思っている。
 
科学の形式知になった評価技術を用いて酸化スズゾルに帯電防止層として使用可能な導電性があることを見出し、その製造条件も技術として創り上げることができた。
 
 

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2016.01/16 21世紀の開発プロセス(4)

形式知が整備されていない分野で、科学的プロセスによる技術開発を行うと効率が悪くなる(注1)。その技術開発に必要なすべての真理が解明されていない状況では、自然現象から機能を取り出そうとする時に、解明されている真理だけを用いる実験に制限されるためだ。
 
その時の実験結果によっては、否定証明へ進まなければいけない場合も出てくる。こうなるとモノはできない。そして科学的プロセスでモノができない結果については、科学的と言う理由でそれが当たり前と考え、別の手段で機能を取り出そうと考えるようになる。
 
抽象的な説明になったが、数日前書いた電気粘性流体(ERF)の耐久性劣化問題の話を思い出していただきたい。ゴムからERFへ抽出されたゴムの添加剤が原因で増粘したERFの、機能が失われた話である。
 
科学的な仮説を立てて界面活性剤を検討するが、それに支持された界面活性剤だけ検討して問題を解決できないという結論が出るや否や、その他の界面活性剤については否定証明の事例として使い問題解決できなかった。それだけでなく、ERFに耐えうるゴムの配合設計というテーマやゴムの表面処理の検討などの方向へ開発が進んだ。
 
このような問題解決の方向へ進んだのは、担当者が無能だったからではない。博士が2名と他は修士の布陣である。しかも東大はじめ高偏差値卒業者ばかりで、科学の分野では高い能力を発揮していた人材ばかりが業務を担当していた。そして、界面活性剤では電気粘性流体の増粘の問題を解決できない、という結論は科学的に正しい緻密な実験と論理で導かれ、それだけを読めば何も間違っていない論文である。
 
このような効率の悪い方向へ開発が進んだのは、形式知が十分に整備されていない分野における問題について科学的プロセスで解決しようとしたためである。科学的に導かれたテーマ、ERFに耐えうるゴムの配合設計やその表面処理技術は、問題解決のための一つの技術手段となるかもしれないが、それで実用的なデバイスができるという保証はない。新しく開発されたゴムの耐久性がわるければ、実用化できなくなる。
 
しかし、ERFの耐久性劣化問題では、実践知を用いた非科学的問題解決プロセスで見出された技術を用いて問題解決がなされた。ちなみに、科学的プロセスではHLB値を頼りに導かれた結論を一般化すなわち普遍の真理として採用し、界面活性剤では問題解決できない、という結論を出したが、非科学的プロセスでは、実践知により市販で入手可能な「すべての」(注2)界面活性剤を検討して問題解決している。形式知の不足している領域の問題を解く時には、このようにすべての条件あるいはすべての因子、すべての範囲を検討する必要がある。
 
(注1)例えば以前この活動報告で簡単に紹介した中間転写ベルトでは、コンパウンドに問題があったが、コンパウンドメーカーが科学に関係の深い機関が関わって成立した会社なので、高い技術があるとされ、科学的に後工程の押出成形に原因があるとされた。そのため当方が担当するまで長い期間問題解決できなかった。当方が担当したとたんに半年で問題解決され、その後コンパウンド生産工場まで建った。このあたりも機会があれば紹介したい。中間転写ベルト以外にも大手でスのはいったコンパウンドを平気で技術に問題の無いコンパウンドと押しつけていたところもある。科学を前面に出し技術をおろそかにしている張り子の虎を見破る見識も持ちたい。
(注2)実際には、市販品の一部であるが、多変量解析の結果をもとに「すべて」の界面活性剤を検討したのと同等の方法と思っている。これはラテン方格を用いる実験でも同様の考え方である。

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2016.01/15 SMAP解散騒動

昨年からSMAP解散の噂が流れ、13日にはNHKニュースまでその情報を伝えた。さすがに国民的アイドルの解散である。しかし、ネット情報や週刊誌情報でその裏側を読んでみると、周囲のあまりにも無責任な動きが見えてくる。それも4年後の東京オリンピックの仕事までSMAPとしてブッキングされているのである。
 
多くの情報から彼らの解散は、自らの意志で決まったものではなく、古くからのマネージャーと同僚上司との確執の結果、マネージャーが組織を離れることになって、それに同調した4人と組織を離れる理由が無い、と判断した一人とに分かれたために解散となったようだ。
 
組織に残った一人がSMAPとしての活動ができるように社長と交渉中との噂が流れたりしたが、一度退職すると公言しそれを翻すことは常識的に難しいだろう。しかし、ジャニーズという組織がその社会的影響を考慮し、特例としてSMAPというグループをAKBのようなグループとしてマネジメントするという道も残っているが、どうだろう。
 
このまま、ジャニーズの過去のタレント同様に「去る者を追わず」という姿勢で解散、消滅となるのか、想定外のことが起きるのか現在のところ不明である。ジャニーズという組織の器量を計る良い機会だ。
 
最初に、「周囲の無責任な動き」と書いたが、少なくとも現在の結果を見る限り無責任である。SMAPの社会的価値をこれ以上論じるほど芸能界に関心はないが、彼らに老若男女の多くのファンが多いことや公的業務に関わっていることを考えると、もう少し穏やかな解決方法は無かったのか、という気持ちになる。
 
ジャニーズという組織は、そうした守るべき社会的価値を無視して事務所の論理だけで活動してゆく方針なのだろうか。担当マネージャーが組織から退くときに、その配下のメンバーが行動を共にする可能性は十分に想定される。ならば、マネージャーの退職とSMAPの問題を切り離して解決できるようにマネジメントするのが健全な考え方である。
 
これを機会にSMAPをリストラしようという考えが組織内にあったなら見方は変わるが、それは少し考えにくい。もし組織がSMAPの社会的価値の重要性(注1)を考えたなら、問題解決に当たり、守らなければいけないその価値をまず守るという進め方が重要である。
 
当方がゴム会社を去るときに、まず考えたのは高純度SiCの事業継続(注2)であり、そのためにまず当時一人で担当していた事業に影響が出ないように外部の調整作業を行ってから、会社を去る決意を社内で明らかにした。その結果事業は現在も継続している。
 
組織を去る個人の影響が、属していた組織やその組織が提供している価値に負の効果をもたらすような去り方はすべきではない。これはサラリーマン以外でも心がけるべきと思っている。
 
(注1)現代の芸能活動は、タレントが公的要職に就くなど国民生活に深くかかわるようになってきた。また、国内だけでなく国際的な活動をする者も多く、一昔前とその社会的位置づけが変化していることを芸能プロダクションは配慮しなければいけない。すなわち芸能事務所もCSRを含めた会社経営の標準を満たす必要が求められている。
(注2)日本化学会化学技術賞の資料などで公開されているように、この事業は、当方が無機材研で1983年に出願した特許第1557100号と特許第1552729号の斡旋を受ける形でスタートしている。その6年後、住友金属工業との共同出願特許第2565024号で半導体部品事業が立ち上がっているが、当方一人で業務を担当し、高純度SiC粉体を契約に基づき外部に提供していた。このように本事業は外部とのコラボで成立していたので社内同様に外部への配慮が重要だった。しかし、どれだけ周囲に配慮したとしても、自ら組織を離れるという行為は、少なからず組織には負の影響をあたえるということを知識労働者は覚悟しなければいけない。また、バブルがはじける前だったので、転職に際してヘッドハンティングの会社から紹介されたのは、セラミックス関係の職種ばかりであったが、セラミックスとは縁遠い高分子技術の業務が見つかるまで職探しに薄氷を踏む思いで努力していた。唯一見つかった写真会社の面接では正直に当方の状況を打ち明け、半導体業務を担当しないという条件で採用していただいた。SMAPのマネージャーもSMAPの価値を失わないように細心の配慮を行い、組織を去るべきだった、と思う。それがプロフェッショナルの去り方である。高純度SiCの事業が現在も続いているのは、その後ゴム会社で担当された方々の努力のたまものであるが、解散消滅するSMAPという価値を国民はどうするのだろうか。SMAPで、まだ外貨を稼ぐことは可能と思っている。「世界に一つだけの花購買運動」がどこまで効果があるのかしばらく見てみたい。エンタメ分野はオタク分野同様に21世紀の日本の重要な産業の一つである。SMAPはジャニーズ事務所だけのモノか?
  

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2016.01/14 21世紀の開発プロセス(3)

形式知が整備されていない分野で、仮説を設定し科学的に実験を進めるとどうなるか。科学で仮説とは、すでに明らかにされた真理を組み合わせて論理的に推論を進め導き出した命題のことである。当然のことだが、そこに捏造により導き出された真理が存在したならば、仮説に誤りを埋め込むことになる。
 
高分子の大御所N先生は「自分で出した実験結果以外を信じない。」とおっしゃっていたが、これは至言である。高分子の世界で捏造が多いのかというと、そうではなく、真理を導き出すための適切な実験が行われていない場合が多いのだ。これは、当方が有名な先生の論文を読んでいても気になるから、N先生の言葉はごもっともと思っている。
 
捏造が無くても形式知が十分に整備されていない状況というのは科学の世界に多く存在するが、それを大きな声で言ってくださる先生が少ないので、おかしなデータも形式知に適合しておれば、それが理論として形式知とされてしまう状況がある。
 
わかりやすい例を挙げれば、指導社員が話してくださった逸話がある。ゴム会社で研究部長をされ、その後アカデミアへ出られた先生の話だ。レオロジーの大家で、部下に実験をやらせて論文を書いていたそうだ。これはよくある話だが、その時の部下の指導方法がすごかった。とにかく理論的に推定されたグラフを示し、このグラフが書けるような実験を行え、と指示されたそうだ。
 
当然だが、普通にゴム材料の実験を進めたなら理論からはずれたデータが得られる場合が多い。グラフに合わせるために部下がデータを捏造でもしたならば、そのゴムサンプルをご自分で評価され、こら!間違っていた、残業だ、となったそうだ。今ならパワハラで訴えられそうな部下と上司の関係だが、それでも理論通りのデータ(注1)が作られた、いや理論と同じ物性をもつサンプルが実験室で作られていった。
 
周知のようにゴムや樹脂、セラミックスなどの材料は、プロセスの影響がその物性に表れる。配合が同一でも、プロセスが変わると、物性はその影響を受ける。例えば特許の実施例が再現できないからと言ってそれを捏造と言ってはいけない。実施例に書かれていない条件やノウハウを投入すればその実施例の数値を再現できる。
 
これは、以前特公昭35-6616の例を紹介したように、実施例は捏造ではないがその再現ができなかったために、その特許を出願していた会社でインチキ特許とみなされていた。しかし、科学的に推論を進めパーコレーションを評価できる技術を開発し、その実施例のデータを再現することに成功して、それが本物であることを証明できた(注2)。
 
形式知が整備されていない分野でその技術を正しく評価するためには、新たな真理を一つ一つ積み重ねる努力を惜しんではいけない。「自分で出した実験結果以外を信じない。」ということを言いたくなるような分野もまだ存在するのだ。
 
(注1)科学の活動とは、自然界(外界)の現象から真理を切り取る、例えば数学で現象を記述するプロセスとして表現できる。これに対して工学は、数学で記述された内容を機能させて価値を市場(外界)へ提供する活動となる。昨日も書いたが、真理が明確で無い場合には、技術者は、科学者の役割も兼ねることになる。この時の部長はそれを念頭に置き、部下を指導していたのだが、真理が得られる可能性があれば、あるいは真理を包含することが可能なすべての条件で実験を行うならば、わざわざ理論通りのグラフを作成する必要はない。故田口先生のおっしゃりたかったことである。ゆえにタグチメソッドでは、制御因子の範囲を大きくふることが良い結果を導く(すなわちすべての領域を含むような実験を心がける)と言われている。
(注2)この特許についても、ライバルメーカーの特許にはダメな例として比較例に使用されていた時代がある。そのもそもこの特許に興味を持ったのは、あるいはこの特許を発見したきっかけは、ライバル会社の特許を整理していて、ある時代から突然この特許が比較例として使用されなくなっていたことを奇異に感じたからだ。ライバル会社もこの特許の重要性に気がついたのかもしれない。しかし、科学の世界では、1980年代になって初めて、酸化スズの導電性について形式知が無機材研で整備されたのである。科学で真理を確立するためには、適切な実験と正しい論理による緻密な展開が重要で、科学の研究が金と時間がかかる原因である。ところが技術では機能が再現良く働けば良いのである。機能実現の方法は工夫により、経済的にできるようになる。それを今回述べている。効率的な開発手法に関する詳細情報を早く入手したい方はご連絡ください。

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2016.01/13 21世紀の開発プロセス(2)

故田口玄一先生は、「企業で基礎研究をするな、基本機能の研究だけ行えば良い」、と言われていた。個性的な先生で、直接3年間ご指導いただいて、この言葉の背景を理解できた。先生には昔の日本で起きた研究所ブームのイメージが強く残っていたようだ。
 
1970年代は、各企業で基礎研究部門が設立され、企業から有名な研究者も育ち、その後アカデミアで活躍されるような人材も輩出した。この時、企業に科学という形式知の世界が取り込まれていった。ただ、科学の目的はあくまでも真理の追究なのである。技術開発では、自然現象から人類に有用な価値をもたらす機能を取り出すことが目的であり、この点を田口先生は言われたかったのだろう。
 
田口先生との直接の議論から、田口先生は科学を軽視していないこと、むしろ科学に忠実になろうとされている姿勢を感じた。しかし、タグチメソッドは、実は科学と言うよりも実践知を効率よく活用するときに、そのメソッドとしての価値が出てくる手法である。
 
わかりやすく言うと、タグチメソッドを科学的に厳密に活用しようとするとうまく行かない場合や、悩んでしまう場合も出てくる(注)。
 
極端な表現になるが、タグチメソッドが難しい、とか面倒くさい、とか感じる人の頭は、科学に毒されているかもしれない。タグチメソッドの教科書には、統計学と見間違うような計算式が出てくるが、これは無視して、ただメソッドとして理解すれば、これほど技術開発の効率を上げてくれる方法は他に無いのだ。
 
また、教科書に書かれた緻密な説明は、先生が科学を大切にされていた証でもある。一方でラテン方格を用いて実験を行い、欠損値が出た時の処理については、教科書に書かれていない方法を教えてくださったが、納得のゆく極めて非科学的な方法だった。
 
タグチメソッドで例えばL18をよく用いるが、ラテン方格でL18は実験規模を考えるとちょうど良い大きさである。実験によっては、結果が出るまでに1ケ月かかってしまう場合もあるが、1ヶ月後にあらゆる条件のデータが得られると考えたら、極めて効率が良い。
 
タグチメソッドに出会う前は、実験計画法を独自に工夫したクラチメソッドでラテン方格を利用していたが、考えられる実験条件の効率の良い一部実施を可能にしてくれる長所がラテン方格にある。真理が確定しない実践知を用いる試行錯誤の実験では、すべての条件について実験をすることが成功確率をあげる。タグチメソッドでは、ゆきあたりばったりで無計画になりがちな試行錯誤を、制御因子を考えることにより、計画的な試行錯誤に矯正してくれる。
 
仮説を設定し、科学的に実験を進めることも重要で時には効率を上げることができる。しかし、このためには扱おうとしている現象の形式知が整備されていることが必須なのである。形式知が整備されていない領域で科学的に研究を行うと著しく効率が悪くなる。例えばSTAP細胞の騒動を思い出して欲しい。
 
(注)日本の科学教育は研究者を生み出すことはできても、技術者を生み出していない。化学工学という分野でも、当方が在学中の時代には、科学者を養成していた。科学者の第一の目的は自然の性質を研究し、一般法則を導き出すことで、その精神活動は帰納的に行われる。目標は、自然を分析し、理解し、可能なときにはそれを数学で表現し、真理とすることである。技術者の責任は、科学的原理を基本手段として、数学を駆使し、実際的で有用な応用に導くことである。技術者が難しい役割となるのは、科学的原理が不明な場合にも、技術者は同様の知識活動を行わなければいけない点である。すなわち、科学者は真理を見いだすだけで良いのだが、技術者にはいつも応用すなわち機能の実現が求められる。技術者も科学者と同様に、帰納的推論と、さらに演繹的解決による機能実現が求められる。現在の日本の科学教育では、一連の精神活動を連続的に働かせる方法を教えていない。当方はこれは日本の科学教育の欠点だと思っている。この一連の活動は企業でOJTとして指導される。弊社でもそのお手伝いをしている。やや抽象的な説明になったが、弊社の未来技術研究所のサイト(www.miragiken.com)の活動報告で問題解決法について少し内容を紹介している。

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2016.01/12 21世紀の開発プロセス(1)

ゴム会社では異色な事業であり、その心臓部分となっている高純度SiCの原料(前駆体)高分子の開発プロセスを思い出しながら9回にわたり書いてみた。30年以上前の話ではあるが、この事業化では人生を左右する事件もあり、今でも当時の出来事を鮮明に思い出す。
 
昨日書いたように、当方も研究者として科学100%の開発プロセスが大好きである。真理をめざし徹底的にそれにこだわる理由は、真理を見出した時の感動が大きくなるからだ。だから、STAP細胞はじめ捏造をする研究者が増えてきている状況を当方は理解できない。
 
自然界の真理は、可能な限り美しく取り出すことが研究者の最大の喜びのはずで、そのように取り出された真理で科学の体系は作られなければいけない。
 
昨日紹介した高性能超高温熱天秤については、熱分析装置を事業にしている某メーカーに依頼したが、性能未達のまま納入された。当方の提案した設計では性能を出せない、というのがメーカーの担当者の言い分だった。
 
納入された装置を点検したところ、提案した以外の工夫は何もされていなかった。ところが、未完成の機械が納入されてわずかな改良で基本的な機能は、当初予定していた仕様に到達した。すなわち試料部分が2000℃まで1分以下で加熱される熱天秤が完成したのだ。
 
某メーカーで、なぜ完成できなかったのか不思議だった。装置開発の担当者に尋ねたところ、仕様書に基づき開発をしていたという。彼によれば、当方の改良したところは、仕様書に書かれていなかったので見積もり外だという。
 
そのメーカーとは共同開発契約を結んでいたが、依頼した以上のことをやらない方針だったようだ。しかし、TGAの部品代は1000万円もかかっていない。文句の二つ三つ言いたかったが、とにかく研究に使用可能な熱天秤が完成したので、その後は細かいところを自分で改良しながら研究を進めた。
 
科学の先端で真理を追究しようとするときに、評価装置は重要である。時にはこの熱天秤のように自前で開発しなければいけない状況になる。高純度SiCの開発では、品質管理のためにもこの天秤が必要だったので投資を惜しまなかったが、とにかく先端の科学の領域で科学に忠実に研究開発を進めようとするときには、評価設備への投資が膨らむものである。
 
投資を抑え科学を追求する研究開発を心がけるならば、産学連携がよい、という人がいたが、今時アカデミアも大変なのである。また国のプロジェクトでもマッチングファンドシステムで企業にいくらかの負担を要求してくる。それでも先端の科学の領域で研究開発をしなければいけないと考えるメーカーは、産学連携も含め他の組織とのコラボレーションにより投資を抑える工夫が必要になる。今時先端の科学領域で金がかからない研究開発など不可能な時代である。一方でお金をかけたなら成果が出るのかというと、STAP細胞で1億4500万円かかった、という事例を思い出して欲しい。
 

  

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2016.01/11 高純度SiCの発明プロセス(9)

フェノール樹脂の廃棄処理作業を利用して行った実験では、実用的な条件を見出せなかったが、フェノール樹脂とポリエチルシリケートとを混合して、シリカが沈殿せずいつまでも透明になっている液体を創りだすことができた。この1ケ月後には無機材質研究所への留学を控えていた。実験の続きは、2年間の留学を終えてから実施するつもりでいた。
 
しかし、留学したその年にその実験の機会が訪れたことは、一年ほど前の活動報告に書いたので、ここでは省略する。高純度SiCの前駆体ポリマーはこのように試行錯誤の結果完成したのだが、この前駆体ポリマーの合成条件については再現性やロバストも高く、実用性の高い技術であった。
 
ただ前駆体ポリマーの品質管理方法の問題が残っていた。すなわち、前駆体ポリマーが本当に均質であり、それを炭化した時にシリカが分子状態でカーボンに分散しているかどうかを科学的に証明(注1)するとともに、一定の品質を管理する方法を考えなくてはいけなかった。
 
この点については、最初から炭化物についてSiC化の反応を動力学的に解析してやろうと決めていた。すなわち、SiC化の反応速度論について、形式知として結論を出してやろうという野心をもっていた。
 
当時シリカ還元法の反応機構については諸説あり、SiC化の活性化エネルギーも形式知として存在していなかった。ゆえに、この形式知が定まっていない状態を科学的に終結させれば学位を取得できると考え、学位取得をめざしていた。
 
しかし、SiC化の反応をモニターするためには2000℃まで短時間に昇温可能な熱天秤(TGA)が必要だが市販品に無かったので新たに自分で製作しなければいけないという壁にぶつかった。この壁は2000万円かけて熱天秤を手作りして乗り越えたが、自作した高性能超高温熱天秤が完成して、美しいデータを見た時には感動した。
 
解析結果は、当方の学位論文を読んでいただきたいが、SiCの前駆体ポリマーの効果がそのまま現れているきれいなデータである。ただし、これは捏造ではない。熱天秤の生データも載せているので見ていただきたい。わずかであるが、プログラムで取りきれなかったデジタルノイズがでている。
 
アナログデータを出力し、チャートから解析する方法もあったが、速度論の解析をアナログチャートを使って人為的に行うとやや恣意的な解析も可能となるので、すべてコンピューターに解析をやらせた。すなわち、科学的研究では真理こそ真摯に追及すべきゴールなので、客観的なデータ処理(注2)に徹底して拘った。おかげで、C言語のプログラミングスキルを身に着けることができた。当時気軽に使えたN88BASICは計算精度とその処理速度に問題があったので、処理速度の遅いパソコンで計測制御を行うためには、アッセンブラーかC言語をどうしても学ぶ必要があった。
 
(注1)電子顕微鏡では、フェノール樹脂とポリエチルシリケートのコポリマー及びそれから製造された炭化物についてシリカが粒子として析出していないことを確認していた。また、SiOはフッ酸で除去できるので、表面をケミカルエッチングした状態も観察していた。しかし、電子顕微鏡観察という手法は、極めて狭い領域観察であり、科学的な証明に用いることができても、実際の生産になると、大きな領域での均一性が問題になる。そのためマクロ的な均一性をどのように確認するのかという問題が発生する。TGAの実験は、数百マイクログラムまでの量の均一性を評価したり、加熱条件の違いで反応がどのように変化するのか確認できた。すなわち品質管理に必要な装置であったが、SiC化の反応炉設計のためにも重要な設備だった。
(注2)STAP細胞の騒動では、論文データの扱いについてどこまで捏造なのか議論になった。40年前の学位論文を見ていただければ分かるが、その時の議論を当時の学位論文に適用したら、捏造と言われても仕方がない論文は多数存在する。ちなみに当初ゴム会社が国立T大に多額の奨学金をお支払いしていたので学位の面倒を見ていただいたが、お手本のためにみた学位論文にはひどいものがいくつか存在した。生チャートをそのまま載せるのではなく、写し取ったグラフを載せているのだが、本来存在すべきシグナルが何故か存在しないチャートを平気で載せている論文もあった。たまたまリン系の化合物について多数分析していたので気がついたのだが、それでも許された時代があったのだ。また許された、というよりもチャートから写しとって掲載するように指導もされた。ご指導されたとおり論文に掲載したが、今のようなデジタル処理ができない時代には、何でもありの時代だった。研究者が善人ばかりの時代の良き思い出であるが、疑問に感じていたので、データ収集から解析まですべてプログラムで処理する方法を選んだ。データ処理をどこまで凝るのかというのは、本質とのバランスだろうが、現代は40年前よりもデータ処理に関しては厳しく管理すべき時代と思う。
(注3)学位は子供の頃からの目標と夢であり、学位論文にはこだわりがあった。以前の活動報告に少し書いたが、わけあって国立T大で学位を辞退することになった。英文で学位は完成していたのだが、中部大学では、英文ではコピペを見落とすので全部日本語で書くように指導された。しかし驚いたのは、細部に至り厳しいチェックを何度も受けたことだ。見本でみた学位論文の品質から十分にそのレベルを満たしていた、と思った論文に容赦なく赤ペンが入り、書き直しを何度もすることになった。だから、STAP細胞の騒動で露見した学位論文の問題にはびっくりするとともに、学位とは何か、という問題を改めて深く考えさせられた。学位とは指導者にとっても責任を問われる作業なのだが、それを正しく理解していない先生がおられるのだろう。価値ある学位とは、授与する側とされる側が科学の真理に対し、誠実で真摯に対応したかどうかで決まる、と思っている。国立T大で受けた指導時間と中部大学で受けた指導時間では圧倒的に後者が長かったが、審査料8万円という金額で恐縮した。
  

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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