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2024.04/13 紅麹と製造現場

昨日の関西テレビ速報で、床にこぼれた紅麹原料を使ったり、培養タンクに温水が混入しても生産していた実態が明らかになった、と報じられた。(https://news.yahoo.co.jp/articles/84b0ea83bfb0d25c8558767237ce48728b63dfb1)


当方の立ち上げたPPSコンパウンドの生産では高価なPPSの粉が床にこぼれた場合、全量廃棄している。そして、こぼれた原因を確認できるまで、その工程は生産を再開しない、という手順としている。


トラブルが発生した時にすぐに全ラインを止めたいが、二軸混練機をそのまま停止するとさらに大きなトラブルとなるので、困難である。

しかし、ラインが動いている状態では、供給原料が不足する可能性があるので、前工程のトラブルの報告を受けた後、生産を止めるかどうか判断するような手順書を作成している。


ただし、停止時と再開時にロスが必ず発生するので前工程のトラブル発生時の対応策をそれぞれ決めている。


床にこぼれた原料は、救済措置が取れそうでも、こぼれた原料を全量廃棄とするのは、ややもったいないが、このような措置でエラーの回復が迅速となるだけでなく、不良原料の混入を防止できる。すなわち、品質重視の対応である。


高価なエンジニアリングプラスチックの生産でもこのような対応をとっているのに、食品でありながら床にこぼれた原料をそのまま使用する製造現場とは、いかなる品質管理基準なのか。

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2024.04/12 データサイエンスと私(5)

「統計でウソをつく法」という数式を使わないで学ぶ統計学の入門書がブルーバックスから出版されている。ロングセラーの名作だが、タイトルが秀逸である。


統計処理された結果は、データの信頼性まで示されるので騙される人が多い。「6デイズ7ナイツ」では、ファッション誌のアンケート結果について恋人同士で喧嘩する光景が描かれている。


そこでは、統計データをまとめるときに、自分たちの都合の良いデータを集めて、雑誌の趣旨に合うように統計処理結果を操作している、と編集長である主人公をデートの最中に彼氏が責めるのである。


デートの最中に彼女の仕事を批判する無粋な男で、主人公のアン・ヘッシュにふられるのだが、データの扱い方で統計処理の結果が変化する問題を彼は語っており、その発言内容は間違っていない。


データサイエンスを科学の分野に応用しようとする時に、データマイニングでは知を求めている人が、必要な知を適切な手法で取り出せるようにデータ処理からアルゴリズム最適化まで自ら行うのが好ましい。


そのために適切なアルゴリズムを自ら組み立てる能力が必要があり、いやがおうでもプログラミングスキルを研究者は磨かなければならない。


すなわち、データマイニングとは、データとアルゴリズムを駆使して新たな知を導き出す作業であり、プログラミングスキルとデータの前処理スキルが研究者に求められている。


このことを幸運にもゴム会社の新入社員研修で情報工学学科出身者から学んだ。また、柔軟な思考風土のタイヤ部門で研修できたことも運が良かった。


当時いきなり研究所に配属されていたならば、データサイエンスを研究に応用しようなどと考える機会など無く、科学馬鹿になっていたかもしれない。


科学は自然現象を理解する一つの方法であるが、アン・ヘッシュ演じる編集者が男と女の関係を理解しようとデータサイエンスを用いたように、形式知に近い結果が得られるようデータマイニングする方法も現象を理解する一つの方法である。


これを科学的ではない、という無粋な科学者は、自然現象から見捨てられるかもしれない。アン・ヘッシュ演じるロビンが彼氏を捨ててハリソン・フォード演じるクインに走ったように、自然現象は孤島で知恵を絞って常識にとらわれず問題解決にあたる技術者に新しい機能を与えてくれる。

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2024.04/11 データサイエンスと私(4)

プログラミングスキルは、データサイエンスを学ぶ上で重要である。情報工学科を卒業してきて、プログラミングは嫌いです、と平然と言う人がいる。どのように勉強してきたのか、あるいはどのような指導を受けてきたのか、このような言葉を聞くと疑問に思う。


プログラミング以外の研究もあるので、というのがそのような情報工学専門家の意見だが、データサイエンスを異分野で活用する時に、プログラミングスキルが不要という人はデータサイエンスをよく理解していない人だ。


今の時代ならば、最低でもPythonぐらいは自由自在に使えなくてはいけない。ChatGPTがあるので敷居は大変低い。弊社のセミナーを1日聞けば誰でもプログラミングスキルが身につく。


なぜデータサイエンスでプログラミングスキルが必須なのか。それはデータ処理にプログラムが必要だからである。プログラムはプログラマーに作らせればよい、と言っていては駄目である。


プログラムでデータ処理するときに試行錯誤しながらデータ処理を行う場合があるからである。すなわち、データ処理方法の妥当性を得られた結果だけでなくデータ処理方法を考える過程も考慮する必要があるからだ。


これはどのような意味なのか。数理モデルで問題を解くときに、モデルの立案方法は科学ならば真理が一つなので一つに定まるが、データサイエンスを現象に応用しようとする時に科学的プロセスとならないからである。

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2024.04/10 データサイエンスと私(3)

データから情報を取りだす技術が情報工学であるが、今はデータから「知」を取り出すことが求められる時代となった。すなわちデータマイニングをどのように行うのか、が情報工学の研究対象である。


しかし、まだ完璧に成功しているわけではない。「コンピューターの処理によりデータから取り出された情報」を知になるのかどうか、人間が確かめねばいけない段階である。


これは、当方が40年以上前から取り組んできた状況とさほど変わっていない。当方がデータサイエンスで解をだすと、周囲のスタッフが「科学的に求められたものではない」とイジメてきたのである。


これをいじめでは無く指導と受け取り、データサイエンスで得られた解を科学的に改めて証明し、解を求めてきた。


転職の原因となった電気粘性流体の問題では優秀なスタッフ6人が長期間かけて出した否定証明の科学的に完璧な解をデータサイエンスにより一晩で解を出すことができたのは、このような努力を10年以上してきたからである。



ちなみに本当のAIと呼べるものは、かつて話題になった「マトリックス」という映画で描かれた世界に登場した「AI」である。また、マテリアルズ・インフォマティクスでも十分な知となっていないから、それをネタに研究論文を書ける時代なのだ。


当方は先月開催された日本化学会年会で、40年以上前に当方が当時の情報工学の先端レベルの方法で行った手法と今マテリアルズ・インフォマティクスで話題になっている手法との比較を科学の解を添えて発表した。


この発表の目的は、相関が期待される現象では、40年以上前の手法でも十分に現在でも通用する、ということを示したかったからである。


また、30年以上前にはタグチメソッド(TM)が生まれアメリカで普及し始めた。その後、この手法が日本に輸入されて現在に至るが、TMでは、実験計画を立案し最低限のデータ収集で知が得られることをご存知ない方が今でもいる。


TMは、単なる品質工学という意味だけでなく、技術者が基本機能を正しく定義した時に新たな知を手順に従うだけで得られる巧みな手法である。手法そのものがアルゴリズムとなっており、マテリアルズ・インフォマティクスと呼べる。

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2024.04/09 昨日のクロ現、紅麹

昨日NHKクローズアップ現代で、小林製薬紅麹問題を取り上げていたが、品質管理問題に深く言及していないだけでなく、元グンゼ技術者の匿名条件の談話に疑問が残った。


公知のように今回の紅麹は1987年にグンゼが研究開発し、50数件の特許で固められた科学の成果である。すでに基本特許が切れていたので匿名者は製造方法を機密性の高いノウハウと表現し、発酵過程で異物は入らないので、粉砕工程以降で異物が入ったのかもしれない(注)、と説明していた。


また、特許によれば嫌気性条件で培養しているので好気性の青カビが繁殖するのを防ぐことができる。この匿名技術者は自信をもって培養過程における他のカビの繁殖を否定したのだろう。


ところが、この点について出演した専門家の見解は、発酵過程で青カビが入ったのだろうと解説し、NHKも番組の構成でこの見解の違いをクリアーに表現していた。


一方、発酵過程のサンプルが抜き取り保管されていることが説明されたが、その他の工程の抜き取りサンプルが存在しないとした。これは品質管理上問題があるサンプリング手法である。


また、グンゼの匿名技術者の発言と比べると違和感が出てくる。匿名技術者が発酵過程で異物が入らない工程と自信を持って発言しているのに、何故他の工程でサンプリングを行っていないのかである。


特許によれば培養タンクは空気以外のガスで満たされていることになっている。ゆえに青カビなどが入る余地はない、と言っている点は理解できる。しかし、このタンクに投入する紅麹原料の品質管理について放送では語られなかった。


数人の専門家がこの事件について語っていたが、やや残念だったのはグンゼの特許について言及していなかった点である。当方が特許を調べたきっかけは、他の紅麹製造者が30日で発酵を終えるところを小林製薬は50日かけているところに疑問を持ったからである。


ニュースに報じられた専門家の意見として発酵時間が長いので異物が入るリスクが高い、という意見が早くから出されていた。恐らく匿名技術者もこの専門家の意見の存在を知っていて、発酵段階では絶対にありえないとしたのだろう。


特許を読むと、もし窒素ガスを循環させていたとしたならば他の製造法に比べれば異物の入るリスクは激減する。それゆえ粉砕工程以降と科学的な推論を匿名技術者は展開されたのだろうと想像している。


この問題は、報じられている内容から品質管理技術が稚拙だったために起きたと予想されるが、驚くのは、今回のような問題のある品質管理を行っているところが多いようだ。また、それに気がついていない企業もあるようだ。いろいろヒアリングを行って日本の品質管理技術の問題に気がついた。


品質管理技術や品質工学は弊社の得意領域であり、特にタグチメソッドはPythonを使い分かり易くご指導しております。お問い合わせください。


また、本紅麹製造技術についてご相談されたい方もお問い合わせください。今回の問題でかなり勉強をさせていただきました。


(注)小林製薬は、工場の移転を行っており、移転の理由がこの匿名者の見解にあったとすると、これまでの小林製薬の対応は不誠実である。推定が入るので詳細は述べないが、すでに死者が出ているので工場移転理由のすべてを公開すべきである。

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2024.04/08 データサイエンスと私(2)

大学4年時に在籍した有機合成の講座は、優秀な研究者ばかりでレベルが高かった。卒業後DICの役員になられた方や、相模中央研所長になられた方、東工大教授になられた方などが同じ研究室にいた。


有機合成デザインをコンピューターで行うコーリーが推進していた研究の話題が、時々雑談で行われていた。最初はそのような話題について行けなかったが、その後当時について名づけられた「第一次AIブーム」となるような状況を説明した本を読み有機合成デザインだけでなく、様々な材料設計にコンピューター導入の研究がなされていることを知った。


大学院ではSiCウィスカーの講座で無機材料を有機合成の手法で合成する研究を行っている。いわゆる無機高分子の研究だが、この講座では、4年の時のような先端の話題が無かった。必死で先輩の話題についてゆく努力が不要だったので気楽だった。


ゴム会社に入社し、1か月半のグループ研修で情報工学出身者から情報工学についてご指導していただいた。この同期のおかげでデータサイエンスを業務に取り入れる動機ができた。


また、新入社員研修で多変量解析をIBM3033の統計システムで行った経験談は、以前この欄で書いているので省略するが、当時情報工学科ができたばかりであり、その学問の姿がよくわからない時に、この同期から聞いた話はその後の勉強の手引きとなった。


すなわち、情報としての「データ」の重要性であり、「データ」から有用な情報を取りだす技術が情報工学である、というアルゴリズムが中心だった時代に大変勉強になった手引きを同期から学んだ。

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2024.04/07 データサイエンスと私(1)

データサイエンスとの出会いの前に忘れてしまいたいコンピューターとの出会いがある。それは教養部の試験として出された「自分で課題設定し、プログラムを作れ」という課題に対し、受講者の中で数少ない「可」を取得した思い出である。


作成したプログラムが動作しなかったからである。当時授業を行なった先生にプログラムを見ていただいてもエラーは無かったので「優」であってもいいはずだが、プログラムが動作しなかったという理由で「可」とされた。「可」でも単位となるからいいだろうと言われた。


4年に進級した時に所属した講座は有機合成の研究室で、オーバードクターで分子軌道法を研究に用いられている方がいた。その先生が大学のコンピューターのフォートランにバグがあった、という話をされていたので、教養部の試験で作成したパンチカードを渡し、動作確認して頂いたら動いた。


すなわち、教養部の試験の時にはバグのあったフォートランのシステムだったので当方のプログラムが動かなかっただけの可能性が出てきた。しかし、もう成績を「優」にしていただけない。


コンピューターとの初めての出会いは、コンピューターシステムのバグのおかげで成績が悪かった、という忘れたくても忘れられない思い出となった。


また、この体験があったので、8bit時代にはアセンブラーが主要言語であり、16bitコンピューターの時代には実績のあるLattice Cを迷わず使い始めました。


数値計算に使うには、出始めのMS-BASICは、やや問題がありました。次第に良くなっていったようですが、タグチメソッド(TM)のSN比の値がCで計算した場合と少し異なっていたことがありました。要因効果図には現れない程度でしたが、少し気になり、今も自前のプログラムでTMを計算しています。

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2024.04/06 重回帰分析プログラムで学ぶ

Pythonで重回帰分析のプログラムを作成する過程を題材にプログラミングのご指導をいたします。4月の希望日を3つほど記入し、お申し込みください。受講料は1日WEBセミナー形式で3万円です。企業の研修としてご利用の場合には、人数で割引がございます。


PythonはBASICよりも習得が易しいプログラミング言語です。それでVBAよりも低コストで深層学習のプログラムまで作成できます。


昨年マイクロソフト社はエクセル365にPythonの実装を発表いたしました。Pythonの普及を無視できなくなったからです。当方はすでにエクセルをデータ整理に使用していません。


VBAの代わりに使用していたCやC#もほとんど使わなくなりました。Pythonで十分にデータ解析やその整理ができます。マイクロソフト社がエクセルにPythonを実装したのも当然です。


題材の重回帰分析につきましては、弊社のサイトでも無償でそのプログラムを公開していますが、Pythonプログラムを作成することにより、データ解析を手軽にできるようになります。

カテゴリー : 一般 学会講習会情報

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2024.04/04 川勝知事の問題

昨日川勝知事が4月1日におこなった新卒者に対する挨拶について謝罪したが、謝罪発言にも知識に対する誤解があった。この方は、その年齢からドラッカーの著書を読んでいるはずだが。


ドラッカーは産業革命以降資本主義が発展し、知識資本の重要性が増してきた現代について、経営を担う労働者も含め知識労働者の時代と名づけた。


すなわち、第一次産業から第四次産業に従事する労働者はすべて知識労働者であって、その知識の種類が異なるだけと述べている。


おそらく4月1日の時にこのような視点で述べておれば問題とならなかったのに、無知で本音が出たのだろう。知識人の顔をしながら、その頭の中身は明治時代なのかもしれない。


知識には、経験知と形式知、暗黙知があることは紀元前から、すなわち人類が思索を行うようになった時代から知られていた。川勝知事もその程度はご存知のはずだ。


しかし、4月1日の発言は、日本の第一次産業や第二次産業の従事者には知識労働者がいないとしたのである。そして県庁のシンクタンクとしての機能があるから社会が成立している、と発言していた。


言葉の一部を切り取られて誤解を受けた、と述べていたが、全体を要約しても、ドラッカーが指摘した知識労働者の視点を欠いている。


形式知に偏らず経験知と暗黙知を地元の産業から吸収し、シンクタンクに働く知識労働者として活躍してほしい、と述べるのが正しかった。謝罪会見も含め知識労働者に対する理解の視点で0点の発言である。


日本には知識人のような顔をしながら、その知識の薄っぺらなことに気がついていないリーダーが多い。

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2024.04/02 何が問題か

昨日各局のワイドショーでは、紅麹の問題を扱っていたがその取扱い方が同じでつまらなかった。なぜなら、当方が指摘している工程の品質管理の問題を議論しているところは無かったからである。


社会問題となっていることは先週から明らかであるが、不良の製品を4月から年末まで作り続けた問題を議論すべきである。正常な製品を作り続けた実績があるならば、正常な製品のクロマトグラフィーを基準にして、異常検出ができた。


いくら多成分のピークが出ていようと、今ならコンピューターで管理すれば異常ピークの検出が可能である。工程異常を検出できれば、今回の問題は発生していなかった。


工程異常を検出しながらも健康に影響を与える製品を生産していたなら、それは犯罪である。工程管理では紅麹以外の成分が何かまで分析する必要はなく、「紅麹以外のものができていないかどうか」ぐらいの検出は簡単である。


安定生産の実績があるので、正常生産のデータが豊富にあるはずだ。それをもとに工程が管理状態にある条件を決めることができる。また、工程能力も計算できる。


紅麹以外のものが検出されたなら、それは異常と判断し工程を止めなければいけない。このような基礎的な品質管理技術で死者を出さずに済んだ。


小林製薬は紅麹以外の食品も生産しているが、今回の問題からすぐにラインを止めた方が安全である。当方が小林製薬の社長ならば、工場を停止する。そして異常検出できる施策を行い、FMEAで不良率0を確認できてから工場を稼働する。

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