タイヤに用いられるゴムは、今でもバンバリーとロール混練の組み合わせプロセスで製造されている。生産性の高い二軸混練機がなぜ用いられないのか。それは要求特性を満たす混錬が二軸混練機ではできないからである。低レベルの物性のゴムについては、すでに二軸混練機の導入が行われている。
最近食器などの耐熱性容器にシリコーンゴムやシリコーン樹脂が用いられているがこれらの大半はシリコーンLIMSで製造されており、混練プロセスは用いられていない。スタティックミキサーで混合された液状物質を反応させて作られている。
シリコーンLIMSではオリゴマーの反応で分子の鎖延長と架橋が同時進行して行われゴムとなるので原料の混合だけで練りは行われない。ゴム物性実現のためにはオリゴマーの設計が重要であるがこの分野は開発途上であり、現在はコストを安く低レベルの物性のゴムを作ってそれを活用できるマーケットを開発している段階である。
高性能のシリコーンゴムが必要な場合にはミラブルタイプが使われており、この場合には混練プロセスが重要になる。ゴムならば皆混練して作られているというわけではなく、混合プロセスだけで作られている場合もあるのだ。この知識は材料を眺める時に重要になってくる。
カテゴリー : 高分子
pagetop
二軸混練機として購入された設備でもへぼな設備であれば樹脂を混練できない、と説明しても、その設備の所有者はなかなか理解できないようだ。一応ストランドを轢くことができ、ペレットも作成できる。しかし射出成形体の力学物性が上がらないのは、処方の責任と言い出した。
KOBELCOの装置で混練した同じ処方だ、と説明しても、条件があっていないのでは、といろいろ言ってくる。ダメな設備ではだめである、と若いころ社会党の党首が言った言葉と同じようなことを言ってしまった。だめな二軸混練機でも樹脂を押し出すことが可能なので素人は問題がどこにあるのかを理解しにくい。
同様に現在の二軸混錬機による混練プロセスがバンバリーとロール混練のプロセスと比較して混練レベルが低いことを理解している人は少ない。現在のKOBELCOの技術をもってしてもバンバリーとロール混練を組み合わせたプロセスの技術を二軸混練機で実現することは困難である。
このことを理解していると、樹脂の混錬で目標とすべき混練レベルを見極めたいときにバンバリーとロール混練のプロセスを検討しようという発想が出てくる。
15年ほど前にパルプとPEの混練を検討した時に躊躇せずバンバリーとロール混練プロセスで行い、異臭のしないポリスチレン同等の力学物性と成形性を有した複合材料を開発できた。
同じ時期にKCKと呼ばれる連続式混練機で製造されたパルプ樹脂の複合材料が存在したが衝撃強度と異臭の点でバンバリーとロール混錬による場合よりも物性が劣っていた。
混練プロセスは混ぜることと練ることを満足できるレベルで実現できるプロセスとして作り上げねばならないが、二軸混練機だけではそれが難しい場合がある、というのが現在の技術レベルである。混ぜることはできるようになったが練る技術について未完成であるのが二軸混練機である。
カテゴリー : 高分子
pagetop
二軸混練機の中で起きている現象を可視化することは困難である。上海の某大学の研究者が一部をガラス張りした混練機で混錬の説明をしてくれたが、シリンダー部分が柔らかいガラスに変化した効果を質問したところ誤差だと答えてきた。これはおかしい。二軸混練機ではシリンダーも重要な部品の一部である。その壁面の材質で混練現象は変化するはずだ。
バンバリータイプで軸に垂直な壁面の一部をガラス化した装置も見たことがある。この装置については壁面がガラスになっていることを誤差と称しても問題ない、と思うが、二軸混練機のスクリューに平行な壁面をガラスにした装置は単なる展示物の効果しかないと思う。
およそ押出機の性能しか発揮していない二軸混練機でPC/ABSを混練するとどうなるか。スクリューにはニーディングディスクもついている。出てくるストランドは一応まともにできていても成形体で力学物性を評価すると引張強度等は1-2割程度低くなる。
KOBELCOの二軸混練機と同様のスクリュー構成にしても強度は低い。シリンダーの壁面の影響が出ている、と考えている。ニーディングディスクやロータ形状のわずかな違いよりもスクリューと壁面の間隔の影響が大きいだろう。
ちなみにこのへぼな二軸混練機でTCPなどの難燃剤を10部以上添加すると混練できない。どのような温度条件を設定してもだめである。ただし見かけはうまく混練されているように見えるから大変だ。それではなぜ混練できない、と断定していうのか。
10時間ほど運転したらフィード口で難燃剤が滞留していることを発見したからだ。少しずつ時間とともに増えてくる。同一処方をKOBELCOの二軸混練機で混練してもそのような現象は起きない。
カテゴリー : 高分子
pagetop
WEBで公開されている料理のレシピにはどのように作ってみてもまずい料理がある。そもそもうまいかまずいかは個人の味覚に依存する部分もあるので、当方の味覚がおかしいのかもしれない、と落ち込んだこともある。どのように作ってもまずい料理はさておき、作成方法に書かれていない部分でおいしさが変わる料理もある。
例えばハンバーグ。混練方法で味が変わる。100g1000円程度の黒毛和牛をひき肉にして作ってみるとよくわかる。練り過ぎると安い牛肉で作ったハンバーグと味が変わらなくなる。この実験を行うと練の意味を感覚で、正しくは味覚で理解できる。
一方安い牛肉や豚肉との合いびき、あるいはチキンを用いた時には、よく混練した方がおいしくなる。おからとひき肉を混ぜて作るおからハンバーグも、混練条件で味だけでなく外観も変化する。
昨年一年かけておからハンバーグを研究したが、おからハンバーグはよく練ったほうがおいしい。カオス混合のノウハウがあるならば実験してみるとよくわかる。食感まで変化する。通常の練では、おから感が残っているが、カオス混合を行うと色味以外は満足できるハンバーグができる。
色味については八丁味噌で色つけし、牛すじで取っただし汁を加えると安い牛肉で作ったハンバーグに肉薄する味になる。機会があればレシピを公開したいと思っているが混練方法をどのように解説したらよいのか悩んでいる。技術の伝承の難しさである。
カテゴリー : 高分子
pagetop
回転している二本のロールに挟まれ練られているゴムにカーボンを少し添加しただけであっという間に黒くなる。但しその変化は水を高速撹拌しているところへ黒インクを垂らした変化と異なる。
混錬と混合の違いが短時間のゴムの黒変という現象で観察される。指導社員によく見ているように、と言われて目を凝らしてみていた実験を今でも覚えている。目の前で起きていた現象は分散混合と分配混合というモデル化ではしっくりこない。
科学的表現ではないにもかかわらず、技術のイメージを現場で指導者と共有化する作業は技術の伝承のために重要である。技術と芸術の境界が不明確になる原因もここにある。ダ・ビンチを科学者と言う人がいるが彼はすぐれた技術者だったと思っている。
科学では論理が重要で真理を基に新たな一つの真理を目標に展開される。ゆえに論文等の書物で記述された内容をどこでも容易に共有化できる。またそれができない場合には科学として失格の烙印を押される。例えば科学の実験手順であればだれでもそれが再現できることが重視される。
料理のレシピは科学論文ではないので仮にレシピ通り料理を作ってみて、まずくても社会問題にされない。STAP細胞で問題になったのは、科学論文に書かれた手順で実験結果が全く再現されなかったからだ。もしあれが料理のレシピとして公開されていたのだったら社会問題にはならなかった。
カテゴリー : 高分子
pagetop
混練プロセスでは高分子を練る機能が重要である。低分子どおしの混合と高分子の混錬は同じ現象ではない。高分子の混練機構における分配混合と分散混合という考え方は、そのモデル化の過程で間違いを犯しているように思う。
現象をシミュレーションするためにはそのモデル化が必要になってくる。モデル化の過程で現象を左右する要因のいくつかは誤差として扱われる。本来誤差ではなく現象を左右する重要な因子であったとしても誤差にする間違いを平気で行う。
それで現象をうまく説明できれば問題ないが、ある特定の事例でシミュレーションがうまくいくとすべてそのモデルでうまくいくような説明をする人がおり、問題が複雑化する。
シミュレーションが正しくないにも関わらず実験方法がおかしいと言い出す人もいる。高分子の混錬における分配混合と分散混合を用いた解説について、実務経験を積むとこのような印象を受ける。
どこがおかしいのか。それは練の考えが入っていないことによる。表面の平らな二本の回転しているロールにゴムを挟んでも混錬は進む。この不思議な現象を眺めていると練とは何か、ということが見えてくる。
カテゴリー : 高分子
pagetop
設計の悪い二軸混練機についてスクリューセグメントだけを最適化してどこまで性能が上がるのか実験する機会があった。好んで実験をしたわけではない。やや腹立たしい事情がある。
中国のローカル企業に頼まれて、ある難燃性樹脂の開発を昨年行った。そこが保有していた二軸混練機で試作したところとんでもない結果になった。混ぜることはできても練ることができないのだ。この混練機は使い物にならないから知人の会社の混練機を借りて開発をさせてほしい、と言ったら、とりあえず受け入れてくれた。
知人の会社の混練機で、ほぼ処方が固まりかけた時に、最初に使用した練ることのできない混練機で仕上げて欲しい、と訳の分からない注文が出てきた。二軸混練機の改良のための費用を出すと言われたのでロータを導入するなどスクリューセグメントの大幅変更を行った。
スクリューセグメントにロータが導入されるとモーターへの負荷が増す。だめな二軸混練機のモーターの能力いっぱいの負荷をかけて混練することになった。思い切った改良で若干は性能が向上し少し練ることが可能になったように思われた。
しかし最適混練条件を求めてみたところ、ピンポイントで条件が見つかったがコンパウンドの性能ばらつきが大きく処方の仕上げができなかった。性能の低い二軸混練機はスクリューセグメントを工夫してもその能力に限界がある。
ただそのような二軸混練機で樹脂を処理してもストランドを轢くことができ、ペレットのの作成までできてしまう。その結果どこがダメなのか素人にはよくわからない。二軸混練機でどこまでのことができるのか知るためには、信頼できるKOBELCO製品を使用してみることである。
そして設備の限界を知り、それから安い機械を購入すれば目的に合った設備を経済的に導入可能である。但しペレットを作るだけならばどのような押出機でも構わない。
カテゴリー : 高分子
pagetop
1970年代に二軸混練機メーカーは大小多数存在し、それぞれ特徴があった。そのいくつかは倒産し、今日本には大手メーカーが残っているだけである。KOBELCO以外にも大和の砲身を製造したメーカーはじめ優れたメーカーがあってもKOBELCOを昨日推薦したのはサービスが良いからである。
実は中間転写ベルト用コンパウンドはKOBELCOの二軸混練機の技術だけで混練できなかった。少々改良する必要があった。中古の機械を改良したのだが、またその改良を担当したのは根津にある中小企業であっても神戸製鋼の技術者は協力的であった。おかげで短期間に理想とした混練機が完成した。
この時の経験で面白かったのはスクリューセグメントの設計では分散混合と分配混合の言葉がその説明で使用されたことだ。KOBELCOの混練機で優れているのはロータの設計技術とシリンダーの設計である。
1970年代の二軸混練機ではロータが使用されていない。この頃のスクリューには技術者の思いこみで考案された面白い形状のスクリューも存在する。神戸製鋼ではいち早くロータの研究開発に取り組んだと聞いている。
ロータについてはその効果の説明が教科書により異なっている。ひどい教科書になるとロータはモーターに過大な負荷をかけるので好ましくない、という説明もあったりする。この説明では材料よりもハードウェア―が大切に扱われている。
材料を混練するために適切な装置を選択する、というのが本筋である。混練する材料を機械に合わせるという考え方は本末転倒である。
カテゴリー : 高分子
pagetop
分配混合と分散混合の説明で不十分なのは高分子のレオロジーを考慮していない点である。むしろ伸長流動と剪断流動で混錬が進むと表現したほうが良い。
混練機にはバンバリーやロール混錬のようなバッチプロセスもあれば押出機から進化した連続式プロセスの混練機も存在する。二軸混練機は生産性が高いと信じられてこの70年進歩してきた装置である。
二軸混練機はどれも同じと思っている人が多い。どの二軸混練機を買えばよいか尋ねられたなら迷わずKOBELCOブランドをお勧めする。少し高価だがこのブランドの混練機でうまく混練できないならば他の二軸混練機ではさらに悪い結果となる。但し、正規のルートで購入し技術サービスをしっかりと受けるという前提である。
神戸製鋼から特別にPRを依頼されているわけではない。これまでKOBELCO含め10種類の二軸混練機を扱ってみての感想である。もしKOBELCOの混練機を使ってもうまくゆかない場合は弊社へご相談ください。
中間転写ベルトのコンパウンドの混錬では、KOBELCOブランドの中古品を小平製作所で改良し、成果を出すことができた。KOBELCO製品の良いところは各部品の信頼性が高いことである。中古品でも中国のローカル企業の製品よりも性能が高い。
但しKOBELCO製品を使用しても、スクリューセグメントの設計が悪ければうまく混練できない。どのような材料を混錬したいのか相談すれば最適に近い設計を神戸製鋼がしてくれる。こうしたサービスも含めた価格と思えばKOBELCO製品は高くはない。
カテゴリー : 高分子
pagetop
混錬の教科書を開くと分配混合と分散混合という言葉が出てくる。二軸混練機のスクリューセグメントの考え方でもこの言葉が使われ、両者の理解がその教科書を読み解くポイントになっている。
混練技術を現場で指導された時に、混錬とは混ぜる機能と練る機能の両者をバランスよく実現することであり、分配混合と分散混合の考え方では説明がつかない、と習った。そしてカオス混合という究極の混練技術の存在を教えられた。
カオス混合では混合と言う言葉が使用されているが、カオス混練と表現したほうが良い、とも習った。但しその実現方法は当方の宿題にされて30年間考えることになったが、指導社員の説明から混練技術が未だ科学として完成していないことを充分に理解できた。
しかし混錬の教科書を読むと、分配混合と分散混合の理論的扱いに終始した説明がなされ、あたかも混練プロセスは科学で説明がつくような錯覚になる。
指導社員から科学では説明がつかないロール混練の楽しさを教えられた。ただ二本の丸棒が回転しその間隙で混錬が進むのであるが、そこではカオス混合も起きている可能性があると説明を受け、毎日どの部分がカオスなのか観察をしながら仕事をした。同期の友人からは、訳の分からない説明をまともに信じて仕事を行う姿こそカオスだと笑われたが。
カテゴリー : 高分子
pagetop