活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2019.08/16 高分子のプロセシング(33)

ストランドと成形体それぞれの物性評価結果において、ロバストにどのような差異が出るのだろうか。

 

この場合、タグチメソッドではなく、ワイブル統計を使用して信頼性の評価を行ったほうが良いのかもしれない。

 

すなわち、ストランド段階の物性評価試験データと、そのペレットから製造された射出成形体の物性評価試験データについてワイブル解析を行い、両者にどのような関係があるのかが得られればペレット段階の品質評価の位置づけが明確になる。

 

例えば、高分子成形体の物性で必ず測定されるのは、引張強度や曲強度、あるいはシャルピー衝撃試験またはアイゾット衝撃試験などの力学物性である。

 

これらの力学物性は、射出成形体であればISO527あるいはJIS-K-7161に測定が記載され、その測定に用いる試験片作成のための金型も市販されている。

 

この比較実験を行う時に、ストランドの試験サンプルをどのように作成するのかが問題となるが、仮にストランドのまま評価したならば、射出成形体サンプルでは複合ワイブル分布となり、ストランド段階では破壊モードが一様となる可能性がある。

カテゴリー : 未分類

pagetop

2019.08/14 高分子のプロセシング(32)

光学顕微鏡以外の観察では、試料の前処理で観察される像が変化する場合もあるので注意を要する。

 

 

SEMやTEMなどの電子顕微鏡観察において前処理を測定者と打ち合わせる時間は重要である。

 

 

 

微粒子が導電性を有しているならば、試料のインピーダンス計測により微粒子の分散状態について評価できる場合がある。

 

 

また、導電性が無くても他の添加剤との相互作用などで電荷二重層が形成されるような場合にもインピーダンスの計測で情報が得られる場合がある。

 

 

混練プロセスで得られたコンパウンドについてどのような分析評価を行うのかは、コンパウンドメーカーにとって重要なノウハウとなっている。

 

ペレットの仕様を決めるときに、ペレットの形状やサイズ、MFRをその仕様とする場合が一般的であるが、開発力のあるコンパウンドメーカーでは、次工程の品質問題を予測できる仕様を提案してくれる。

 

 

しかし、機能性高分子材料を開発するときに、求められている機能が混練プロセスにおいてどの程度のロバストで創りこまれているのかをコンパウンド段階で分析評価し、成形体のロバストを予測する技術は大変難しい。

カテゴリー : 未分類

pagetop

2019.07/17 高分子のプロセシング(20)

混練では、昨日書いた高分子特有の現象について熱力学第一法則を思い浮かべながら現象を眺めるとよい。そしてTcとTmのずれをよく体感してほしい。

 

熱力学第二法則では、変化の方向を想像することができ、エントロピーSが増大する方向とは、非平衡下のプロセスであってもガラス化する方向へ高分子の状態は変化することを容易に理解できる。

 

 紐状の高分子ゆえに状態変化が無機材料と異なるが、配合組成その他によっても、TcとTmのずれは影響を受ける可能性がある。

 

組成物では状態変化がさらに複雑になるので、混練後のコンパウンドについて生産が安定するまで、これら熱分析に現れるパラメーターを観察した方が良い。

 

例えばDSCだけでも参考データとして測定しておくとよい。TmとTc同様に重要なパラメータとして、ガラス転移点(Tg)がある。

 

ガラスの定義は多くの無機材料の教科書に書かれているにもかかわらず、高分子関係の教科書にあまり書かれていない。

 

「非晶質でTgを有すること」がその定義であるが、無機材料のガラスでは、その組成から析出する結晶のTcがTgより低いのでその現象を理解しやすい。

 

しかし、高分子でTgは、結晶性高分子でもTgが存在してDSC(differential scanning calorimetry)を測定すればTcに起因する発熱ピークより低い温度でTgの変曲点が現れる。

カテゴリー : 未分類

pagetop

2019.06/30 高分子のプロセシング技術(10)

例えば、カーボンのような超微粉の凝集体では、高分子中でアグロメレートからフロキュレーションまで進みにくい場合がある。

 

するとアグロメレートした状態で表面からアグリゲートが高分子中へ分散してゆくことになる。その結果高分子中のカーボンの分散状態はふた山の分布を持つ可能性も出てくる。

 

ちなみに、体積粉砕は粉砕が衝撃力や圧縮力により行われるが、表面粉砕では、摩擦力や剪断力(ずり応力)により粉砕が進行する。

 

セラミックスを超微粉砕するときに、セラミックス粉体へ機械エネルギーを与える時間を十分長くとることが可能であり、表面粉砕で進行しても超微粉砕を行うことができる。

 

しかし、二軸混練機によるコンパウンディングでは、混練時間が短いために高分子に添加されたフィラーの表面粉砕が進行したときにふた山の粒度分布ができる。

 

先日の経験談で紹介した一流コンパウンドメーカーの中間転写ベルト用コンパウンドでは、見かけでは分散混合が進んでいたが、電子顕微鏡観察を進めるとアグロメレートとディスパージョンの共存した状態だった。

 

ベルトの押出成形で用いた押出機内で混練が進みディスパージョンしたカーボンの分散状態を変化させたため、ベルトの表面比抵抗の面内ばらつきを大きくしていた。

 

このように、セラミックスのプロセシング開発で習得した経験知を活用して、コンパウンド中のカーボンの分散状態について押出成形前後の変化を評価した。

 

この評価結果に対する一流コンパウンドメーカーの言い分は、押出成形が未熟のためカーボンの分散が変化している、と説明していた。

 

しかし、混練が不十分なコンパウンドでは、押出機のスクリューにより発生する剪断流動でも混練が進み、安定な分散状態に変わろうとする。これは形式知から明らかである。

 

これを確認するために、押出成形されたベルトを粉砕し、再度それを押出成形したところ、抵抗の安定したベルトができた。

 

このような体験からカオス混合のアイデアが生まれているが、このアイデアを否定した一流コンパウンドメーカーの混練技術では絶対に中間転写ベルト開発のゴールを達成できないと判断した。

 

ちなみに、二軸混練機にダミーの金型をつけてコンパウンディングする方法を一流コンパウンドメーカーへ提案している。

 

このメーカーの技術者からこの提案を否定されたために、自ら中古機の二軸混練機を購入し、ダミー金型の工夫を試行錯誤で行ってカオス混合装置を3カ月で完成している。

カテゴリー : 未分類

pagetop

2019.06/29 やりがい詐欺が話題になっているが

ゴム会社に入社し、半年間の研修生活の後に研究所へ配属された。研修では、半年は試用期間で10月の配属後が本採用とか、2年間は査定がつかないから思い切り頑張ってほしいとか、企業人としての基礎を教育された。

 

研究所に配属されて一年間の新入社員テーマとして樹脂補強ゴムを担当した。指導社員は当方が初めての部下と言うことで優しく丁寧に指導してくださった。

 

午前中が座学で午後が自由に仕事ができる時間、という毎日だった。研修期間とこの指導社員のおかげで、残業代がつかないとわかっていても、毎日深夜まで仕事をして、徹夜まですることもあった。

 

今で言うところの「やりがい詐欺」状態と言われるかもしれないが、この時の3ケ月は混練について生の貴重な勉強の機会でもあった。

 

「ロール混練ではカオス混合が行われているかもしれない。それを連続式混練機で実現できるのは君しかいない」と言ってくださった指導社員は、本気で言われたのか冗談だったのか知らないが、少し信じてみた。

 

恐らくマンツーマンの朝の座学の時間によく居眠りをしていたので、気合を入れるための一言だったのかもしれない。しかし、カオス混合と言う響きは40年以上も耳に残っている。

 

ゴム会社では、やりがい詐欺状態の末、FD事件で転職したので、おそらくこの会社で出した成果、樹脂補強ゴム、燃焼するとガラスが生成して難燃化する技術、フェノール樹脂天井材、電気粘性流体の耐久性改良技術、電気粘性流体を実現できる傾斜粉体はじめ3種の粉体技術、ホスファゼン難燃性油、30年続いた高純度SiC事業立ち上げについて特許等を証拠に訴えたらそれなりに報われたかもしれないが、訴えていない。

 

 

樹脂補強ゴムやフェノール樹脂難燃剤は、一人で担当していたわけでもないので、という理由からではない。これらの仕事で確実に自己実現できたからだ。

 

 

FD事件の舞台となった電気粘性流体の仕事ではいじめと言ってもいいような状態で、業務を担当しながら業務情報の詳細を見せていただけず、カヤの外で仕事をさせられた。

 

 

しかし、そのおかげで未知の業務で最先端の情報を得る方法を編み出すことができた。インターネットなどない時代である。すべてポケットマネーで活動しておりこの時の領収書もとってあるのでこのお金ぐらいはゴム会社からもらいたいと思っているが時効である。

 

 

ほとんどゴム会社では報われることのない、むしろ労働者としては大赤字状態だが、それでも「やりがい詐欺」と会社を訴えなかったのは、お金に代えがたい「知」を大量に指導していただいたからである。FD事件で退職と言う決断ができたのも当方を指導してくださった多くの方がいたからである。

 

 

セラミックスのキャリアを活かせない写真会社へ転職したのは、ヘッドハンティング会社から技術マネージメントができればよく、専門性は問わない、と言われた。200万円前後年収が上がる条件と将来の約束を提示されての転職だった。

転職先では、転職後にリストラとかその後会社の合併とか散々の状態で転職時の約束など反故にされて、出した成果に対してもそれはマネージャーとしての成果ではないと言われ、うやむやのまま。

この会社ではやりがいが無くなるような日々だったが、会社が倒産しそうだったので必死で働いた。管理職としてこのような感覚を味わえたのは貴重な体験かもしれない。

その結果、酸化スズゾルを用いたフィルムの帯電防止技術、インピーダンス法によるフィルム評価技術、フィルムの表面処理から射出成型まで環境対応高分子技術、ポリマーアロイコーティング技術、有機無機複合ラテックス技術、ホスファゼンの写真感材への応用技術、その他PPS中間転写ベルトやシリコーンLIMS改良など20年間十分すぎるぐらい貢献できた。

しかし、同じ時期に転職していた10歳年上の人ほど処遇されていない。この方は定年退職まで毎日何をされていたのか知らないが、会社の倒産リスクの高い情報を見ても我関せず、たいした成果を出さずに良い処遇を受けていた。

当方も最初はよい処遇だったので気がつかなかったが、日本のサラリーマンはどのように働けば出世できるのかと言う見本になるのかもしれない。ただし、日本のGDPはバブル崩壊後停滞したままである。

カテゴリー : 未分類

pagetop

2019.06/12 なぜ栗山監督はチャレンジするのか

本日広島戦で日本ハム吉田輝星投手が一軍デビューする。その采配にチーム内から疑問の声が上がっているという。

 

原因は、二軍での成績がパッとしなかったことと、今回の一軍昇格のテストに相当する二軍戦で6点も献上していたからだ。

 

しかし、栗山監督はチームの雰囲気を変えるために彼の一軍登板を決めた。これは、リーダーとして大変リスクのある選択である。

 

かつて同じ選択をして大失敗をしていても、同じ選択をする栗山監督に当方は「リーダーがんばれ」とエールを送りたい。

 

当方はゴム会社で高純度SiCの事業化シーズを生み出し、社長から研究棟の建設と2憶4千万円の先行投資を受けた経験がある。

 

そしてその期待に応え、住友金属工業(株)小嶋氏と出会い、高純度SiC半導体治工具のJVを立ち上げ、無事高純度SiCの半導体用治工具という分野へ進出することができた。

 

それまでは、ずっと特別扱いであった。しかし、その後業務をたった一人で担当しているにもかかわらず電気粘性流体のテーマも担当することになった。

 

そして、電気粘性流体の増粘問題のたった一晩で解決(特開平03-124794、特開平03-157498)や、電気粘性効果を示す粉体設計に関する重要技術(これは少し時間がかかったが特開平04-227796、特開平04-227996、特開平227997など)傾斜機能粉体や、微粒子分散粒子、コンデンサー分散粒子という実用性のある粉体開発を成功させている。

 

それだけでなく、その後Li二次電池難燃剤につながるホスファゼン難燃油の発明(特開平04-198189、特開平04-198190)まで成功させた。

 

その後この業務を担当したことで発生した事件で写真会社へ転職したが、かつて栗山監督が特別扱いをした斎藤投手は今でも日ハムで頑張っている。

 

この同じ経験をした「ハンカチ王子」は、「どの世界でも特別扱いはある。監督やコーチはしっかり立場や気持ちを理解しているはず。雑音など気にせず、チームの雰囲気を変えるスイッチとなれ」と激励していた。

 

斎藤投手の特別扱いは、今でも続くが、これは大切なことである。本部長が交代した結果、いきなり他の担当者と同じく会社の事業テーマを担当させられて大変苦労した(新しい本部長が力を入れた電気粘性流体の事業はその後消えているが高純度SiCの事業は30年続き昨年末名古屋の企業に事業譲渡された)。

 

それも高純度SiCの事業化テーマを一人で抱えながらである。2年間成果を出すために常識では考えられない仕事量を一人でこなさなければいけなかった。それも残業代0である。これは特別扱いというよりもいじめである。しかし頑張って言われた目標をすべて達成している。

 

例えば、最初に配合剤の入っていない耐久性のあるゴムを開発せよ、と命じられた時に、問題は、そこにあるのではなく電気粘性流体の設計が悪い、と回答したら、すぐに増粘問題を解決できる代案を持ってこい、と言われた。そこで一晩で増粘問題を解決しなければいけなくなった。

 

そのような状態で業務妨害を受けたのである。電気粘性流体の増粘問題を界面活性剤で解決できない(実際には上述したように一晩で解決できた)、と一年もかけて結論を出したチームの雰囲気を変えるだけでなく会社の癌となる悪人をあぶりだしたようなものだった。

 

もし本日の吉田投手の当番が良かったら栗山監督の株は上がるだろう。今年はハンカチ王子も少し調子が良い。開幕同様一軍に上がる日も遠くないと思う。

 

カテゴリー : 未分類

pagetop

2019.06/10 「いだてん」のつまらなさ

昨日のNHK「いだてん」では、人見絹代が登場したり、日本女子体育大学大創設者が紹介されたり、と日本女子スポーツの発展史を紹介した物語である。

 

ところがそれをありきたりのドタバタ劇でまとめたような回であった。ハードル競技で本当に女子の肌の露出が大きな社会問題になっていたのか調べてみたが、インターネットで調べた限りドラマのような事件になっていない。

 

ゆえにドラマはフィクションなのだろうが、それならばそれで、日本女子体育大学なり人見絹代なりの物語を膨らませたほうが視聴者にはわかりやすく、またドラマとしての筋がとおったのではないか。

 

昨日は竹早女学校の封鎖事件で来週に続くとなったが、これがなぜここまでにならなければならないのかぴんと来ない。

 

視聴率の低迷が指摘され、関係者が物語を面白くしようと努力されているのはよくわかる。しかしそれがドタバタ喜劇とオリンピックに情熱を傾けた人たちの物語を足して2で割ろうとしているのが見えすぎである。

 

そして、その計算結果を間違えている。ありきたりのオチに工夫のない小噺の連続でつまらないのだ。たしかに東京オリンピック小噺という副題がついているが、年末までこの小噺をとても聞く気になれない。

恐らく視聴率は今後も落ち続け、5%以下になるのではないか。これだけの豪華キャストと東京オリンピック控えての番組でそこまで下落したらそれはそれで話題になると思われる。皆でこの番組を見ないように運動しても面白いかも。

カテゴリー : 未分類

pagetop

2019.06/08 高分子のプロセシング技術

材料のプロセシング技術に関する形式知の部分は、化学工学に属するが、1980年前後までそれは未完成であると授業で聴いた。それから40年ほど経過しているが、この分野の形式知は今でも未完成と言わざるを得ない。

 

例えば、混練プロセスについて未だにコンピューターによるシミュレーションもままならない。これは、高分子のプロセシング技術が形式知よりも経験知の占める割合がかなり大きいからである。

 

高分子材料も無機材料も加工されて製品になるまで、その物性にプロセシングの履歴が残ると言われている。とりわけ、高分子材料は物性のプロセス依存性が無機材料よりも大きい。

 

そのため同一ロットで合成された高分子を用いて同一処方の配合で混練を行い、射出成形を行っても、二軸混練機や射出成型機が異なると、成形体の物性が異なったりする。

 

セラミックスでも同様の現象は見られるが、同一合成ロットの樹脂を用いて2台のまったく同一仕様で製造された二軸混練機を用いて、それぞれから得られた2種類のペレットのレオロジー特性が異なる、というような現象はセラミックス材料の開発で経験していない。

 

高分子材料のプロセシングでは、このような形式知で説明のできない現象が時折起きる。

 

こうした経験から、高分子のプロセシング技術は無機材料のそれよりも難しいと思っている。混練プロセスに至っては、技術者それぞれの経験知が異なるゆえに議論さえできない時もある。

 

例えば、タイヤ開発に携わったゴム技術者とPETの成膜技術に携わった樹脂技術者とでは、混練についてほとんど議論がかみ合わないかもしれない。

カテゴリー : 未分類

pagetop

2019.06/07 カネカ「育休問題」

詳細な経緯を知らないが、カネカから育休問題に関するコメントが昨日公開されていた。

そのコメントを読むと大筋の経緯が見えてくるのだが、育休を終えて会社に出てきたら転勤になった人がおり、それについて不満をSNSに書いたことが発端らしい。

長いサラリーマン経験を踏まえてアドバイスをするならば、会社の人事異動等に異を唱えるぐらいならさっさと会社を辞めたほうがよい、ということだ。

今回の育休の人は結局辞めたようだが、それならそれで問題解決のはずで、もし何か問題があるとするならば、育休の件と結びつけないことだ。

まず自分の責任でやめたことを明確にすることである。すると不満にはならないはずで、前向きのコメントに必ずなる。

一方、もしその会社に勤めたいのなら、いつでも誠実に前向きに努めるべきで、理不尽な人事でも前向きに受け入れて一生懸命自己実現を図るべきだ。

そしてその組織にいるのが嫌ならば、さっさと円満退社する。小生は昔、3枚もFDを壊され、その事件に対して会社の対応に不満があったので、せっかく死の谷を6年歩いて立ち上げた事業でも他の人に成果を渡して会社を辞めている。

セラミックスの専門家として自己実現に努め学位までとったが、それは転職先の仕事には活かせず、あらためて高分子について勉強しなおすことになった。

写真会社はゴム会社とまったく異なる風土で、これもまた不満が無いわけではなかったが、一応55歳の早期退職制度が使える年齢まで勤めようとした。

ありがたいことに、退職前にもう半年仕事をやってほしい、と言われ仕方がないので退職日を一年延ばして2011年3月11日に設定して退職している。

結局その日は会社に帰宅難民として泊まることになり、やることがないからいろいろ考えた。目の前にはその日の退職祝賀パーティーでどなたかかわいい女性からもらえるはずだった大きな花束が置かれていた。

不満があったとしても、自分がその組織にいたいと思うならば、不満を解消できるように一生懸命働くことが一番である。それが嫌ならば会社をやめる、これが一番精神衛生上健康的である。

カネカは1社員のために丁寧な声明を出しており、人を大切にしている会社に見える。本当かどうか知らないが(説)、それを信じて働かない限り、良い仕事などできない。働くのは給与のためだけではないのだ。

社会に良い人と悪い人がいるように、会社も一つの社会であり大なり小なり悪い人が必ずいるのだ。その影響が不満の原因であり、組織とこの悪人とは無関係である。悪人には因果応報でかならず天罰が下る。

小生はせっかくの退職記念パーティーと3時からの最終講演が地震でつぶれた。なぜこのような天罰を受けねばならないのか真摯に考えた。

まったく仕事を行わず会社に来て本だけ読んでいる社員に対してガミガミと怒っていた過去がある。今から思えばモーレツなパワハラである。しかし周囲もその人に怒りたかったようなので、また本人も働かないことで叱られていることを納得していたのでパワハラとはならなかった。

ある日その方は自分が働かないのはあなたのせいじゃない、過去の処遇に対する不満だからほっといてほしい、と言われ、当方が叱ることもなくなったが、本来は、人事に相談するのではなく、当方がその方の心の闇について真摯に向き合うべきだったろう(注)。

管理職としてそれができなかったのだから、気がつかなかったが悪人の一人かもしれない。しかし、それ以外は誠実真摯に親身に部下と対応してきたつもりである。

誠実真摯に努力しておれば、かならず感動するようなことが起きる。最後の仕事は自分が評価されるような仕事ではなかったが、一応やり遂げ退職している。

その後社長賞をその仕事が取り、元部下がその時の記念品を10本も段ボール箱で送ってきてくれたのには感動した。サラリーマン人生とはこうした感動の積み重ねでありたい。

(注)人事に異動を申請していた怠惰な社員が異動になるのではなく、当方が窓際に異動になった。恐らくパワハラが問題になるのを会社は恐れたのかもしれない。しかし、不思議なことにこの怠惰な人は当方のことを人事に悪く報告していなかったそうである。この怠惰な人との交流は不思議な体験であり、未だにどう対応すべきだったのか悩むことがある。管理者としての立場と個人の思いの乖離は悩ましい問題である。ただ、窓際となり会社を辞めるのかどうするか悩み、豊川への単身赴任を選んだ。その結果カオス混合と言う大発明が生まれている。これはゴム会社で事業化した高純度SiCと同じくらいの成果である。本日セミナーで混練におけるイノベーションとしてこの技術について説明する。

(説)会社と言う組織は人類が自ら社会的動物と自覚して考え出した組織で、今の自由主義経済の国では、会社と言う組織は、国家の仕組みおよび社会の仕組みの中でうまく調和するように運営されている。だから会社ぐるみの不正に対して厳しい罰が与えられたり、社会から組織そのものが排除されたりする。今コンプライアンスを重視した経営を行うのは当たり前のことである。この組織の中で皆働いているのだが、そこで一つの社会ができたときにある一定量の悪人が生まれてしまうのは自然のことで、不満はおもにその悪人が活動するために生まれる。企業の中には警察は存在しないので悪人は国家の法律に反しない限り罰せられることはない。このような悪人の存在を認めたうえで、どこまで我慢してその組織で働くのか、と考えるのか、悪人を吹っ飛ばすぐらいの成果を出そうと頑張るのかは考え方ひとつである。忘れてはいけないのは誠実真摯に努力しているつもりでも組織にとって気がついたら悪人になってた、ということも起こりうるのである。ドラッカーを読むと彼の企業感は今でも先進的な考え方であることがわかる。誠実真摯に努力して働くことが重要である。企業という組織を正しく理解しよう。学校教育でも本当は現代の企業と言うものについて教えるべきだろう。

カテゴリー : 未分類

pagetop

2019.04/12 フィルムのインピーダンス(1)

高分子の誘電率測定のために、フィルムを計測できる電極が販売されている。ただしその価格は150万円である。

 

また、この電極を使用するときには、フィルムの厚さを正確に計測する必要がある。そこで電極にノギスを付けてこの問題を解決している。すなわち、この電極は単なる電極ではなく、ミクロン単位の厚み測定器ゆえに、立派な箱に入れられて販売されていた。

 

電気計測では電極の形状因子が測定値に影響を与えるため、このような仕組みになっているのだが、それにしても価格が高すぎる。

 

この電極を用いなくても誘電率測定は可能であるが、大量のサンプルを簡便に計測する場合には便利な電極である。ゆえに高い価格が維持されてきたのだろう。

 

写真会社でフィルムの帯電防止技術開発を始めたときに、この高価な電極を購入して帯電防止フィルムのインピーダンスについて研究した。

 

帯電防止評価にインピーダンスを導入したのは特許状況を調べた限りでは当方が世界で初めてであり、当方の特許出願から1年後にドイツの写真会社でもAPSフォーマット用に研究開発を始めている。

 

高価な電極を用いた計測では、既に発表されていた樹脂の誘電率と同じ値が得られた。さらに誘電率の周波数分散などもこの電極を用いると簡単にきれいなグラフが描かれた。さすが150万円の電極である。

 

ところで、当時、この電極と組み合わせて計測される各パラメーターの周波数分散まで簡単にグラフ化できるインピーダンスアナライザーは500万円近くしていた。固定周波数のインピーダンス測定装置は100万円台で売られていたから5倍の値段だ。

 

そこで、PCとのインターフェースが充実していた200万円程度のインピーダンス計測装置にPC9801をGPーIB経由でつなぎ、500万円のインピーダンスアナライザーと同等以上の計測ができるようにした。(当時のインターフェースはパラレル接続がシリアル接続よりも高速転送できたのでGP-IBを使っている。今なら高速USBで簡単に接続できる。また、インターフェース部分のプログラムもMS-DOS時代と異なり簡単である。MS-DOSで用意されていたN88BAISCでも慣れれば簡単であるが、速度の問題を抱えていた。どのような計測をすればよいのか試行錯誤で実験を進めている。その結果Cでプログラムする必要性も出てきてプログラミング部分で悪戦苦闘した思い出がある。その後写真学会国際会議で研究成果を発表しているが、これは福井大学客員教授時代の成果で試行錯誤部分は消えている。短い研究発表の裏には多くの経験知が隠されている場合があることを理解してほしい。ある先生が手ぶらで質問に来た人には知らないと答えておくのが良い、と言われたお気持ちをよく理解できる)

 

ゴム会社では迷わず500万円の装置を導入していただろうと思いながら、実験をやっていた。しかし、プログラムを自作した結果、プログラミングスキルはゴム会社時代よりも向上した。それだけではない。プログラムに計算式を組み込まなければいけないので交流回路についても学ぶ必要があり知識も増えた。

 

若い時の苦労は金で買ってでもせよ、と親によく言われたが、まことに至言である。研究環境は恵まれている方が良いが、資金的に恵まれていなくても研究しようとする意欲さえあれば道が開ける。

 

高純度SiCの研究をゴム会社で企画した時、研究費用0からのスタートだった。その2年後2憶4千万円の投資を受けたのだが半年でこのお金は消えた。

 

貯めていた研究アイデアに使われたのだが、ヤミ研時代の苦労が報われた。お金がないときにはアイデアの貯金に励むことが重要である。フィルムの帯電評価を進めていた時にゴム会社で周囲に否定された負の誘電率のアイデアを展開していた。

 

 

 

カテゴリー : 未分類

pagetop