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2015.10/05 インドネシア高速鉄道

日本がインドネシア高速鉄道の受注競争で中国に敗れたニュースのコメントとして、日本のコピー技術でありながら中国が受注したという論評を書いている記事を見つけた。
 
誤解を恐れずに書けば、世の中の技術の多くは過去の技術のコピーに改良を加えてできあがっている。もし、不正なコピー技術であれば、正々堂々とその不正を世界に公言すれば良いだけで、記事のコメントは受注戦争に敗れた腹いせの言葉に聞こえる。
 
むしろ、なぜ受注に敗れたのか十分な解析を行い、さらなる技術開発に努力しなければいけない。技術開発とは、もしその事業分野で優位に立とうとするならば、決してやめてはいけない行為である。経済性も含め優れた技術でも、国と国との受注競争では賄賂とか他の要因で採用されないことは起こりうる。今回は技術以外の何か要因が働いた可能性がある。日本の調査資料が中国に筒抜けだった、という話も伝わってきた。
 
ところで、今、中国で樹脂開発の指導をしている。樹脂技術の指導だけではなく弊社の研究開発必勝法に基づく樹脂開発の指導を行っている。生徒である企業の技術者に常に語っている言葉は、特許を書ける技術を目標にせよ、である。そしてそれは難しいことではなく、この方法でやれば良い、と独創を生み出す方法を指導している。
 
以前ここでも書いたが、確かに中国では怪しい情報が飛び回っている。すなわちどこから入手したのか分からないが、某メーカーの樹脂の処方などである。ただ指導の甲斐があって、このような情報ですらそのままコピーするのではなく、比較サンプルとして扱う習慣が身についたようだ。あくまで生産するのは比較サンプルよりも低コストで性能が向上した樹脂である。
 
中国人でも開発のコツを指導すれば、喜んで技術開発するのである。創造の喜びを人類が忘れない限り、コピー技術で世の中があふれる事態にはならないだろうと思っている。
 

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2015.10/04 配役の重要性

フォルクスワーゲン社により引き起こされた不正プログラム事件における自動車会社が、もし現代自動車だったら世界はどのような反応を示しただろうか。TVドラマでも主役や準主役により、その視聴率は大きく影響するだろう。反響の大きさはシナリオだけでは決まらないのである。
 
先日行われた川島なお美さんの葬儀の席で石田純一氏が、TVドラマ「失楽園」の相手役を断ったことを詫びたという。当方はかつて昼メロの帝王と言われた古谷一行氏が相手役だったからあのドラマはヒットしたのだと思っている。トレンディードラマの主役ではあれだけの視聴率や愛の形を伝えられなかったのではないだろうか。
 
「失楽園」のヒットについては、毎週きわどいシーンが出てくる演出でも話題になっており、配役の貢献度が見えにくくなっているが、映画よりもTVドラマの方が、キャスティングはシナリオに合っていたように思う。
 
主役が同郷だからという理由ではなく、あのドラマでは男優古谷一行氏で主役の演技が輝いたのではないか、とさえ思っている。また、当時の週刊誌には古谷一行氏のここでは書きにくい苦労話が掲載されていたので、余計に彼の役者魂にひかれた。
 
もし相手役のイメージが不倫を正当化するような役者だったならば、「失楽園」ではなく「快楽園」になっていたかもしれない。フォルクスワーゲン社の不正プログラムの衝撃が大きいのは、技術と品質の高いブランド「フォルクスワーゲン」だったからで、事件とその主役の意外性が世界の注目を集めることになった。
 
「失楽園」では、古谷一行氏の演技で主役が輝きドラマがヒットしたが、不正プログラムの問題では、主役の影響があまりにも大きく、現在の排ガス評価法の見直しまで飛び火している。その結果堀場製作所の株価まで上がり始めた。
 
  
 

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2015.10/03 技術者魂

ドラッカーの言葉を借りれば、現代は知識労働者の時代である。昔ながらの職人も今や知識無しではその仕事もできない時代になった。その結果、技術者と職人の境界が不明確になってきた、と言う人がいるが、職人に「気質」があるように、技術者には技術者魂がある。MOT(技術マネジメント)をうまくやるには、やはり技術者魂を持った人がリーダーになるべきである。
 
それでは技術者魂とは何か。科学が新しい真理を見いだすのが使命のように、技術にもその使命があり、それは新しい機能を社会に生み出すことである。だから技術者魂とは、常に新しい機能を生み出し社会に貢献しようと努力し続ける気概となる。
 
昨日技術者は全員が企画マン、と表現したのはそのためである。フォルクスワーゲンの不正事件について日々新しい情報が報じられているが、2007年にボッシュ社は不正プログラムを提供するときに、使用すると法に触れるとの通達を明確に文書で行ったという。すなわち不正プログラムはフォルクスワーゲン社内で開発されたのではなく、ボッシュが部品評価のために作成したものだった。
 
ボッシュ社からそのプログラムを受けとったフォルクスワーゲン社の技術者はその時何を考えたのだろう。不正プログラムで機能を追加することも一つの技術である。但し、それは社会貢献できない技術である。技術者魂が無かったのだろう、と想像している。
 
STAP細胞事件でコピペなどの不正が問題になり、科学者の倫理を社会は知ることになった。但し科学の世界でコピペが行われるようになったのは最近のことではない。学生時代に購入した教科書の10ページ近くが学術書に特集が組まれた総説の丸写しの日本語バージョンだったことにびっくりしたことがある。
 
某教授に話したら、君はよく勉強しているね、と褒められただけで、引用文献が書かれていなかったことなど悪びれていなかった。英文であればコピペになるが、その日本語訳は???。科学分野の研究者でもいろいろな方がおられる。技術者にも様々な価値感の技術者がいてもいいが、当方は若い技術者に技術者魂を持って仕事に向き合って欲しいと思っている。
  

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2015.10/02 企画という仕事

技術者や研究者に限らず、企業で商品企画を希望する若い人は多い。技術者や研究者の場合には、商品企画に必要な技術開発を担当した時に、さらに詳細な内容を詰めるために技術企画あるいは研究企画を行う機会が多々ある。
 
仮に他の人の仕事を引き継いだ時でさえも、前任者の業務計画をそのまま行わないほうが良いので、その機会となる。前任者の企画を見直した結果、それをそのまま踏襲する,ということになるかもしれないが、それでも前任者の業務について見直しの作業で企画のような仕事を必ず行う機会ができる。
 
少なくとも当方は32年間の技術者生活で企画という仕事をこのようにとらえてきた。すなわち技術者や研究者は、全員が企画マンであるというのが当方の考え方で、これはゴム会社で出会った指導社員にご指導していただいた重要な考え方の一つである。日々企画マンのマインドであれば、実際に初めて商品企画するときにもそのためのスキル獲得は容易となる。
 
ゆえに技術者や研究者でわざわざ企画をやりたい、という人はいないと思っていたら、写真会社へ転職して研究管理の主任研究員を任されたときに、その部屋へ研究員の若い女性が企画を担当させてくださいと飛び込んできた。
 
転職したばかりで部下がいなかったので、その女性は当方の魅力にひかれて来たのだろう、と誤解もしたが、話を聞いてみると彼女が企画という業務に対してそれよりも大きな誤解をしていることに気がついた。
 
さっそくゴム会社の指導社員が新入社員の当方を指導してくれたようにコーチングをしたら、この会社はそのような会社ではない、と怒り出した。転職したばかりなので訳が分からなかったが、話を聴いているうちに、要は若い研究員は言われたことだけを仕事として行うように決められているというのだ。
 
この時の話はもう少し説明しなければいけないかもしれないが、たとえ彼女がそのように主張しても、当時小生が彼女にアドバイスしたことは、日々企画マンたれ、という一語だけだった。もしフォルクスワーゲンの技術者が、このような心構えだったなら、不正プログラムの技術で上市することが決まった時に、その技術をランニングチェンジするための企画を提案し、実行を試みた人が現れたかもしれない。
 
上司が企画できないならば、担当者レベルで対抗企画を提案できるような技術開発の現場なり土壌を作っておきたい。ゴム会社の研究所はそのような風土であった。セラミックスフィーバーの吹き荒れた1980年代、ここはゴム会社だ、何もしないというマネジメントもある、と迷言を言われ、社長の方針さえ軽く無視した上司がいた。
 
しかし、入社3年目で高純度SiCの企画を提案し、紆余曲折があったが、それが30年近く事業として続いている。フォルクスワーゲン社の技術開発の現場もそうであったなら、長い間不正を放置しておくことにはならなかった、と想像している。

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2015.10/01 カオス混合装置

混錬は伸長流動と剪断流動で進むと新入社員の時に教えて頂いた。さらに究極の混練方式として伸長流動と剪断流動が組み合わされたカオス混合を教えていただいた。
 
ただ当時は誰も見たことがなく幻の技術だと、半分からかわれているような話だった。しかし指導社員からロール混練で起きているらしいとか、当方ならばその技術を創ることができるとかおだてられ、気がついたら30年近く経っていた。
 
カオス混合装置の第一世代は、PPSとナイロンを相溶させる装置として試行錯誤で創りだした。退職後も検討を続け、現在第三世代を検討中である。第二世代までは実用化に成功している。第三世代は開発に少し資金が必要なのである混練メーカーと交渉中である。
 
カオス混合は急速な伸長流動と効率の良い剪断流動が組み合わさって進行する。有名なのは京都大学でシミュレーションされた偏心二重円筒で発生するカオス混合だ。当方の第一世代と第二世代の方式は単純なスリット方式で二軸混練機の吐出口に取り付けて使う。
 
パッシブな装置だが混練効果は高く、PPSと6ナイロンの混合物がこの装置を通過すると科学では説明がつかない現象が生じる。すなわち相溶現象が起きるのだ。フローリーハギンズ理論ではχが正となる二相系は相溶しないことになっているが、単一相になる。スタップ細胞と異なるのは、再現良くその現象が観察されるだけでなく、すでに商品として使われ10年近く経っている現実の世界の話であることだ。
 
昨年高分子学会から招待を受け一時間ほど講演したが、講演の内容は若い技術者に評判が良かった。経験知と暗黙知を中心に講演を行ったからだと思っている。
 
一部最近の研究例で形式知も紹介したが、ほんの3分程度で、この講演はほとんど体験談のようになっていた。
 
講演会場では学会という性格上PRを控えたが、問い合わせは数件あった。しかし昨年は自分で販売するところまで考えていなかったのでせっかくのビジネスチャンスをつぶしたが、製作と販売を協力してくださる会社が現れたので今年からその会社で積極的に売り出すことにした。ご興味のある方は、まず、弊社へお問い合わせください。
 

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2015.09/30 研究開発の罠

フォルクスワーゲンのディーゼル車で起きた問題は、北米市場で売り上げを伸ばしたかったからという説明が一部の記事に書かれていた。しかしそれだけのためにしては、世界中の市場を失う恐れのあるリスクの大きい戦術だった。経営者がまともに判断していたなら、企業としてそのような戦術をとらなかっただろう。また、不正が10年も放置されていた状況も理解できない。
 
この不思議な事件についてはやがて解明され、ノンフィクションの読み物も出版されるかもしれないが、当方の経験から担当者及び組織リーダー、特に研究開発部隊のリーダーの技術者魂を疑う。責任は経営陣が負うことになるのだろうが、フォルクスワーゲンの技術者たちは不正を10年も放置しなければいけなかった無力さの罪をどのように償うのか。
 
許されることではないが、仮に一時不正に手を染める戦術が開発戦略上必要だったとしても、不正の状態を速やかに回復する戦術を打てる様な戦略を立てておくのが研究開発リーダーの使命である。コンプライアンスが重視される現代の経営において不正は絶対に許されないが、例えば新製品の展示会などで張りぼての新製品がおいてあるのを稀に見かけるように、開発が間に合わない時の「インチキ」を、やってはいけないと解っていてもちゃっかりやってしまう技術者はいる。
 
不正の例ではないが、中間転写ベルトの開発を前任者から引き継いだ時にとった戦略で、商品に絶対登載できないと解っている技術をわざわざ開発した。商品にはできないが外部のコンパウンダーでは実現できない機能を容易に達成できることを示す技術を開発することにより、外部からコンパウンドを購入して開発を進めるという方針を変更し、コンパウンド工場建設の投資を引き出すというゴールをめざす戦略で、納期通り開発を成功させるためには必要な戦術の一つだった。
 
ところがこれは、商品化ステージの開発であるにもかかわらず、商品化できないことを技術者だけが知っている、という点で周囲を欺くような戦術である。本来このような戦術をとりたくなかったが、前任者の開発方針と計画を一度リセットするためには、どうしても必要な戦術だった。研究開発を成功に導くために、時として不誠実な業務を遂行しなければならない場面は技術開発競争の激しい業界では少なからず現れる。そこで誠実な道を選び失敗するのか、不誠実ではあるが成功の道を選ぶのかは技術者の究極の選択となる。
 
もし完璧な成功の道が見えているのならば、不誠実とわかっている戦略でもチャレンジしなければ、大企業では研究開発を成功させることができない時がある。大企業ではコミュニケーションによりコンセンサスを得るための手続きが煩雑なため、短期決戦における戦略ではこのようなことが起きやすい。
 
中間転写ベルトの開発では、カオス混合技術という科学では説明できない(それゆえまともに周囲へ説明できない)新技術の成功により、期限内に部品開発を終えることができ、経営陣に迷惑をかけなかったが、トリッキーな混練技術開発に失敗していたら、フォルクスワーゲンの事件ほどではないにしても、大変なことになっていた。しかし、事前に弊社の研究開発必勝法で戦略と戦術を立案していたので、必ず成功できる道が見えており、それゆえ不誠実と思われるような仕事も堂々と遂行し非科学の技術に対する支持を周囲から得ることができた。
   

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2015.09/29 高分子材料技術

高分子やセラミックスの材料技術は、その使われる分野によっては形式知よりも実践知や暗黙知の占める割合が多くなる技術である。困るのはこの現実を理解していない人が多い企業で仕事をしなければいけない時だ。アカデミアで何がどこまで明らかにされている、すなわちどれだけの形式知が明らかにされているのか理解していない人がいる場合に出だしを失敗するととんでもないことになる。
 
このような場合には、技術に関するコミュニケーションで注意が必要である。科学で大抵のことが解明されているだろうと信じている人たちとは、特に気を付けなければいけない。そのような人たちには、まずその認識が間違っていることに気が付いてもらわない限り、コミュニケーションが難しくなる。
 
例えば、中間転写ベルトの開発体験で書いたように、形式知以外の話を議論の場で持ち出したところ素人扱いされ相手にされなくなった。また電気粘性流体の増粘問題では、実践知で解決したとたんにFDを壊した人が現れた。とにかく科学で大半を理解できると信じている人たちは、実践知や暗黙知を軽蔑する傾向があるので注意が必要だ。理解していてもミスをする。
 
一方実践知や暗黙知を重視している人とのコミュニケーションでは、その人の経歴を理解してコミュニケーションを行う必要がある。科学がすべての人たちよりもコミュニケーションはとりやすいが、意見がかみ合わなくなることがあるので、その人のバックグラウンドを理解したうえで議論をする必要がある。
 
例えば樹脂を扱ってきた人とゴムを扱ってきた人では混練に対する考え方が異なる。セラミックスを扱ってきた人とゴムを扱ってきた人では、プロセシングや力学物性の認識は大きく異なる。例えが少し大きく振れすぎたが、このような場合に議論を円滑にするためには聞く力が要求される。議論を始める前にその人の考え方をよく聞くことである。
 
形式知や実践知に対して調子の良い相槌をうつ人がいる。このような人とのコミュニケーションは比較的気持ちよく進むが、実のある議論まで発展しない物足りなさが残る。高分子材料技術分野で何か問題解決に当たりたいときには、形式知を掘り下げた専門家(本物のプロ)か、あるいは職人にまず相談するのがよいと思っている。
 
形式知を掘り下げた専門家であれば、その知の限界を理解したうえでアドバイスをしてくれる。また職人であれば自分の体験を一生懸命話してくれる。某大学の先生は、論文を一応書いてはいるが、PPSはよくわからない材料だ、と教えてくださった。また、押出成形について「行ってこいの世界だ」と教えてくれた職人は、ゴムのコンパウンドの設計と混練プロセスの重要性を熱く語ってくれた。
 
ビジネスコミュニケーションやコーチングなどの研修では、事務業務を扱うシーンが多い。基礎を学ぶには良いが、ここで学んだ内容を技術の現場ですぐに生かせないもどかしさがある。技術者の研修には技術者による技術者のための内容が必要だ。弊社へご相談ください。
  

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2015.09/28 フォルクスワーゲンの不正プログラム問題(2)

2011年ごろ表題の問題についてその社内で法律違反の恐れありという指摘(注)がされていたそうだ。
 
昨日のニュースでは、社内の指摘が何故生かされなかったのか、という疑問符で報じられていたが、先日この欄で書いたように中間管理職である組織リーダーが誤った判断をしたならば、担当者の意見など消されてしまう可能性があるのが大企業の組織活動というものであり、現在の企業の抱える共通したリスクかもしれない。
 
但し、組織リーダーは独断で決めるわけではなく、商品化の最終判断を経営陣に仰いでいるはずなので、おそらく事件の解明が進むと会社ぐるみであった、という結論になるだろう。しかし、仮に結論がそこに至ったとしても組織リーダーの判断が会社の意志になってしまう問題をリスクとして捉える必要がある。
 
経営者がコンプライアンス遵守の姿勢を厳しく取れば、そのような問題を防げるはずだ、と疑問に思われる方もいるかもしれない。しかし、組織リーダーが経営陣へ相談する時の姿勢により経営者の判断をしばしば誤った方向へ導いてしまう時がある。
 
すなわち、組織リーダーが問題をすりかえて相談したり、重要性を下げて相談した場合など経営陣は真の問題が見えなくなり、判断を間違える可能性が出てくる。当方が被害者となった騒動の時もそうであったが、異常さの概要など正しく経営陣に伝わっていなかった。この騒動では、もしそれが正しく伝わっていたならば、その後の大きなできごとを防ぐことができたかもしれないと思っている。
 
経営者が神様のように優れた人ならば、組織リーダーが判断を誤らせるような誤った問題意識で相談をしてきても、いつでも正しい問題を見出し判断を誤ることはないかもしれない。しかし多くの経営者は神ではないので誠実で真摯な組織リーダーを任命して判断を誤るような相談をされないように対応する必要がある。
 
すなわち今回のようなリスクを軽減できるかどうかは、経営者がどれだけ組織リーダーに誠実さと真摯さを求めているかにかかっている。もし日常においてゴルフやマージャンでなれ合いの関係になっていたら注意しなければいけない。
 
(注)2007年にボッシュ社は、今回のソフトウェアーを開発しフォルクスワーゲン社に手渡す時に実車に搭載するのは違法、と伝えていたという。

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2015.09/27 実践知も取り入れた研究開発

学生時代に「知性の時代」という書を読んだ。読んだと言うよりも読まされた、といったほうが良いかもしれない。読めば眠くなる哲学の書である。単位を取得するために、眠けをさけ一気読みしたが、知が「形式知」と「実践知」、「暗黙知」の3つに分かれるという解説は当時新鮮だった。
 
すでに知の3つの形態はこの欄で紹介してきたが、哲学は形式知なので300年前後に登場した哲学の一形態である科学も形式知となる。実践知は経験により獲得された知で、暗黙知は職人が持っている書き表すことができない知だ。
 
技術で形式知と言えば科学の知識になる。20世紀は形式知を中心に技術開発が進められてきた。ゆえに科学の進歩とともに技術が急激に進化した。人類の歴史の中でこの100年間の技術の進歩は未曾有のことだ。
 
しかし、知には紹介したように形式知だけでなく実践知や暗黙知がある。研究開発は科学的に行うべき、というのは当たり前であるが、だからといって形式知だけで研究開発を続けていても他社との差別化が難しい時代になった。すなわち情報の拡散スピードが速くなったためだ。
 
一方技術開発の過程で科学的に解明されていない現象に遭遇したときなどの実践知や実験をサポートして実行している職人の暗黙知は、人材が流出しない限り外部に漏れにくい。このような知を技術の中に造り込むと他社でリベールしにくい技術となる。
 
それでは、実践知や暗黙知をどのように技術開発に取り込んでいったら良いのか。詳細は弊社にご相談してください。少しヒントを書けば、形式知は科学なので真理は一つであり、原因と結果が科学的に結びつく場合には一つのルートになるが、実践知や暗黙知では、その真理が保証されないのでそれぞれの否定された情報を取り扱わなければいけない、ということである。
 

このあたりの考え方は従来のロジカルシンキングなどのビジネスの問題解決法とは少し異なるヒューマンプロセスの思想である。そして従来の問題解決法よりも簡単である。弊社の研究開発法をしかるべき取り組み方で実践すれば、暗黙知さえも伝承できる可能性が見えてくる。
  

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2015.09/26 ステージゲート法の落とし穴

研究開発を管理する一手法としてステージゲート法は20年以上前に登場し、研究開発の各段階で関所を設けてチェックする類似の手法も含め多くの企業で普及している。研究開発から事業化までの間に関所を設けて事業化につながらない研究開発を早い段階で中止できるこの方法は、無駄な研究開発を早期に中断できるので一見合理的に見えるが落とし穴がある。
 
まず、技術開発のスピードアップが求められる現代において、ソフトウェアー開発で主流になりつつあるアジャイル開発とは異なるウオーターフォール式の技術開発になってしまう点だ。ただし、アジャイル開発の考え方を導入した変形手法は可能であり、これは工夫すれば良いので大きな欠点ではないかもしれない。
 
大きな問題は関所の役割をするゲートの運営である。この活動報告でも紹介したが、電子写真システム高級機の中間転写ベルトを押出成形で製造する技術開発では、デザインレビュー(DR)と呼ばれる関所が設けられていた。
 
しかし、PPSと6ナイロン、カーボンの3元系の配合がDRをすり抜けて最終段階の事業化まで残っていたのである。当方にとってはカオス混合技術を開発できるチャンスとなったのでラッキーな出来事であったが、もし当方がいなかったならば、このテーマはステージゲート法に似た研究管理を行いながらも大失敗となったテーマである。
 
なぜこのようなことになったのか。昨今はプレゼン技術が高度に進歩し、プレゼンテーション能力で関所をくぐり抜けることができるからである。10年前のことなので白状しても許されると思うが、カオス混合技術をテーマアップするときには、実用化までのプレゼンテーションのシナリオを事前に作成していた。
 
すなわちプラント立ち上げまでの戦略と戦術を事前に具体化し、提案したのである。これは弊社の研究開発必勝法の根幹である。技術開発テーマについては誰もが認める内容のテーマもあれば反対意見の多いテーマもある。ステージゲート法では、反対意見が強い場合にはゲートを通過できない。しかし、この反対意見というのはプレゼンテーションの工夫で弱めることが可能なのだ。
 
前任者も同様の工夫によりDRの関所を通過していた。仕事を引き継いだときの資料を見ればそれはすぐに分かった。技術の成功のために重要なエンジン部分の絵について願望をあたかも科学的に明らかな如く書いていたのである。
 
関所で議論するメンバーは誰もが特定分野の専門家とは限らない。仮に専門家がいたとしても、納得できるデータが揃えられていたらだまされてしまう。詳細は省略するが、科学で嘘をつくことが可能なのである。
 
真理は一つと信じられている科学で嘘をつけるか、という議論については昨年のSTAP細胞の騒動から世界のトップの研究者でも過ちを犯すことから想像していただきたい。実はステージゲート法の最も大きな落とし穴はこの点である。これを回避するにはアジャイル開発と同様の「まずモノをもってこい」手法による技術開発がある。詳細は弊社にご相談ください。

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