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2014.03/04 有機無機複合ラテックス(3)

コアシェルラテックスを開発していた担当者とこの点を議論したが、不可能という回答であった。目の前に従来技術による理想的に混合されたマンガを書いて議論していたのだが、コロイド科学の知識を活用して見事な否定証明を展開した。

 

コアシェルラテックスと従来技術の比較を検討してくれたメンバーAをよび同様の議論をしてみた。すると、シリカゾルをミセルにしてラテックスを重合すれば良い、というアイデアが生まれた。すばらしいアイデアである。ゾルをミセルに用いたラテックス重合技術というのは当時誰も研究していない新規コンセプトであった。

 

この新規コンセプトについてラテックス重合を担当しているメンバーに話したが、やはり軽く否定証明でつぶされた。あまり軽妙に否定証明を展開してくれるので、コアシェルラテックス合成実験の全データをメンバーAに検討させたところ失敗した実験データの中から、ゾルをミセルにしたラテックス重合を実現できるヒントを見つけてくれた。

 

すなわちゾルをミセルにしたラテックス重合は、コアシェルラテックス検討過程の失敗条件から生まれた。さっそくメンバーAにラテックス重合技術を勉強させて、最適化検討を行ったところ、3週間ほどで、シリカゾルをミセルに用いたラテックスが完成した。驚くべきことに、このラテックス溶液にゼラチン水溶液を添加してもシリカゾルの凝集は生じなかった。

 

こうして従来技術の改良に成功し、できあがったゼラチンの性能についてコアシェルラテックスを用いた場合と比較したところ、2割ほど性能が優れていた。

 

ゾルをミセルに用いたラテックス重合技術が完成したので高分子学会賞に応募したら、審査会でそんなもの誰でも知っている、と言われ落選した。1996年のことである。その後ラングミュアという科学雑誌にイギリスの研究者によるゾルをミセルに用いたオイル分散の研究報告が載っていたが、そこには実験の成功は世界初と書かれていた。

 

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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2014.03/03 有機無機複合ラテックス(2)

コアシェルラテックスはゼラチンの靱性改良技術として究極の方法と考えられた。少なくとも従来のシリカとラテックスを併用する方法で、それをナノレベルで一体化しているのだから究極と呼んでも良いだろう。

 

転職した会社では重要テーマと位置づけられ後追い技術が検討されていた。後追い技術では特許回避が必須となる。当然技術に無理が生じる。写真性能へ副作用が現れたり、工程で問題を起こしたりと様々な弊害が現れる。

 

何故同じ技術を追究しなければいけないのか担当者に尋ねた。担当者は他に技術が無いからだ、と答えてきた。また、コアシェルラテックスは自分たちも追求していた技術だという。頭が熱くなっている状態で他のアイデアを考えさせても無駄である。

 

3名ほど高分子物性に興味を持っている連中を集めて、従来技術とコアシェルラテックス技術の違いをまとめさせた。するとゼラチンを硬くする、という目的のためには、従来技術のほうがコアシェルラテックスよりも優れていることが分かった。換言すればコアシェルラテックスは、水で膨潤したときのゼラチンの硬度低下を和らげる程度であるが従来技術は、水で膨潤したゼラチンにある程度の硬さを持たせる効果があった。

 

コアシェルラテックスは究極の技術では無かったのである。シリカのまわりをラテックスで覆った副作用があったのだ。

 

一方従来技術では、シリカとゼラチンが直接接触しているので、ゼラチンを硬くする目的では、コアシェルラテックスよりも効率が高く、同一シリカの量で比較するとゼラチンの弾性率を高くできる。問題は、シリカとゼラチンを混合、あるいはシリカとラテックスを混合するときにシリカのゼータ電位が変化し、一部凝集する現象である。すなわちこの混合時に発生する凝集の問題を解決すれば従来技術でも超迅速に対応出来るゼラチンを作ることができる。(続く)

 

 

カテゴリー : 一般 高分子

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2014.03/02 有機無機複合ラテックス(1)

バブル崩壊直前に写真会社へ転職したころ、写真業界では脆いゼラチンを強靱化する検討がされていた。写真フィルムを現像処理すると、ゼラチンが水を吸って膨潤したときに割れやすくなり、その処理速度を速くすることができなかった。現像処理速度を速くするためには写真フィルムの感光層に使用されているゼラチンを強靱にする必要があった。

 

ゼラチンは水に膨潤すると柔らかくスリキズがつきやすくなる。それを硬くするためにシリカと呼ばれる無機微粒子が添加されていた。しかし、無機微粒子が添加されたゼラチンが乾燥したときにひび割れやすくなるので、それを防止するためにラテックスと呼ばれる柔らかい微粒子が添加されていた。

 

すなわち硬くするためにシリカを添加し、その結果さらに脆くなったゼラチンの物性を改良するためにラテックスを添加していた。ややモグラたたき的技術のようだが、このシリカとラテックスを併用する方法は10年以上の実績があり、感光層のバインダー技術として重要であった。

 

しかし、現像処理速度が速くなるにつれて、その技術では対応出来なくなり、ライバルの写真会社から、シリカをコアにしてそのまわりをラテックスで覆ったコアシェルラテックスという技術が登場し、超迅速処理技術として注目された。

 

コアシェルラテックスはシリカとラテックスが一体化されているので、ゼラチン水溶液に分散してもシリカの凝集が発生せず安定なコロイドを生成する。そのためプロセス上のメリットも大きかった。

 

このコアシェルラテックス技術はナノテクとしても注目され、高分子学会でも取り上げられた。単なるシリカの表面処理では無く、シリカの微小な表面上でラテックス重合を制御するという極めて高度なナノテクであった。またできあがったコアシェルラテックスは有機無機複合ラテックスでもある。(続く)

カテゴリー : 連載 高分子

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2014.03/01 技術の伝承

科学は体系化されているのでその伝承は容易である。また人類の科学の成果は小学校から高校までかけて学ぶことになる。そして大学に進学すればそれぞれ専門の科学を学び、また新たな科学を生み出す研究に携わる。

 

しかし、技術についてその体系を学ぶ機会はメーカーに就職しない限り一般に無い。職能訓練の学校でも技術を学べるが、それは基礎的な技術であり、新たな商品を創り出す技術まで学べない。

 

「現場現物主義」という言葉があるが、ゴム会社に入るまでこの言葉を聞く機会は無かった。ゴム会社では科学よりもこの原理が優先された。まさにこれこそ技術の世界である。技術では、機能が実現されなければ間違っているのである。科学では、論理的に正しければ機能が実現されなくても正しいとされる。

 

また、科学では否定証明を得意とするので機能が実現されていない状態を「だからできないのだ」と証明してみせることは朝飯前である。技術では科学的に正しいのか間違いなのか関係なく、再現よく機能を実現できて初めて正しい技術となる。

 

新入社員の最初のテーマで難しい樹脂補強ゴムの開発を担当して良かった、と思っている。技術とは何か、という問題を体で考えることができたからである。メンターから渡されたのは、一つのゴムサンプルとその配合表及び物性表である。そしてこのサンプルゴムと同一のゴムができるまで新しい実験に進んではいけない、と言われた。

 

最初は2-3回の練習で何とかなるだろうと思っていたら、物性表と同一のデータが得られるまでに、周囲の諸先輩の御指導がありながら1週間かかったのである。頭で考える限り大した作業ではない。またメンターが手順を教えてくださったときにも大した「技」があるようにも見えなかった。しかし、配合物の計量から加硫工程、サンプルのエージングまでのプロセスには様々なノウハウがあり、一つでも手を抜くとメンターから渡されたサンプルゴムと同一のゴムができなかったのである。

 

幾つかのノウハウは反応速度論の観点から科学的な説明を与えることも可能であった。しかし大半はなぜその作業を行わなければならないのか今も不明である。しかし、その作業が行われなければ同一のゴムができなかったのである。

 

メンターは周囲から新入社員のいじめにならないか、とからかわれていたそうだが、技術の伝承という視点では、良い方法だった、と思っている。少なくとも科学で考えても分からない世界が存在することを、そしてその中で技術開発を進めなければならないことを学ぶには大変良いテーマだった。一週間大変だったが。

 

カテゴリー : 一般 高分子

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2014.02/27 「現場力」が新しい科学を生み出す

京大山中先生のiPS細胞によるノーベル賞に続き、若い理系女子小保方博士による「STAP細胞」の発見と現場力による生科学の大発見がこの2年間続いた。後者については研究者の稚拙なミスから週刊紙で騒がれているが、事実は変わらないだろう。

 

かつて高純度SiCの前駆体を有機無機ハイブリッドで合成する手法を生み出し、この材料の概念自体が新規な時代に日本化学会年会で発表したらこてんぱんに叩かれた。その2年後有機無機ハイブリッドの研究報告が日本化学会で活発に議論されるようになるのだが、この世界初の発表のことなど忘れ去られた。

 

さらにその前駆体の反応速度論の論文は、研究の発案者で実施者でもあり論文の著者なのに内容を相談した先生が筆頭となり発表された。30年前の出来事だが、科学が技術を牽引していた時代の話である。しかし昨今科学的成果に新技術を生み出すネタが少なくなってきた。さらに科学までも技術のように現場力で生み出される時代になった。

 

科学と技術は全く異なる概念で、科学は真理を追究することが目的の哲学であるが、技術は機能を実現する方法である。すなわち技術とは人間の本来の営みであり、これを車の両輪で表現する人がいるが、ラジアルタイヤと木製の車輪をつけた台車を動かしていることに気がついている人はどれだけいるのか。

 

技術では、機能が正しく発現しているのか、あるいは何か不具合が発生しないか見るために「現場力」が極めて重要である。そして何か問題が発生したならば、とりあえず機能を正常化するために対応をとることが大切である。この現場対応には科学的である必要は無い。それこそ機械を金槌で叩いて機能を正常化しても良いのである。大切なことは対策が機能正常化に有効な対策であることだ。だから金槌で叩くのは最後の手段でも行わない場合が多い。

 

現場力では常に逆から物事を考えることが要求される。なぜなら、現場では目の前の機能不全に対して直接有効な手段をとらなければいけないからである。科学的に正しいからといって、機能不全を解消できない対策を打ったところで問題解決したことにはならない。あくまでも機能を回復できたときに技術的に正しい答になる。

 

それが例え科学的に正しくなくても技術的に正しければ、科学が間違っているのかあるいはそのような対策を生み出す仮説しか立てられなかった科学の欠陥が原因である。STAP細胞は若いマウスの細胞をスポイトで分離している作業から見つかった。すなわちスポイトにいれた若い細胞には初期化可能な幹細胞が含まれていないのにスポイトからそれが出てくることに疑問を持ったからである。

 

小保方さんの現場力がそれを見落とさなかった。科学の欠陥として発見したのである。そして科学のしきたりで今騒がれているのである。いくら科学者が騒いでみても「現場力」が新しい科学を生み出している事実は変わらない。

カテゴリー : 一般 高分子

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2014.02/26 「混ぜる」と「練る」(混練について)

昨日まで中国のローカル企業を指導しつつ新しい環境対応材料の試作を行ってきた。そこで目が点になる現象に遭遇し、表題の違いを改めて認識した。日本の混練装置を使用している場合には遭遇できない現象と思われるが、それに近い現象を見ても意外と気がつかないのではないか。

 

現象は難燃剤を少し多めに樹脂へ混練していたときに発生した。混練を開始して10分ぐらいしたら難燃剤が投入口の方へ流れてきた。ストランドに火をつけると消火するので練り込まれなかった一部の難燃剤が逆流してきたのだろう。初めての現象である。

 

試作に用いているのは中国製の二軸混練機であるが、この装置は、ただ樹脂を混ぜる機能しか無いように思われる(注)。すなわち低粘度の液体と高粘度の液体の組み合わせを混合するのは難しく、練り込みが行われなければこの2種の液体を均一にすることはできない。

 

「混ぜる」と「練る」とは機能が異なるのだ。難しい理論はともかく、感覚として身につけておかないと高分子の混練実験をうまく進めることができない。ただし混ぜられた材料とよく練り込まれた材料がどのように異なるのか問い合わせて頂きたい。

 

SP値が大きく異なる組み合わせでは、混ぜることすら難しくなる。例えばフェノール樹脂とポリエチルシリケートを無溶媒で混ぜるには、SP値が大きな組み合わせの混合になるため技術を要する。そのノウハウを公開していないのでアルコール溶媒を用いてこの組み合わせの混合を行う研究者は多いが、それでは実用性がない。しかし、技術は無くても溶媒があれば簡単に混ぜることができる。

 

混ぜにくい系を混合する時に溶剤をうまく選択することで問題解決できるのは知られている。その時の溶媒の選択にもSP値が用いられる。樹脂と難燃剤の混練でも溶媒の機能に相当する材料を添加すれば、今回の現象の問題を解決できる、というアイデアが浮かぶ。

 

ただし今回はSP値を合わせた難燃剤を選択しているので一部は樹脂に取り込まれたのであろう。もしSP値のずれた難燃剤を使用していたのなら、もっとひどい状況になっていたのかもしれない。

 

混合も難しいが練りはもっと難しい。しかし、混合を簡単に考えている人が多いのでなかなか混練技術の難易度がうまく伝わらないが、現在多くのポリマーアロイの開発に成功しているのは、混練装置の技術開発が進んでいるからである。ポリマーアロイのさらなる進化のためにはプロセシング開発は重要である。

 

(注)スクリューセグメントは練りを重視したセグメントにしているが、装置のある問題のためこのような現象が発生した、と推定している。

 

カテゴリー : 一般 高分子

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2014.02/25 おからハンバーグ(3)

おからハンバーグは、挽肉(牛肉100%)の量をおからの4倍程度使用すれば、通常のハンバーグとよく似た色で仕上がる。一般に販売されている豚と牛の合い挽きを使用した場合にはこの比率でも白っぽくなる。食品の色は味にも影響する。見た目がおいしさのために重要である。

 

挽肉の量をおからと同程度で肉のような色合いを出すには赤だしミソを使用すると良い。ハンバーグのレシピに味噌を入れた例を見たことはないが、このアイデアはおからハンバーグの開発過程で得られた面白い成果である。おからハンバーグ以外の肉料理に応用してもおいしくなる。味噌味が強くなると少々ハンバーグらしさがなくなるが、そこそこの味噌味は肉の味を引き立てる。

 

このアイデアの一番のミソはおからも赤だしも大豆から作られている、という点である。ご存じのように赤だし味噌は、岡崎市の特産品で大豆100%で作られている。おからとの相性は良い。ハンバーグの着色剤としても少量で黒っぽくなり使いやすい。

 

壊れやすさと色の問題は解決がついたが、ジューシー感は少し苦労している。ジューシー感をごまかすためにチーズ入りハンバーグというレシピも開発したが、やや邪道である。正真正銘のおからハンバーグと名乗れるようチーズが無くてもジューシーな雰囲気を出す手段をいろいろ工夫したが、残念がら現在のところ豚の背脂を使用するのが最もよく、その次は牛脂である。

 

一応これらを挽肉に混ぜて使用するとジューシー感を出せるが、動物性脂肪が多くなるので健康食品と詠いにくい。豆乳を試したりしてみたが今ひとつ。現在のところおからを炒るときに植物性油を使用する方法以外に良いアイデアが無いが、一応おからハンバーグとしておいしいレシピが完成した。もちろんおからハンバーグを作るときに用いる混練方法はカオス混合である。

 

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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2014.02/22 パーコレーション転移(13)

酸化スズゾルは、その合成条件を変えるとコロイドの分散状態が変化する。酸化スズゾルは1-2nm程度の一次粒子が金魚のウンコのように、繊維状につながった粒子として分散しているが、合成条件が変わるとこのウンコ状のつながりが枝分かれした形状になったり、網目のようになったり様々である。濃度が1-2%であれば繊維状が大半であるが濃度が上がって7%程度になると網目状につながった凝集体が観察される。


実用的には濃度の濃い粒子が必要だが、10%以上の濃度にすると短時間でゲル化するので塗布液として使いにくい。7%前後がポットライフも長く使いやすい。ところがこの7%前後の濃度では網目状の構造が多くなり、その結果粘度の制御が難しくなる場合がある。


粘度をコントロールできても網目状の構造のばらつきがパーコレーション転移に影響し、帯電防止性能のばらつきにつながる。厄介なのは、帯電防止性能に差があっても表面比抵抗に違いが見られないことがあるのだ。


すなわち帯電防止層の品質評価に表面比抵抗が使われるが、それで品質管理できない、という事である。しかし、100Hz以下のインピーダンスであれば、クラスターのでき方を検出できるので帯電防止性能の品質評価に用いることが可能である。また、タバコの灰付着距離とも相関するので、実技評価を省略できる。


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2014.02/21 パーコレーション転移(12)

帯電防止材料としてイオン導電性材料を用いた場合に表面比抵抗を計測すると、抵抗が安定するまでに時間がかかる場合がある。例えばポリスチレンスルフォン酸を帯電防止材料として使用すると、10の10乗程度の抵抗に安定化するまで2分程度かかる場合も存在する。


ところが30秒以内で安定化することもあるのだ。この両者のサンプルについて100Hzのインピーダンスを計測すると異なる値になる。同一添加量でもこのような現象が生じるので、おそらくイオン導電性材料でもインピーダンスの値でパーコレーション転移のクラスターを検出している、と推定した。


すなわち、100Hz以下のインピーダンスの値を用いると、同一帯電防止材料についてパーコレーション転移で生じるクラスターの大きさを計測できる可能性がある。もちろんこの結果は科学的ではない。なぜなら、昨日までクラスターの大きさとインピーダンスの関係を実験値ではなく推定で述べているだけである。


ただ、技術としてこの推定された事実を用いると、帯電防止層の品質管理を行う事ができる。(続く)


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2014.02/20 パーコレーション転移(11)

電子伝導性の帯電防止材料であれば一次元のシミュレーション結果でパーコレーション転移におけるクラスターの生成とシミュレーション結果はうまく合ったが、イオン導電性材料の場合には抵抗成分の値についてシミュレーションで少し実際の測定値にバイアスを大きくかけないといけない。


これはイオン導電性材料では電荷移動にイオンの拡散が必要なためであり、帯電防止材料の静電容量と抵抗の両者の値を直流で計測できないためだ。電子伝導性材料では材料の静電容量を無視することが可能である。ゆえにシミュレーションにおける静電容量の変化はクラスターの大きさの変化と一致する。


しかし、イオン導電性材料ではイオン導電性材料自身も静電容量を持ち、マトリックスに分散しているその形状により静電容量の値は変化する。この変化が大きいためにインピーダンスの値に影響を与える。


面白いことにイオン導電性材料も電子伝導性材料も、タバコの灰付着テストの結果を100Hzにおけるインピーダンスの値と灰付着距離との関係で整理すると一本の直線に乗る。すなわち、帯電防止材料の種類によらず100Hzのインピーダンスを計測すれば灰付着テストにおける灰付着距離を推定できるのだ。(続く)


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