高純度SiCの応用分野としてダミーウェハーやるつぼ、ヒーターなどの半導体冶工具がある。さらにハイブリッド車に採用されているインバーター用のパワートランジスタとして最近用途が広がってきたSiCウェハーがある。
SiCウェハーを製造するには、シリコンウェハーと同様に大口径の単結晶が必要である。最近はレーリー法(昇華再結晶法)で6インチの口径の単結晶が作られているが、この技術が開発されたのは1980年前後であり、現在に至るまで30年以上かかっている。
最近レーリー法以外にSiCの液相から育成する方法やメタンガスとシランガスを用いる方法が登場し、検討が進められている。特にガスを用いる方法は結晶成長速度が速く生産性が高いので有望視されている。
現在SiCウェハーに必要な単結晶を製造する方法は3種類が注目され検討が進められているが、この3種類とも高温度で製造する点において大同小異である。これを大同小異と表現したのはイノベーションの観点からである。
詳細を省略するが、レーリー法の結晶成長速度がガス法よりも遅い科学的理由があるが、これを技術で改善するのもイノベーションの一つである(注)。また、ガス法や液相法を改善して今すぐにレーリー法同等の単結晶を製造するのもイノベーションである。あるいは単結晶を育成する第4の方法、それも低温度で生産性の高い方法を開発するのイノベーションである。
SiCウェハー分野にはこのように多くのイノベーションの機会があり、さらに不連続な破壊的創造を行う方法も複数存在する。ここでどのようなイノベーションを狙うのか?新たな第4の方法を狙うのは研究者ならば興味深いターゲットであるが、技術者ならばレーリー法の結晶成長速度をガス法並みに高めるイノベーションを狙いたい。マネベーションで容易にできそうだからだ。
イノベーションは困難な課題に立ち向かうことが要求されているのではない。破壊的創造を行う課程で困難な課題に遭遇する”場合もある”のだ。ドラッカーはイノベーションは単純でなければならない、と述べている。
最も単純で成果が得られそうだからといって価値が低いのではない。イノベーションを起こすことができたときに高い付加価値が生まれるのである。すなわち実現できそうな易しい課題でイノベーションを起こすことができれば効率よく付加価値を高めることが可能である。
高純度SiCの技術開発から約20年離れていたが、某国立大学で取得予定だった学位の問題もあり勉強を続けてきた。途中ですばらしい機会があり無事学位を取得できたが、内容の半分はSiCの反応速度論である。
(注)科学では真理が一つであるが、技術では機能を実現する方法がいくつもある。この意味が不明であればwww.miragiken.comをご覧ください。
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昨日の続きになるが、素材から部材を経由して最終製品までのプロセスを眺め、材料が変性される機会を探し、そこで新たなニーズを見出し応えてゆく技術開発と抽象的に述べたが、ここで展開されるのが先に述べたマネベーション8つの戦略である。
繰り返しになるのでマネベーションについては以前の活動報告を読んでいただきたいが、このイノベーション戦略について経済学分野では、ドラッカーのイノベーション論よりもブルーオ-シャン戦略が有名である。
そこには、Eliminate、Raise、Reduce、Createの4つのアクションの有効性が述べられているが、これらはこの活動報告で説明したマネベーション8つの戦略に包含されている。経済学分野の成果についてはその分野の多くのコンサルタントが解説しているのでそちらを見ていただきたいが、当方のマネベーションは1980年代に独自に考えた戦略をまとめた成果である。写真会社でその有効性を20年間の技術開発で確認してきた。
経済学の成果についてのほとんどは、技術者に縁遠い内容に見える。しかし、企業の技術者にとってマーケットはアウトプットを出すための重要なゴールなので、経済学の成果も勉強する価値がある(注)。ゆえにその方面の勉強もすべきだが、技術の方法を追及していくと経済学のゴールを包含した結果になるのではないか。なぜなら、技術と言うものは人類の幸福に必要な機能を開発する行為だからである。
ところでドラッカーを例にイノベーションには機会が重要である、と説明し、その見つけ出した機会を攻略するための8つの戦略について、30年近く前に行った早すぎたイノベーションである高純度SiCの技術に、本日最初に述べた話を適用すると新たなイノベーションを起こすことが可能で、基本特許を出願できるよい機会である。ご興味のある読者はご相談いただきたい。
(注)偉そうに書いているが、単行本として出版された本を斜め読みするだけで良い。知識労働者の時代において、読書は趣味ではなく寝食同様の基本欲求になっていなければならない。すなわち21世紀になり基本3欲求ではなく基本4欲求へ人間が進化し、その欲望を満たすために電子出版が登場したのかもしれない。弊社はこのような視点で電子出版をスタートしたが、現在新たな戦略で取り組んでいる。未来技術研究所(www.miragiken.com)はその一つの戦術である。もしお時間がございましたら一度ご覧になり、ご意見を頂きたい。
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20世紀末に数多くの新素材が登場し、それらが持つ多くの新しい機能が実用化された。そして機能素材という言葉が生まれ、それらを組み合わせて機能部材の開発を進めているのが日本の素材メーカーの現在の姿である。
もしこのような姿になっていない素材メーカーは、やがて事業の収益性が悪くなるのか、あるいは独自のイノベーションを実現し、ブルーオーシャンにたどり着くのかいずれかだろう。
ところで、素材から部材へ、は素材メーカーで達成されたイノベーションである。このイノベーションでは機能素材に関する科学的研究がかなり深くまで行われ、多くの知識の蓄積が成された。さらに学会ではこれらの知識について検討され知識の体系化が進められた。
しかし、素材開発から部材開発へ進む過程で生まれた知識の多くについては、各企業のノウハウとして蓄積されあまり公開されていない。その結果、特許を読むと同一素材を用いながら異なる領域を権利化しているような状態である。
科学が変化に追いついていないのでそれぞれの特許に書かれた真実を証明できていないが、技術者にとっては好都合の機会である。ドラッカーのイノベーション論では、プロセスに潜むニーズはイノベーションの良い機会の一つと述べられている。
すなわち、今、素材から部材を経由して最終製品までのプロセスを眺め、材料が変性される機会を探し、そこで新たなニーズを見出し応えてゆく技術開発は、イノベーションを起こすことが可能となる。(明日へ続く)
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かつてシーズ指向ではなくニーズ指向による技術開発を、と叫ばれた時期がある。市場のニーズをとらえて技術開発せよ、という趣旨だが、技術開発そのものは、どちらでも良いように当方は思う。イノベーションの戦略としてシーズ指向で技術開発を行っても間違いではない、と経験上思っている。
例えば業界や市場で予期せぬことを見出し、それをイノベーションの機会として捉えた時に、自社の技術シーズで戦略的にどのように取り組むのか、という考え方があっても良い。このときニーズ指向にとらわれ過ぎると自社の強みを生かせないことになる場合がでてくるからだ。
そもそもシーズかニーズかという議論よりもイノベーションをどのように引き起こしたらよいのか、という議論をしなければいけないと思っている。ドラッカーはイノベーションを起こすための機会として、最も成功確率の高い業界や市場内部の予期せぬ変化以外に6つの機会をあげている。
そして新しい知識の登場を機会として捉えることはイノベーションの成功と言う視点として最も確度が低い、と述べている。そのほかの5つの機会は、調和しないもの、プロセスに潜むニーズ、産業と市場の構造変化、人口構成の変化や認識の変化などが述べられているが、今という時代は素材メーカーにとってイノベーションを起こす好機ともいえる。
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東レの社内風土は知人から聞いても、技術者にとってうらやましい風土である。これは経営陣の努力の賜物だろう。炭素繊維のテーマは、それを担当した技術者とそれをサポートした中間管理職が一体となって貢献した成果だと思う。
経営陣はドラッカーのマネジメント論に述べられたイノベーションの意図から少しはずれて、貴重なシーズを事業として成功に導く努力をした。そしてその努力の過程で、マネジメント体制を整備した功績が生まれた。
実はこの功績がイノベーションを成功させるために最も重要なことだ。技術としての成功だけではイノベーションを成功させたことにならない。マネジメント体制の整備があって初めてイノベーションは成功に導かれる。
これはゴム会社における高純度SiCの事業を見ると理解できる。二億四千万円の先行投資でスタートした技術開発は、社長交代と業界3位の会社を6位のゴム会社が買収するという事業環境の変化で会社の中ではお荷物テーマとなる。
しかし経営幹部は技術開発の担当者を励まし続けた。但し、中間管理職は冷ややかな目でテーマを眺めているだけだった。やがて死の谷を歩いてきた担当者は転職を決意する。
この転職の決意に、マネジメント体制の整備への願いがあったことは言うまでもない。他社とのJVが立ち上がりながら、技術開発の中心人物が退職するという事態になり、研究開発本部ではあわてて研究開発体制を作ることになり、その結果事業として成功し、ゴム会社はこの技術で日本化学会化学技術賞を受賞する。
すなわち、技術が生まれた後、それを事業として成功させるのには、マネジメント体制が極めて重要であり、とりわけ中間管理職のマネジメントがその成否を左右する。
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東レの炭素繊維技術は、PAN繊維の技術シーズを基に発展し、スポーツ用品分野に大きなイノベーションをもたらした。1980年代はテニスラケットやゴルフシャフトへ炭素繊維の複合材料がどんどん応用されていった。
この意味で東レの炭素繊維技術は、企業が起こしたイノベーションの典型例として語られることが多い。しかしドラッカーのイノベーションの視点では、最も信頼性確実性の低いイノベーションの機会とされている。
技術者から見れば、東レの技術開発は王道をゆく、うらやましい姿をしているが、中小企業を含めた製造業の全てがお手本にできる例ではなく、むしろ確実性の低い真似すべきではない方法と言われる。
ドラッカーは、イノベーションの機会として業界や市場内部で生じた予期せぬことが見出された時に、イノベーションを起こす良い機会である、と述べている。これは東レが炭素繊維を上市した時に、繊維メーカーの多くが新しい炭素繊維の製造方法を開発し市場に出てきた現象でさらにその意味を学ぶことができる。
ゆえに、お手本にすべきは、カイノール繊維やピッチ系炭素繊維、その他無機繊維などを生み出した企業の姿勢である。予期せぬ現象が市場に起きたと判断し、開発を始めた姿勢がイノベーションを起こした姿勢である。
東レの炭素繊維技術は、その開発ストーリーではシーズ指向の開発であったと語られることが多い。マーケットニーズを把握して開発された技術ではなかったので、事業として成功するまで長い死の谷を歩くことになった。
その時の経営陣の対応など社外の技術者が見てうらやましい社内風土なので技術開発の模範事例として語られているし、当方もその姿勢にあこがれ高純度SiCの開発でイノベーションを狙ったが、6年間大変苦労した。
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企業の目的である顧客創造の機能として、マーケティングとイノベーションが重要と、ドラッカーの書に書かれている。マーケティングについては、多数の図書が発行され、その具体的方法を学ぶのに苦労をしない。
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しかし、イノベーションを起こす方法については、なかなか良い本が見つからない。そのため、この活動報告で書いているが、素材メーカーを例にして、具体的なイノベーションについて考察してみる。
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東レの炭素繊維技術は、日本を代表するイノベーションの例としてよく取り上げられる。確かに優れた技術開発の事例であり、イノベーションの一例であることを否定をしない。しかし、スピード感のあったイノベーションかどうかについては、その開発の歴史をみればご理解いただけると思う。
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ドラッカーは、その著書の中でこの炭素繊維の技術開発のようなイノベーションをどちらかというとよくない事例としている。企業が行うイノベーションは、もっと単純でなければいけないとまで言っている。
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おそらく、このドラッカーの見解について異論を唱える人は多いかもしれない。しかし技術開発を人類史のレベルで考察すると、このドラッカーの見解は正しいと思う。企業がその活動の中で普段行うべきイノベーションは、もっと簡単な実践で良いのだ。
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ただ、これは炭素繊維の技術を否定する意味ではない。ドラッカーの見解を深く考察すると、むしろこのような技術をたくさん効率よく生み出す方法が見えてくる。
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昨日は60年前のドラッカーの著作に書かれたイノベーションについて触れたが、1985年に出版された「イノベーションと企業家精神」は、ドラッカーのイノベーション論の集大成とも言える書である。この書では、「創造する経営者(1964)」や「断絶の時代(1969)」、「マネジメント(1974)」はじめ多数の著書に書かれたイノベーションを改めてまとめ直している。
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ドラッカーの意味するイノベーションは、以前にも説明したように技術革新だけではない。創造的破壊により、非連続的な発展が起きる全ての経営に関係する現象を言っている。だから「断絶の時代」という言葉は、日本で単なる世代間の断絶として新聞で誤用されたりしたが、これは素直に訳せば不連続あるいは非連続の時代という意味である。
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ドラッカーのイノベーションによれば、目の前に起きている変化、それに気づくことが重要で、その変化の先端にある価値の具現化されたものをただ真似る、というだけでもイノベーションを起こせる可能性がある。ドラッカーはここまで言っていないが、30年以上の技術開発経験から、少なくとも技術については、トレンドの先端にある技術を少し真似るだけでもマーケティングと組み合わせればイノベーションを起こせると思っている。
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たとえば1990年代にゾルをミセルに用いてラテックスを合成する技術の開発に成功したが、これは当時先端技術であったライバル会社のコアシェルラテックスの合成方法をトレースしていて発明した方法である。そして、この技術は当方の開発から5年後学会誌で欧米の研究者により、革新的技術として学術論文に発表された。
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当方のグループで開発したときには、おもしろい技術という程度の認識で、たまたま国立大学の先生から高分子学会賞に推薦された時には謙虚に技術説明を述べたが、その審査会で某私立大学の先生から陳腐な技術と言われ、がっくりした。日本のアカデミアには、技術を理解していないで審査員として出てくる、このような問題のある先生もいるので注意が必要だ。
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あらためてドラッカーの意図したイノベーションについて、彼の著作から見てみると、かなり昔からイノベーションの重要性を訴えていたことがわかる。たとえば彼が44歳の時の著作「現代の経営(1954年)」では、マネジメントとは何か、という問いから始まり、マネジメントにおけるイノベーション実践の重要性を述べている。
彼は、その書でマネジメントを組織体特有の機関(日本語の訳)と表現し、組織は生きた存在として機能するためにマネジメントを必要とする、と述べている。そして企業のマネジメントは経済的な成果をあげることによってのみ、その存在と権威が正当化されると説明している。
そこから事業のマネジメントについて基本的な定義として「経済的な機関」が生まれ、その機能が現代の経営の中で3つ説明される。詳細は書籍を読んで欲しいが、60年前の書でありながら、その内容は色あせていないばかりか、現代の経営者として、この書に書かれた視点で満点をとれるのか、とわが身を反省したくなる。
この書でイノベーションは、事業の目標を設定すべき8つの領域の一つとして説明されている。ちなみに8つの領域とは、マーケティング、イ
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実はマネベーション8つの戦略は、ドラッカーのイノベーション論を参考に考え出したものだ。彼は、イノベーションのはじめの一歩は、「すでに起こった未来を予期する」ことである、と述べている。これは彼の著作によく出てくる言葉だ。彼の遺作では、これが「誰も見たことのない未来が始まる」という言葉になっていた。
ドラッカーの遺作は、過去の著作を読んだ経験から10年後以降の予言と思っている。この遺作の表現をどのように解釈するかは、後日述べるが、少なくとも現在と数年後程度までのイノベーションの方法については、「すでに起こった未来を予期する」ことが重要である。
これは、どのような短い期間の流行でも、その発生から社会に流行するまでに一定の期間があるので、この一定の期間の間に機会を活用すると、変化の先頭に立つことができることを意味している。このときの機会の活用にマネベーション8つの戦略は有効である。
1980年代に起きたセラミックスフィーバーは、材料技術にイノベーションをもたらし、今ハイブリッド車に活用されているSiC半導体を実用化に導いた。このイノベーションで小生は、6年間死の谷を歩くような苦労をしたが、その苦労の経験からマネベーション8つの戦略を思いついた。
ドラッカーもその著作の中でイノベーションを成功させるためには、小規模に始めなければならない、とか、イノベーションは簡単なものにしなければいけない、と述べている(「イノベーションと企業家精神」)。
すなわち、イノベーションを引き起こすのに限られた天才しかできない全くの新規創造物である必要はなく、今目の前に変化の兆しとして見つけた製品のマネでかまわないのである。これは自分の経験から思いを込めて力説したい。すなわち、イノベーションは機会さえあれば、その機会をとらえるスキルとイノベーションを起こそうとする意志があればだれでもできることだ。
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