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2018.04/13 昨日の続きと講演会のお知らせ

高分子材料になると、問題は複雑になる。なぜなら、金属やセラミックスよりも科学で解明されていない分野が多いからだ。

 

例えばブレンドに関するフローリー・ハギンズ理論は、単なる考え方に過ぎないのに、科学の完成した形式知として教科書に出てくる。

 

実は、ポリマーブレンドについて科学的に解明されていることよりも解明されていないことのほうが多い。これまで意識的に科学的に解明されていないところを狙って材料開発を進めたところ、科学的に説明できない技術をいくつか生み出すことができた。

 

この経験的事実から、高分子材料の開発では、論理的に業務を進めるよりも、アジャイル開発的にまず狙いとする材料(ゴール)をとにかく作ってみることが必要だと思っている。

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この3ケ月間に下記講演会が予定されております。弊社主催ではございませんが、割引価格でご提供できますのでお問い合わせください。

「ゴム・プラスチックの劣化・破壊メカニズムと寿命予測および不具合対策」につきましては、弊社へ参加申し込みをしていただければ、すぐに請求書を発行させていただき、振込確認後参加証を送付させていただきます。

 

1.ゴム・プラスチックの劣化・破壊メカニズムと寿命予測および不具合対策

(1)日時:2018年04月17日(火)10:30~16:30

(2)場所:江東区産業会館 第1会議室

(3)主催:R&D支援センター

(4)参加費:弊社へお申し込みの場合には45,000円

 

2.高分子材料の難燃化技術と配合設計・プロセシング

(1) 日時:2018年5月18日(金)10:30~16:30

(開催場所、料金等後日掲載)

3.伸張流動に関する講演会

(1)日時:2018年5月30日(水)10:00-17:00

(2)場所:<東京・五反田>技術情報協会セミナー

(3)主催:技術情報協会

(4)参加費:弊社へお申し込みの場合には56,000円

(5)4人の講師による講演会です。当方はカオス混合について講演いたします。

4.ゴム樹脂の混練技術に関する講演会

カテゴリー : 未分類

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2018.04/11 講演会のお知らせ

この3ケ月間に下記講演会が予定されております。弊社主催ではございませんが、割引価格でご提供できますのでお問い合わせください。

「ゴム・プラスチックの劣化・破壊メカニズムと寿命予測および不具合対策」につきましては、弊社へ参加申し込みをしていただければ、すぐに請求書を発行させていただき、振込確認後参加証を送付させていただきます。

 

1.ゴム・プラスチックの劣化・破壊メカニズムと寿命予測および不具合対策

(1)日時:2018年04月17日(火)10:30~16:30

(2)場所:江東区産業会館 第1会議室

(3)主催:R&D支援センター

(4)参加費:弊社へお申し込みの場合には45,000円

 

2.高分子材料の難燃化技術と配合設計・プロセシング

(1) 日時:2018年5月18日(金)10:30~16:30

(開催場所、料金等後日掲載)

3.伸張流動に関する講演会

(1)日時:2018年5月30日(水)10:00-17:00

(2)場所:<東京・五反田>技術情報協会セミナー

(3)主催:技術情報協会

(4)参加費:弊社へお申し込みの場合には56,000円

(5)4人の講師による講演会です。当方はカオス混合について講演いたします。

4.ゴム樹脂の混練技術に関する講演会

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2017.10/03 アジャイル開発とリベラル

衆議院解散後希望の党が急激な勢いで党勢を伸ばしている。この希望の党の手法はアジャイル開発そのものだ。事前に都民ファーストとともに党名を商標登録していたところも技術開発手法として学ぶべき点である。さらに最近ではリベラル排除と党のコンセプトを明確にするためにとられている行動もアジャイル開発では重要な手法の一つである。

 

そもそもリベラルとはフランス革命のときに生まれた言葉と当方の知識にはあり、かつては自民党内の加藤の乱でも登場している(そもそも自民党という政党は現代の日本の政治に必要な思想の総合デパートのようなところがあるので、国民に支持されるわかりやすい対抗勢力を作ろうとするのは、至難の業である。希望の党はそこをうまくやろうとしているのでこれまでの頭の悪い政治家の新党結成とは少し異なる。かつて存在したみんなの党は、政治の流れに乗れなかったが、希望の党はアジャイルしているのでいまのところうまくゆきそうに見えるがーーー)。

 

政治思想の専門家ではないのでリベラルという言葉の示す意味を当方は正しく知らない。辞書で調べてみてもせいぜい新自由主義や中道左派という共通キーワードがその意味として見えてくるだけである。

 

今民進党から希望の党へ入党できなかった、あるいは見かけ上自分から今入党しないと宣言している入党を断られた方たちをリベラル派と称しているが、その人たちと、かつて自民党内リベラル派の言葉が登場したときの思想を比べると意味不明になる。

 

それでは今リベラル派と言われている人たちはどのような意味で、と問うても実は意味が無いのである。アジャイル開発では科学で不明確な技術あるいは解明されていない技術も取り込む必要がある。また無意識のうちに取り込むこともある。

 

このような場合には、その開発過程で技術のコンセプトを開発者が定義する必要が出てくる。そうしなければアジャイル開発は単なる突貫工事となるからである。いやしくも技術開発である限り、すなわち新機能を取り込んだ商品を造ろうとしている限り、その技術内容を明確にする必要があるが科学で証明されていない場合には、わけのわからない名前でもコンセプトにつけなければしょうがない。

 

また、科学で解明されていない技術でも取り込んで行うところがアジャイル開発の醍醐味でもあるので、とりあえずコンセプトを明確にするためにとってつけたような名前をつけることはアジャイル開発の一つの技法でもある。

 

写真会社を退職する前にカオス混合技術をアジャイル開発しているが、このカオス混合はまさしくこのような技法で生まれた名前である。似て非なる装置にEMF(伸長流動装置の英語訳の頭文字をとってつけた名前)があり、こちらはウトラッキーという学者が伸長流動を混練で活用するため20世紀末に科学的に考案した装置である。科学的に考案されたので、大量生産に使おうとするととんでもなく大きな設備となり、実用的ではない。

 

当方のカオス混合装置は、出来上がっていない技術を定年前に担当することになり、それが半年後に商品に採用されると決まっていたとんでもない状況だったので、開発計画には入っていなかったカオス混合装置をアジャイル開発するマネジメントの決断をした(組織内の調整と開発を単身赴任してすぐに同時スタートしている。そして年末には8000万円の決済でコンパウンド工場を立てている。8000万円でなぜできたかは、問い合わせていただきたい。)。

 

できてもいない技術を商品に採用しようと製品開発が進められていたこと自体カオスだが、一流メーカーのコンパウンドを使用しているから技術が必ずできる、と信じていたところは政治家に一票を投じる気持ちと同じである。製品開発に失敗する多くのケースに、皆が支持していた科学的な技術が完成しないという場合がある。

 

皆が支持するのは科学的な技術ゆえだが、それゆえできない場合があるのは非科学的要素が市場で重要なことが多いからである。市場に非科学的要素があるので、市場におけるアジャイル開発が重要になってくる。

 

話を戻すが、お互いを信じなければ皆で組み立て技術の開発などできず、投票も同様に信じていなければ名前を書くことができない。そして投票後に失敗だったとわかる人生の繰り返しである。政治の世界のアジャイル開発がうまくゆくかどうか知らないが、カオス混合技術は弊社の「研究開発必勝法」で無事成功している。

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2017.10/02 日産自動車の問題

完成車の検査を無資格者が行っていた日産自動車の問題は、おそらく伝統的に行われていた可能性が高い。また、これまで、セレナ、キューブ、ジュークと日産車を乗り継いできたが、セレナでは納入されてすぐ速度計の電気配線の断線があり、キューブでは樹脂製空気取り入れ口の脱落と続いた。これらは、初期故障などではなく、適切に取り付けられていなかった問題なので明らかに検査ミスによるエラーだ。

 

本当は日産車を乗り継ぐ予定は無く、最後に乗るガソリン車はポルシェと同じ構造のエンジン車と決めていたが、熱心な営業マンに押されて4駆のジュークに乗ることになった。その時これまでの新車の問題を指摘し、「日産では完成車の検査をやっていないのではないか」と冗談で言っていたらそれが本当だったのでびっくりした。

 

今年の2月に購入した4駆のジュークは納入されて3ケ月以内に自動ブレーキランプの異常があって、車載カメラを交換している。結局3台続けて新車時にエラーが見つかったことになるが、それでも我慢して日産車に乗っているのは、クレーム対応が迅速で親切だからだ。

 

セレナの前はホンダのプレリュードXXだったが、ゆがんで取り付けられていたボンネットのクレームを新車納入時に受け付けてもらえず、結局そのまま乗り続けることになり、車検の対応も悪かったのでホンダ車が嫌になった。ボンネットのゆがみはセレナに買い替えるまでそのままだったが、日産車のような車両の機能に関わる異常は無かった。

 

新車時に異常があってもクレーム対応やサービスがよいためにリピーターになっていた当方の体験から、車という商品の特殊性を理解できたような気がする。ボンネットが多少歪んでいても走行性に異常は無いのでそのまま乗り続けても大丈夫、と言った営業マンには少し腹立たしさを感じたが、本当は車の基本機能の信頼性の高さ、メーカーの良心に自信をもっていた営業マンに敬意を表するべきだったのかもしれない。

 

ところで、初めて乗った車はカローラクーペでその次はセリカと20代に乗った車は、名古屋人の定番トヨタだった。トヨタ車の購入では営業マンの対応や自動車の品質に特に問題は無かった。さらに、ディーラーにクレームを言った記憶も無ければ、CMを見て選んだ車にCMほどの特別な感動も無く無難な印象だった。トヨタ車が売れる理由かもしれない。

 

セレナは初期故障はあったが、その後の異常はなく、当時のワゴン車としては作りこまれた車内のレイアウトや、加速性能に不満は無く、娘が気に入ったキューブは価格に比較して満足できる室内と低速と都市部での乗り心地の良さに気にいっていた。4駆ジュークは刺激的なデザインもさることながら走りもキビキビして楽しく運転できる。高速道路ではトルクベクタリングの効果で車線変更やコーナリングが楽しくなる。名ばかりのスペシャリティーカーを乗り継いだ経験から、価格の割に楽しい車と感動している。

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2017.10/01 解散総選挙

マスコミ報道によれば、野党の準備が整う前に解散総選挙を行い勝利する予定でいた自民党が、この1週間の野党の動きの中で慌てているという。また、有権者のアンケートには、自民党が驚くような結果も出ており、当方もびっくりしている。

 

このような急激な変化を政治の世界に引き起こしているのは、SNSはじめ情報化時代ゆえの無料インフラの役割があるが、民進党前原代表のあっと驚く決断と小池都知事のマスコミ操作のうまさの寄与が大きいだろう。また、あらかじめ商標登録を済ませていたといわれている希望の党は、あたかもアジャイル開発を見ているような誕生の仕方をしている。

 

小池都知事の政治手法は、ワイドショーで語られているように、マスコミ出身というキャリアのなせる業だろうが、前原代表の今回の決断にはリーダーの在り方を教えられたような気がする。もし今回の総選挙で自民党が負けるような状況になれば、この決断は恐らく政治の歴史の一シーンとして語り継がれるに違いない。

 

事前にドミノ倒し的離党が起き始めていたのでやがては民進党は消える運命だったかもしれないが、少なくとも先週の前原党首の決断については賛否両論あったようにリーダーの決断事例として改めて検証し、学びの事例とする価値があると思っている。

 

今回の解散前に小池氏と民進党の一部が話し合いを進めていた、という情報があるが、離党者の顔触れやその扱いを見ていると、明らかに状況を判断してリーダーが難しい意思決定をした事例だと感じる。総選挙の結果がどのようになるか大変興味深い流れになってきた。

 

一週間以上前には自民党圧勝の可能性がささやかれ、選挙の興味はトヨタ自動車よりも有名になった豊田議員や二発の文春砲を浴び民進党幹事長になり損ねただけでなく離党まですることになった山尾議員の「禊選挙」にあった。しかしそれが簡単にひっくり返るのが情報化時代ゆえだろう。

 

 

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2017.08/25 技術開発の方法(3)

科学という形式知の重要性を誰も否定できない。企業で技術の伝承を行うときに最も効率よく確実に伝承したいときには、科学という形式知で伝承する。また教育分野で、科学は必ず指導しなければいけない形式知である。

 

だからといって、技術開発を科学一色で進めるのがよい方法とは言えない。ましてや非科学的方法を排除するようなマネジメントも控えるべきである。技術開発では、経験知や暗黙知も科学同様に使いこなすべきである。

 

大企業では、研究開発をステージ・ゲート法あるいはその類似手法で進めている場合が多い。その時、研究開発の進捗は科学の視点で評価される。科学の視点で評価を受けるためには、データは科学的検証に耐えうるものでなければならない。

 

これが研究開発に悪影響を与えることがある。30年以上前に聞いたゴム会社の研究所の伝説(悪い事例)として、理論に即したグラフが得られるまで実験をやらされた、という話がある。

 

ゴムの力学物性は大きくばらつく。ゴムの架橋密度について40年前は科学でも盛んに議論されていたテーマだった。力学物性と架橋密度との相関は知られており、理論式も提示されていた。

 

しかし、ゴムは実用化される場合にフィラーが必ず添加される。ところがフィラーの分散はプロセス依存性があるだけでなく、プロセスを経た後のハンドリングの影響も現れる。

 

その結果、架橋密度の影響がうまく力学物性に現れないというケースも出てくる。あるいはフィラーの影響で大きくなったばらつきの中に隠れることもある。

 

だから架橋密度と力学物性の間にきれいな相関が現れなくても、偏差を考慮すれば理論にあっていそうだと思われるならば、その技術は合格としてもよいところを、理論通りのきれいなグラフが得られるまで実験を繰り返すような愚が行われた、という。

カテゴリー : 一般 未分類

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2017.06/06 山本尚先生の御講演(2)

山本尚先生は有機合成分野における触媒反応の権威で、「基質支配の反応」を御研究されてきた。ほとんどの有機反応は、「反応剤支配の反応」であり、今世紀に入りこの反応の分野で破壊的イノベーションが進行しているという。

 

すなわち、当量反応であった化学プロセスが触媒反応に塗り替えられているという。そうしたイノベーションを起こされた先生のご経験から、昨日のアカデミアの研究構造が語られている。

 

すなわち、先生は、アカデミアで未知の学理を探求され「純正」研究を進められた。そこで培われた「基礎」研究を応用研究まで展開され、有機合成の世界に破壊的イノベーションを起こされた体験を語っておられたのだ。

 

この、先生が実践された「応用」と「純正」に向かう真の「基礎」研究では、目標に沿った学理を世界で初めて見出すことが要求される。そして「純正」研究の目標では、流行を追わず、また狭い分野の科学技術にとらわれない融合研究領域を目指すべきで、新しい学問を創る気概が必要だと述べられている。

 

そしてアカデミアの研究者は未知の基礎学理を見つけ、新しい世界のイメージストーリーの提示が必要だと指摘し、それにより「Game Changing」を成し遂げると述べられた。

 

これは、アカデミアの研究の構造の視点で述べられた破壊的イノベーションのおこしかたであるが、ドラッカーも述べているパラダイムの変換による破壊的イノベーションの起こし方のアカデミア版と感じた。

 

先生は、研究を誰のために行うのか、という視点でも、応用研究と純正研究の違いを説明されていた。前者が人のためであり、後者は自分のためだ、と明確に言われた。このあたりは、研究者として年を重ねても純正研究だけをやり続ける姿勢について批判されている。

 

ご自身の研究について、アカデミアの研究構造に基づく説明でまとめられていたので、途中から参加したにもかかわらずご講演の意図を理解できた。しかし、産学連携における企業側への期待がうまく実行されるかどうかは難しいと感じた。企業側の問題は、もっと次元の低いところにある。

 

企業側の問題以外に、先生は指摘されなかったが、「今の時代の」アカデミア側の問題もある。すなわち「末梢」研究に走り、それをもとに「純正」研究を行うアカデミア側の問題である。当方はこれを「技術が科学を牽引し始めた」と以前この欄で指摘している。

カテゴリー : 一般 学会講習会情報 未分類

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2017.05/28 仮説で排除されたアイデア(6)

当方の努力で軟質ポリウレタンフォームのような自立できないサンプルまで測定できるように自動酸素指数測定装置を改良できた。その成果を披露したところ、この装置は購入時にもっと便利だった、という意見が出てきた。

 

すなわち、サンプルを取り付ければボタンを押すだけの操作で「誰でも」LOIを計測できたからだそうだ。だから、当方の改造後それが面倒な手順になった、という批判が出てきた。

 

発泡体では燃焼スピードが速くて計測できないので誰も使用しなかったのではないか、とこのような意見に反論してみたが、反論しながら疑問がわいてきた。設備導入直後の頃に、なぜ、この設備が使われていたのか、という疑問である。

 

すなわち、発泡体すべてがこの装置で測定できない燃焼速度ではなく、開発初期には、この装置で測定できる燃焼速度の遅い発泡体が存在したことになる。そして、難燃化技術の開発が進んだ結果、燃焼速度の速いサンプルができるようになって、この装置では測定できなくなった。

 

これは、開発初期に難燃性が高い材料(燃焼速度が遅い材料)だったのが、難燃性が低い材料(燃焼速度が速い材料)へ開発が進められたことを意味する。

 

詳細を省略(注)するが、この疑問から当時建材の難燃試験で採用されていたJIS難燃2級という評価試験法の問題を発見することができ、通産省建築研究所で新たな規格を策定しなおすときに、お手伝いをすることになった。

 

このあたりの状況は以前にも書いているのでそちらを読んでいただきたいが、科学的に決められた評価試験法のおかげで、この時代にとんでもない材料(注)が各社から開発され、高防火性天井材として認可されている。

 

JIS難燃試験法は、科学的に検討され制定されている。その結果、試験法の研究過程で用いられた仮説から排除された現象が生じた場合には、それに対応できない評価法となる。

 

燃焼という現象を防ぐ機能を備えた高分子の難燃化システムは、その評価法を基準に開発されている。しかし、実際の火災では様々な現象が発生しており、それらの現象をすべて包括して評価する方法を科学的に作り出すことができるのだろうか?

 

それが可能となるためには、実火災について生じているすべての現象が不変の真理として解明される必要がある。

 

(注)JIS難燃2級試験法で試験を行ったときに、サンプルが熱変形し試験用の炎から遠ざかると、サンプルに着火せず不燃材という判定になる。この試験法が検討されたときにサンプルが炎から逃げるように変形し、さらにサンプルが爆裂しない状況を想定していなかったためである。天井材の開発過程で、熱で容易に餅のように膨らみ変形するサンプルが、高い難燃性を有している、との評価結果がJIS難燃2級試験法で得られた。そこでプラスチック天井材の業界で変形し安定に炎から逃れるようなサンプルが開発されるようになった。その結果、難燃化技術のあるべき姿である「燃えにくくする」ということが忘れられて、科学的に「うまく炎から逃れるように膨らむ材料」の開発が進められた。「燃えにくくする」開発が進められていた時には、自動酸素指数測定装置を使用できたのだが、「膨らむ材料」の開発を進めるうちにこの自動化装置では測定できないような燃えやすい材料へ退化していった。これは国の研究機関も含めて科学的研究開発が生んだ悲劇の事例である(実際に火事が多発するようになったので、喜劇ではない)。科学のプロセスでは、稀に、このような間抜けなことが起きているのではないか?この事件では偉い大学の先生まで「科学的に正しい論理」だが、「実用上は火災の原因となり、経験から判断して間違っている」とんでもない論理を展開したため業界すべてが間違った方向へ向かった。経験から判断すればおかしい見解でも、アカデミアの科学的な見解であればそれが正しいと判断される科学の時代に改めて疑問を持った。しかし、以前この欄でも書いたが、科学的に正しい、とされた見解について、その間違いを示すには、やはり科学的に示さなければ認めてもらえないのが、科学の時代である。経験上とか感覚的になどと言っていると軽蔑さえされる。しかし、技術者の経験上おかしい、という判断は重視すべきだと思う。STAP細胞では優秀な研究者が自殺する事態にまで至っている。

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2017.05/27 仮説で排除されたアイデア(5)

この自動酸素指数測定装置には、現在普及しているS社の酸素指数測定装置よりも精度の高いガス混合装置がついていた。調べたところLOIで0.05の値を制御できるほどの高精度だった。一般の装置では、測定時にLOIで0.5程度のばらつきが出るものもあり、この制御系はかなり高性能に思われた。

 

さらにその仕組みは凝っていて、あたかもハイブリッド車のような仕組みだった。これは燃焼状態をモニターし、LOIを上げ下げするときにそのスピードが異なる仕組みになっているためらしい。しかし、この設備の説明書には、この機構も含め制御についての説明がまったく書かれておらず、ブラックボックス化されていた。

 

詳細な説明は省略するが、燃焼スピードの速いサンプルでも少し工夫すればこの装置で計測できる可能性があった。しかし、マニュアルにはその方法について書かれていなかっただけでなく、設備の操作盤にも当方が推定した方法を実施するためのスイッチやダイヤルがついていなかった。

 

もっともそれを行ったならば、マニュアルで操作した場合と同じになるので、燃焼スピードの速いサンプルについては仕様上除外した可能性が高い。

 

さらにこの装置は、マニュアル操作について細かい配慮がされておらず、むしろ自動化のためについているセンサや制御系を外して使用したほうが、すなわち一般の酸素指数測定装置の状態にしたほうが使い勝手がよくなるという奇妙な設計だった。

 

装置の仕組みをさらに調べていったところ、自動酸素指数測定装置という名前がついていてもサンプルの取り付けは手で毎回行わなければならず、測定が自動化されているために生まれるメリットは、「誰でも計測できる」という点だけである。あるいは、敬意を表して言えば、人為的な誤差が入らないようにした自動化装置と言うこともできる。

 

すなわち、材料組成が原因となって生じるLOIの誤差は少なくとも0.1以上あり、それを考慮し、装置の仕様や使い勝手をその前提で購入前に十分検討したならば、科学的な視点で人為的な誤差を排除できるメリットを重視しない限り、購入しない装置と思われた。

 

しかし仮に設備がこのように自動化されて人為的な誤差を最小にできる仕様になっていたとしても、その設備以外で発生する誤差が大きくなって、自動設備の仕様に対応できなくなり使用できない事態になる可能性があるならば、全体の作業プロセスの視点から見て判断するとその設備は使えない、ということになる。

 

これは、夕方や夜に使用できないという注意書きが前提の自動車用自動ブレーキの話に似ている。先日のニュースによれば、自動ブレーキ搭載の車で間抜けな事件(注)が起きたが、不完全で信頼できない科学的装置ほど無駄な技術の産物はない。

 

夕方や夜など明るさが不安定な時には使わないでください、と書かれた自動車の自動ブレーキは、使えないどころか、知らずに使えば危険な装置となる。これでは無いほうが安全である。

 

そこで、自動酸素指数測定装置についていた、センサーや制御系を取り外すことにした。ただ取り外すだけでは面白くないので、マニュアルで使用したときに便利なように改造も行った。

 

自動ブレーキや自動酸素指数測定装置のような意味不明の自動化設備が生まれる背景も科学の時代ゆえのような気がしている。

 

(注)

<以下は千葉日報2017年4月14日記事より一部抜粋した>

運転支援機能を搭載した日産のミニバン「セレナ」を試乗した客にブレーキを踏まないよう指示して事故を起こしたとして、県警交通捜査課と八千代署は14日、八千代市内の日産自動車販売店の店長男性(46)と同店の営業社員男性(28)を業務上過失傷害容疑で、試乗した客のトラック運転手男性(38)を自動車運転処罰法違反(過失傷害)の疑いで、千葉地検に書類送検した。運転支援機能付き車両の公道での試乗事故は全国初。

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2017.01/22 高分子材料(13)

シリカをコアにしたコアシェルラテックスの発明は、硬くても脆くないゼラチンの究極の技術とみなされ、この技術に追従する開発がすぐに業界で活発に行われた。

 

このような場合に技術を開発した会社が特許戦略に詳しくない会社ならばよいが、このコアシェルラテックスを最初に開発した会社は業界トップの会社で特許戦略に長けており、追従開発は、至難の道だった。

 

ちょうど転職したころがこのような状況で、担当者が苦労して開発している姿を見てかわいそうだと思った。当方ならさっさとあきらめて他の技術を探す。高分子材料技術では、大抵の場合に同じカテゴリーでなくても異なるカテゴリーのアイデアで同様の力学物性を達成可能だからだ。

 

すなわち少なくともABC3つの複合化カテゴリーがある。さらにコアシェルラテックスを用いたゼラチンの高次構造は、シリカの周りにラテックスが必ず存在し、その周りにゼラチンが海となっている構造で、シリカが直接ゼラチンを補強しているわけではない。

 

シリカが直接ゼラチンを補強し、そのもろさをラテックスが改善しているような構造はライバルの特許に含まれない。この内容を最初に話したときに、その構造ならば旧来の技術と同じで何も改善されない、とすぐに担当者から否定された。これは科学という哲学に毒された若者の典型的な意見だった。

 

科学は技術開発を行う上で重要な哲学である。しかし、科学に囚われない自由な発想はもっと大切である。その発想から生まれたアイデアが実現可能かどうかは、科学で完璧な証明は難しいが否定証明は容易である。ゆえにしばしば自由な発想のアイデアは否定されることになる。

 

 

カテゴリー : 未分類 高分子

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