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2016.10/29 カセットテープ

オーディオ用カセットテープが流行しているという。今から10年以上前に、大量にあった音楽用カセットテープの音をすべてCD-ROMに落とした。CD-ROMは一応オーディオ用を用いたのだが、10年以上経過したCD-ROMの中には、色素が劣化して読み取れないものが見つかり、2年ほど前に慌ててHDへすべて録音しなおした。
 
10枚ほどのCD-ROMが読み取り不良になっていた。カセットテープはすでに廃棄した後なので10枚分の音源を失ったことになる。ただMP3に圧縮してバックアップも作っていたので、大半の音源を救うことができた。学生時代に購入したレコードは、未だに懐かしく良い音で聞けるのだが、デジタルの脆弱さに驚いている。
 
カセットテープはCD-ROM化した時にすべて廃棄したのだが、たまたま1本廃棄し忘れたカセットテープが出てきた。10年以上使っていなかったオーディオデッキを動かしてみたところ、動作しない。モーターの回転する音がかすかに聞こえるのでプーリーに使われているゴムがダメになった可能性が高い。
 
オーディオデッキを分解してみたところ、予想はあたり、劣化しプーリーに張り付いていたゴムを見つけた。3本使われていたので、サイズを計り秋葉原まで出かけた。500円程度で無事オーディオデッキが復活した。
 
音楽を聴きながら、今カセットテープが流行する理由がわかった。中音領域から低音領域のぬくもりがデジタルでは再現されないのだ。おそらくデジタル信号として再現はされているのだろうが、中低音領域の微妙なニュアンスがデジタルでは聞き取れない。
 
アナログからデジタルに変わった時に、そのSN比の高さに驚かされ、一気にアナログメディアをデジタル化したが、逆にデジタルからアナログに回帰してみるとその時に気がつかなかった中低音の再現性にアナログの良さを見つけた。

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2016.10/28 ピコ太郎

11月15日に問題解決法の講演会( https://www.rdsc.co.jp/seminar/161116 )が企画されている。そこでネットで話題になっているピコ太郎にふれるかどうか悩んでいる。このピコ太郎の笑いは、ひらめきというモノを説明するのに良い題材なのだ。
 
ただ、ピコ太郎を見てすぐに吹き出す人と吹き出さない人がいるので迷っている。当方は後者であるが、吹き出さなかった理由は、たまたま問題解決法のプレ資料を作っているときに見て感動したからだ。カンのいい人には、事前にオチがわかる芸であるが、そのオチを真剣にリズミカルにやっているところが凄い。さらにあまりにリズミカルなので、事前にオチが分からなかった人は、最後のオチで意味が分かり吹き出すことになる(注)。
 
この芸では、オチが事前にわかった人と、オチが全く分からない人は終わっても吹き出すには至らないが、オチが事前に分かった人は、この芸に感心することになる点が凄いところである。ゆえに、TVでも多くのお笑い芸人がこの芸を賞賛している。
 
ピコ太郎をご存じ無い方は、YOU TUBEをご覧になっていただきたいが、これで吹き出せるかどうか、また吹き出せずばかばかしい、と感じるかどうかは、その人がアイデアマンかどうかの分かれ道になるのでは、とも思っている。ここでばかばかしい、と感じる人で事前にオチが分かってばかばかしいと感じた人はアイデアが閃きやすい人であるが、最後まで聞いてもオチの理解ができなかった人は、少し訓練する必要がある。また、その訓練方法もある。
 
まさにこのピコ太郎はアイデアのひらめきがどのようなモノであるかを教えてくれるすばらしい芸であるが、この芸人が昔「マネーの虎」という番組に出ていたことを知っているマニアックな人は少ないと思う。
 
(注)このオチを英語で理解できるので国際的にヒットしているのである。だから英語が分からない人には少しきつい芸かもしれない。ただ、今時の若い人は、「I have a pen」程度の英語は理解できるので日本人でも受けることになる。
 
 

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2016.10/27 電車内で化粧をする女性

車内で化粧をする女性はマナー違反か、という議論が盛んである。きっかけは某電車のつり広告だが、その人の公衆の面前の行動がマナー違反かどうかは、その社会のメンバーが公衆道徳をどのように考えているかどうかに左右されると思う。
 
すなわち、車内で化粧をする女性はマナー違反かどうか、という議論は、男の立小便がマナー違反かどうか、という議論と等価である、と思っている。大半の男性の意識は進化したので、男の特権であった立小便の議論などばかばかしくてやらない。また、今は軽犯罪法に引っ掛かる扱いなので等価であるというのは乱暴かもしれないが、女性の電車内化粧と同様に、立小便が日常の習慣として見られた時代もあったのだ。そしてそのマナーについての議論がなされた歴史がある。
 
以前国民栄誉賞の受賞を断った野球人がいらっしゃった。その理由が”受賞すればその辺で立小便ができなくなるから”だという。最初は冗談かと思っていたら、実際にインタビューでそのように答えていたので感心した。すなわち、この方は立小便を法律違反だと解っていても男の本能として立小便をしたい、それで賞をけがすといけないので辞退されたのだ。いつまでも態度を明確にしないボブディランよりも潔い。
 
子供の頃、街の道路の脇には側溝があり、常時生活排水がむき出しの状態で流れていた。だから、その側溝で立小便をする人が多数いた。男性の大人や子供だけでなく、たまに老女がお尻をつきだしていた光景も目にした。日常皆が習慣でやっている光景は、進化した人類にはマナー違反と映っても無くならない。
 
当方は、それをマナー違反だと進歩的な親から躾けられた。だからそれを日常の習慣とする男性が多数いたとしても、当方は絶対に公衆の面前で立小便をしないと物心ついた時から固い決意をして生きてきた。しかし、街から側溝が消えても中学校にあがるくらいまで立小便の光景は無くならなかった。今でも強烈な記憶として残っているのが、高校生の時に、朝早く散歩途中の老女がお尻をつきだして立小便をしていた光景に遭遇してしまったことである。少なくとも50年くらい前は、立小便と言う現代の人類から見たらマナー違反と呼ばれる習慣が残っていた。
 
中国に行くと、今でも立小便をする大人や子供をみることができる。また中国人旅行者が子供に立小便させている光景を秋葉原で見かけたこともある。驚いたことに、お巡りさんは見て見ぬふりをしていた。中国ではどのような議論がなされているのかしらないが、立小便と言う習慣を良いと思っている人がいるようだ。
 
電車内の化粧もこれと同じである。もっとも電車内の化粧は高度経済成長末期の頃から、すなわち今から25年ほど前から増えてきたように思う。昔学生時代にボーイフレンドに隠れながら申し訳なさそうに化粧をしているOLを目撃したのが電車内化粧の目撃初体験である。ところが今や堂々と化粧をしている。香りの公害など気にせず、また他人の洋服を汚しても謝らない傍若無人ぶりである。
 
電車内の化粧は女性の社会進出とともに顕在化してきた習慣で、古くから伝統的に存在した立小便とは比較できない、と言われるかもしれないが、当方の目には老女の尻を突き出した立小便と同じ光景に見えてしまう。
 
マナー違反かどうかという議論の前に、電車の中で化粧をされている方は、男性諸氏に立小便と同様の視線を受けているということを意識していただきたい。少なくとも当方は女性の電車内の化粧をみると、老女の尻を突き出した光景とが重なり不快である。これは、偏見だと非難されても、そのように親に躾けられたのでどうしようもないトラウマのようなものである。楽屋裏を見る、見ないという次元の意味ではなく、それをみると立小便と同じように見えて不快な人がいる、ということを意識してもらいたい。
 
高校生の時に出会った老女は、あたかもゴキブリと遭遇したときのように凍り付いて身動き取れない当方に「おはよう」といってきた。それが習慣の人には、たとえ悪いマナーであっても、他人に大きな迷惑をかけているわけではないと、その人の中で正当化されているのだろう。
 

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2016.10/26 ホウ酸エステル(2)

燃焼時の熱でボロンホスフェートを合成し、基材の高分子を難燃化するアイデアは、当時として画期的であった。しかし、貯蔵安定性にすぐれたホウ酸エステルの分子設計が問題となった。すなわち、簡単な構造のジオールとホウ酸から合成されるホウ酸エステルでは耐水性が無いので、工場で使用できない。
 
しかし、この問題はたまたま実験室にジエタノールアミンがあったので、簡単に解決できた。もっともポリウレタンの研究開発を行う部門だったので、ジオール類は一通りそろっていた、という好条件が幸いした。運が良かったのだ。
 
ホウ酸とジエタノールアミンとの反応は簡単だった。両者を混合し、100℃で1時間程度攪拌するだけで合成された。水が副生するが、軟質ポリウレタンフォームでは発泡剤として水を使用するので脱水する必要は無かった。
 
面白いのは、脱水しなくてもホウ酸エステルの構造で安定に存在している現象だった。マススペクトルで、6ケ月経過後のホウ酸エステルを評価しても合成直後と変わらなかった。また、ポリウレタンの反応にもジエタノールアミンの効果を考慮すれば、影響がないと結論できた。
 
ホウ酸エステルとリン酸エステルを併用して軟質ポリウレタンに添加したところ、期待通りの高い難燃効果が得られ、燃焼後の残渣には材料設計通りボロンホスフェートが残っていた。
 
指導社員の指示で、市販の主だったリン酸エステルとの組み合わせについて実験を行った。50配合程度評価したので、その燃焼結果を多変量解析した。その結果、統計学的にもホウ素とリンとの交互効果が確認された。リン酸エステルについて主成分分析を行い、化合物の分類をしてはいたが、残渣分析の結果からは、リン酸エステルの構造の影響はほとんど無かった。
  
 

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2016.10/25 ホウ酸エステル(1)

始末書を書くことになったホスファゼン変性軟質ポリウレタンの開発により、炭化促進型難燃化システム(インツメッセント系の難燃化システム)の設計法を見出した。その設計法が汎用的な考え方かどうか確認するために、ホウ酸エステルとリン酸エステルとの併用系の難燃化システムを研究開発した。
 
そもそもリン系の難燃剤では、燃焼時の熱と酸素でオルソリン酸が生成し、240℃以上で揮発する。リン酸のユニットが脱水と炭化反応の触媒作用を発揮しているのだが、燃焼時には炭化反応に寄与するやいなや揮発している。
 
リン酸エステル系難燃剤を添加し、難燃化した軟質ポリウレタンフォームの燃焼試験を行うとそのことを確認できる。すなわち、燃焼時のガスの中にはリン酸成分が観察されるし、燃焼後の炭化物について分析するとほとんどリンのユニットが残っていない。
 
ところがホスファゼン変性軟質ポリウレタンフォームの燃焼試験をして驚いた。まず煤の発生がほとんどなく(注)、ガス分析を行ってもリン成分が燃焼ガスに観察されない(注)。燃焼後の炭化物を分析するとホスファゼン分解物が添加量に相当する量で残っていた。
 
そこで燃焼時にリンを含む単位を揮発しないように固定化するアイデアを考案した。すなわちホウ酸エステルと反応させてボロンホスフェートの形態にすることを提案した。始末書に書かれたこのコンセプトは主任研究員に大うけした。始末書としては0点だったかもしれないが、とりあえずこのアイデアでご機嫌を取ることができた。
 
(注1)煤は不完全燃焼で発生する。しかし、煤として飛散するまえにチャー(燃焼面にできる炭化物のことをこのように呼ぶ)に変化させる機能がホスファゼンには(リンのユニットには)触媒作用として存在する。ホスファゼンでは、その耐熱性のある骨格で触媒作用を示すリンのユニットが揮発しない。一般的なリン酸エステルでは、熱分解してオルソリン酸に変化する。エクソリットのような金属イオンが存在したリン酸エステルでは、ホスファゼン同様にリンのユニットが揮発しにくい。

 

カテゴリー : 一般 高分子

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2016.10/24 ホスファゼンの高分子量体

ホスファゼンのポリマーには、P=Nを線状につないだポリマーと、環状のまま重合させたタイプとがある。ホスファゼン変性軟質ポリウレタンでは、ホスファゼン環(ジアミノ体)とイソシアネート系化合物を反応させて、有機無機ハイブリッドポリマーを合成している。
 
このハイブリッドポリマーに含まれるホスファゼンブロックは、難燃機能以外にポリマーの可塑化機能も有している。ポリエーテル系軟質ポリウレタンでは、ポリエーテル部分がエラストマーの機能を発揮するので、ホスファゼンブロックの可塑化効果は大きく表れない。
 
既存商品のスペックと同等の軟質ポリウレタンを開発する必要から、ホスファゼンブロックをポリエーテルセグメントに入らないように分子設計した。その結果、Tgも含め諸物性は未変性品とほとんど変わらない軟質ポリウレタンを合成できた。
 
社会に出て初めて学生時代に学んだ知識を仕事に適用したのだが、力学物性のコントロールには、この仕事を担当する前の3ケ月間に学んだ知識が活用された。ホスファゼンについては、大学院を修了し、就職までの二週間の春休み期間中に大学院で在籍した講座の先生に許しを得て、少し研究していた。
 
今時の学生は、社会人前に卒業旅行というのが定番のようだが、ドラッカーが愛読書だった当方は、社会に出る前に少しでも知識を詰め込んでおこうと努力していた。春休みの二週間では、一日24時間しかないのでいくら頑張ってもホスファゼンの精製と各種ジアミノ体の合成程度しかできなかったが、ショートコミュニケーションにまとめられる程度の実験データが得られた(注)。
 
ホスファゼン誘導体について当時の状況を一言で書くと、ファイアーストーン社でエラストマーの実用化が発表され、新素材として注目を浴びつつある時代だった。当方がゴム会社に就職したのもこの情報の影響を少し受けた。
 
ホスファゼン変性軟質ポリウレタンフォームの開発では、春休みに合成したホスファゼンが使われた。教授から記念品としていただいたのだが、35年ほど前にはこのあたりの管理はゆるかった。始末書を書きながら反省していた記憶がある。しかし、小保方氏の「あの日」を読み今でも管理がゆるい研究組織が存在していることに驚いた。
 
(注)ゴム会社に就職して10月までは新入社員研修だった。この期間に、報文を二報ほどまとめ大学の先生に提出している。ホスファゼンを頂いたお礼である。ホスファゼンの原料は安価だが、ホスファゼンは日本で市販されたばかりで高価だった。ご指導してくださった先生は少しユニークで、バケツで大量に合成する方法を教えてくださった。数百円程度の原料で、数キログラム合成できたので購入するよりも安価だった。ファイアーストーンで研究しているなら同じような**ストーンという名前の会社も研究するだろうと、餞別がわりにその先生が精製物をガラスに封管してプレゼントしてくださった。これがホスファゼン変性軟質ポリウレタンフォームに活かされた。40年ほど前の思い出である。卒業旅行も楽しいかもしれないが、夢をみながらの研究も楽しい。
 

カテゴリー : 一般 高分子

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2016.10/23 仕事のやりにくい関係(2)

始末書を提出した後に調査をして慌てた。市販のホウ酸エステルを使う、と書いたが、ホウ酸エステルが市販されていなかったのだ。リン酸エステルは難燃剤や可塑剤として多数の種類が市販されていた。
 
調査もしないで適当に浮かんだアイデアで始末書を書いたために、いざ企画書をまとめ始めて困った。市販されていないホウ酸エステルをどのように調達するのか、悩んだ。
 
指導社員は気楽だった。どのようなことがおきてもいつも美しさを保ち悠然と構えているような人だったので、気楽に見えたのかもしれない。当方が書いたのだから何とかしなさい、と言うだけだった。調査を進めたところさらに困った情報が出てきた。ホウ酸とジオールとのエステル類は加水分解しやすく貯蔵安定性が全くないのだ。
 
実際に合成してみたところ、脱水しなければすぐにホウ酸が析出する。さあ大変だ、と慌てて走り回り実験室を見渡したところ、ジエタノールアミンを見つけた。このジエタノールアミンでホウ酸をエステル化したところ、不思議なことに安定な化合物ができた。セレンディピティーとはこのようなことを言うのかもしれない。
 
独身寮に帰り、分子模型を組み立てたところ、ジエタノールアミンのNがうまくホウ素原子に配位するモデルを組み立てることができた。翌日図書室に行き、文献検索を行ったところ、過去文献にホウ酸とジエタノールアミンの情報が出ていた。しかし、難燃剤としてではなく防錆剤としての応用で、その情報から安定な化合物であることを確認できた。
 
始末書を提出して1週間後、リベンジできそうな新規炭化促進型難燃化システムの企画書が出来上がった。指導社員は、あとは本当にガラスができるかどうかだけね、と言われたが、ホウ酸エステルとリン酸エステルとの反応でボロンホスフェートができることを知っていたので、それには自信があると応え、翌日からサービス残業の生活が始まった。
 
真摯に成果を考えたときに、その成果に集中すると、人間関係は、組織の道具としての一部品となる。人間関係が良いと、組織への働きかけは容易だが、仮に悪くても組織が何とか機能しておれば成果は出せる。人間関係に依存しない組織と成果に集中することが大切である。成果と無関係の属性に目を奪われているとひどい目に合う。

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2016.10/22 仕事のやりにくい関係(1)

年下の上司では仕事がやりにくい、というアンケート記事から、昨日は新人時代の思い出を書いたが、年下の上司で仕事がやりにくいというのは、年上の美人上司で仕事がやりにくいのと同様、一緒に仕事を行うパートナーの属性を意識しすぎるからである。
 
年下だろうが、美人だろうが、仕事の成果を真摯に考えたときには、それは関係ない属性である。成果に焦点を合わせれば、仕事を行うための工夫が見えてくる。換言すれば、仕事の成果と無関係の属性に目を奪われていては大変だと気づくことは重要である。
 
昨日の続きを書くと、新人発表が終わった時に成果になったように思えた。しかし、ホスファゼン変性軟質ポリウレタンフォームの試作が経営会議で問題になった。当方は新入社員だったのでその会議にいなかったから顛末はわからないが、当方が始末書を書かなくてはいけない事態になった。
 
指導社員の説明では、市販されていないホスファゼンを用いて試作を行ったことが問題になり、これを企画したのはだれかと主任研究員が問われ、新入社員だと答えたそうだ。確かにそれは正しく光栄なことだった。
 
今にして思えば、テーマの責任者を聞かれた質問で、管理職が新入社員の責任と答えた情けない話に思えるが、とにかく当時は訳が分からず、美人の指導社員に言われるがまま始末書を独身寮で書くことにした。
 
近所の書店で「人に聞けない書類の書き方」という本を買ってきて書こうとしたが、適切な例文が見当たらない。もっとも自分が悪いことをしたと思っていないので、そもそも例文を探すときの視点が著者の視点と合致していない。
 
結局始末書を書いているつもりが、ホスファゼン変性軟質ポリウレタンフォームを試作できたおかげで、炭化促進型(インツメッセント型)難燃化技術が見つかった、これを発展させて燃焼時にガラスを生成する新規難燃化システムを開発する、と企画書のようになった。
 
翌日この始末書が、全然反省の姿勢が見えないということでトラブルになり、結局その日は終日始末書を何度も書き直すことになった。ところが始末書を書きなおしながら,燃焼時にガラスを生成する新規難燃化システムの構想がまとまっていったのは不思議だ。
 
指導社員が親身になり謝罪の気持ちが具体的に表れるように書かなければ、と指導してくださったおかげだが、主任研究員が何とか受け取ってくれた始末書では、市販のホウ酸エステルとリン酸エステルの組み合わせ系難燃化システムでコストダウンを図る、となっていた。

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2016.10/21 年下の上司

    年下の上司と働いた経験がある人の約6割が、一緒に仕事を「しづらい」と感じていることが、就職情報サイトを運営する「エン・ジャパン」(東京)の調査で分かった、と昨日報じられたが、このような調査結果は何の参考になるのか。
     
    組織で仕事をするときには、いかなる人間関係においても成果を出すことが優先される。しづらいかどうかは真摯に成果を考えたときにあまり問題にならない、と思っている。成果を出せるよう組織に働きかけるのが知識労働者の働き方で、しづらいことを成果が出せない理由にしてはいけない。但し組織がうまく機能するかどうかは、経営者の責任である。
     
    当方の社会人スタートは、10月に研究所へ配属が決まり、新入社員の3ケ月間本当に素晴らしい指導社員と仕事ができたが、翌年の1月からは組織変更があり、新たな指導社員とポリウレタンの難燃化研究を担当することになった。
     
    この指導社員が5つ年上の妖艶な女性で、大変困った。おそらくそれまでの人生で出会った女性で一番の美人ではなかったか、と思っている。このような女性とは当時の当方は仕事がしずらかったのである。年上年下など関係なく、上司がどんなに良い人だろうと、一緒に仕事をしずらい人はいる、ということを早い段階で知った。
     
    仕事ぬきで考えれば、毎日出勤するのが楽しかった。それは周囲にもすぐに察知され、実験室にゆくと冷やかしの嵐であった。それまで毎日サービス残業だったが、その女性から食事に誘われれば、素直に従った。良いタイミングで誘われるのでいつの間にかサービス残業の習慣は無くなった。
     
    自分のペースではなく、すべて指導社員の仕事のペースで毎日が過ぎた。自分のペースではないので大変仕事はやりづらかった。おまけに既婚者だったので指導社員は定時退社で、退社時には当方も一緒に帰る習慣になっていった。その結果、規則的な生活習慣となった。これもある意味で辛かった。
     
    仕事というものは、成果が出るかどうかはわからないが、自分のペースで自分のやりたいように進められるときに最も気持ちよくできる。組織で働くときには少なからずその障害となる要因が生じるのでストレスがたまるが、その要因に対してどのように対処してストレスを軽減するのか、というのは働き方の知恵で対処する。
     
    新人発表までの間、自分のペースというものが全くなくなり、極めてストレスがたまったが、その要因は極めて分かりやすく対処がしやすいものだった。しかし、そこで対処するよりも仕事のストレスとつき合う道を選んだ。
     
    当方が提案したホスファゼン変性ポリウレタン軟質フォーム(注)が高い難燃性を持っていることは予想でき、工場試作をどのように進めるかという問題だけだったことも幸いした。仕事ではストレスが溜まったが、新入社員として二つ目の成果は出た。
     
    (注)35年以上前にゴム会社で合成に成功した難燃性機能を有するホスファゼン環の分子ブロックを主鎖に組み込んだポリマーは世界初の発明で、この成果はイギリスの学会誌に論文として掲載されている。
    なお、この難燃化技術については、下記の講演会で詳細を解説いたします。

    1.高分子難燃化技術の実務

    (1)日時 10月27日  10時30-16時30分まで
    (2)場所:江東区産業会館第一会議室
    (3)参加費:49,980円

    (注)難燃性と力学物性、さらに要求される機能性をどのようにバランスさせ品質として創り込むのか、という視点で解説致します。

    https://www.rdsc.co.jp/seminar/161026

    2.11月度開催予定の講演会は下記
    https://www.rdsc.co.jp/seminar/161116

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2016.10/20 働き方

国民の働き方を見直す動きが、政府中心に高まっている。10年以上前からその前哨戦としてワ-クライフバランスが流行している。当方は少し違和感を持ちながら、社会の動きを見ている。
 
そもそも「働く」意味とは、貢献と自己実現にある、といったのは故ドラッカーで、知識労働者は皆エグゼクティブ、というわかりやすい言葉を残している。働く行為は、パンだけが目的ではないのだ。一日の1/3が労働時間に裂かれるので、人生の行為としてこれを捉えたほうが良いのではないか。
 
今後、人工知能の進歩で、単純な肉体労働のほとんどは機械化されるだろう。それだけでなく、現代のホワイトカラーの一部の仕事についても将来は人間の仕事でなくなるかもしれない。
 
このような将来が見えているのに、今議論されている働き方の見直しは、単に小手先の議論で、真に人と仕事の根本的な問題に踏み込んでいない。ワークライフバランスにしても仕事を人生から切り離すような思考法である。仕事を人生に組み込む思考法もあっても良いし、むしろ将来を鑑みるとそのほうが幸せである。
 
大胆な意見として、現在の1/3の仕事がAIに奪われるという。本当かどうか知らないが、AIに仕事を奪われない働き方という発想が生まれてもいいと思っている。ワークライフバランスという考え方ではなく、仕事に対して人間の英知を傾けて取り組む思想である。
 
このような思想では時に、ワークとライフのバランスをくずすような働き方も出てくる。高純度SiCの事業化に取り組んだときもカオス混合のプラントを立ち上げたときも、徹夜や睡眠4時間以下の日が1週間以上続くような働き方をしていたが、幸せだった。幸せだっただけでなく、知識も増えて自己実現を達成できた。
 
過重労働=ブラック企業という単細胞的発想が必ずしも幸せな働き方を約束するとは思えない。過重労働でなくてもその仕事に人生の意味がなければ、人は不幸を感じるのではないか。他人が見て過重労働であっても、その人の人生で重要な仕事であれば、取り組んでいる人は幸せを感じている場合もある。
 
半導体用高純度SiCの仕事では、将来セラミックスの専門家としての夢を見ていたがFD事件で無残に消えた。高分子の専門家に目標を変えてその卒業試験のつもりで取り組んだのがカオス混合プラントだった。量産が3ケ月後という刺激的な状況でプラントを立ち上げなければいけないストレスは、20年間写真会社で自己実現に努力した試験と捉えたときに心地よいストレスとなり、50を過ぎた体にきついはずの徹夜も快適だった。

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