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2020.02/07 混練の本について

今回ゴムタイムズ社から発刊された混練の本は学術書ではない。当方が2005年にPPS無端ベルトの開発を担当したときに、たった半年でコンパウンディングプラントを立ち上げた。その時に活用した知識で構成した内容である。

当時一流コンパウンドメーカーからコンパウンドを購入し、押出成形で半導体無端ベルトの開発が進められていた。

しかし、一流メーカーの混練技術者が開発したコンパウンドでは歩留まりが上がらず事業に失敗すると思われたので、コンパウンドの改良を一流技術者にお願いした。

その時に一流混練技者から「素人は黙っとれ」と言われたので、しかたなく、ド素人の当方が10万円前後の混練の本を数冊買い込んでコンパウンド工場を建てるために勉強した。

しかし、せっかく買い込んだ高価な本から得られた知識では、改良されたコンパウンドを生産できる工場を生産できないという問題に遭遇したのである。

高価な混練の本に書かれた形式知を駆使して技術サービスしているのだから、一流コンパウンドメーカーの技術者は優秀だ。しかし、残念なことにお客の問題解決ができない。

ドラッカー流にいえば、「困ったことに優秀な人がしばしば成果を出せない」状態だった。すなわちコンパウンドの何が問題であるのかさえも高価な混練の本は教えてくれなかったのだ。

具体的には、分配混合と分散混合で混練について論理展開する従来のパラダイムでは、パーコレーション転移を安定化するために何をしなければいけないのか、という問題について明らかにできなかった。

そもそも混練とは、高分子を混合し練り上げるプロセスである。そこで問題となるのは、高分子のレオロジーであり、相溶現象であり、諸々の高分子ゆえに生じる現象である。

これはゴム会社で初めて混練を学んだときの指導社員の言葉だ。分配混合や分散混合によるパラダイムとは異なる世界である。

高価な本を読み、巷に常識となっている混練技術の問題に気がついた。すなわち、そもそも高分子のプロセシングとして考察するためのパラダイムがおかしい。

そこで、とりあえず当方が学んだ混練のパラダイムを公開するために本を書いてみた。混練技術者だけでなく、広く高分子の実務に関わる方にも読んでいただきたい。

カテゴリー : 一般 高分子

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2020.02/06 高分子の熱重量分析(4)

高分子の熱重量分析を材料の評価ルーチンとして行い、データ観察を行っていると面白いことに気がつく。

 

例えば、窒素中と空気中の評価結果では、空気中の重量減少速度の方が早いと思いがちだが、これがある温度領域では逆転する現象が観察されたりする。

 

そのような場合に雰囲気ガスの流入速度を変えてやると、窒素中では浮力による誤差が観察されるだけだが、空気中では重量減少速度が変化する。

 

これは高分子の熱分解に酸素が関わっているためで、リン系の難燃剤が添加されていると表れる。

 

何が面白いのかと言うと、単純に右から左へ受け流されるような変化とならない場合がある。このような現象に出会うと、ムーディー勝山の歌について別の側面の面白さが見えてくる。

 

ムーディー勝山の持ち歌には、上から下へ落ちてゆくものを見る男というのがあるそうだ。聞いたことは無いが、右から左にしても上から下にしても、このような取るに足らない点を笑いとする発想に感心する。

 

エントロピーは、自然現象においてただ増加するだけである。これが減少するようなことは、自然現象で起きない。自然界でエントロピーはただひたすら増加する。

 

しかし、化学反応では、触媒が存在すると反応機構が変わり、見かけの活性化エネルギーが下がり、左から右へ変化を促す場合が出てくる。

 

これが不触媒になると、左から右に進行していた反応を止めたりする。リン系の難燃剤は、270℃から350℃の範囲の温度領域で、高分子の脱水反応を促し、二重結合を生成しその後のチャー生成を促進するように働く。

 

しかし、リン系難燃剤の中には、簡単にオルソリン酸を生成して、低温度から活発にこの反応に関与する化合物からそうでない構造の化合物まで存在する。

 

問題となるのは、オルソリン酸が240℃前後に沸点を持っていることだ。すなわち反応に関与しているオルソリン酸は240℃前後で揮発してゆかないが反応に関与していないオルソリン酸は揮発するので、重量減少カーブに影響する。

 

 

 

カテゴリー : 高分子

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2020.02/02 販売好調混練の本

弊社担当分を売り切ることができました。サービス期間にお申し込みされた方に感謝いたします。来週から書店に並ぶかと思われますが、本体4800円です。ゆえにご購入時には5280円となります。弊社でも購入可能ですのでお問い合わせください。但し郵送料180円必要ですの5460円となります。

180円必要となりますが、おそらく書店に注文するよりも弊社に発注をかけられた方が速いかと思います。

カテゴリー : 一般 宣伝 高分子

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2020.02/01 高分子の熱重量分析(3)

TGAで得られたデータには、測定雰囲気等のある測定条件における熱分解速度に関する情報が含まれている。

 

これは等速昇温データでも恒温測定データでも同様であるが、恒温測定データでより精度が高いことをすでに説明した。

 

40年以上前には、Doyl-小沢法とかFreeman-Carol法とかTGAを用いた反応速度論解析法がいろいろな高分子で検証されたが、最近このような方法による実験データを見かけない。

 

いずれの方法も解析に用いた仮説に対応した値が得られたので訳が分からなくなった可能性が高い。

 

このような科学の発展過程を見ると、科学のかかえる問題点を知ることになる。イムレラカトシュが言っていたように肯定証明でいつでも永遠の真理を見出せるとは限らないのだ。

 

そもそも高分子の熱分解機構は、高分子の高次構造の影響を受ける。例えばフェノール樹脂とポリエチルシリケートとの相溶化された前駆体炭化物と相溶化していない前駆体炭化物では、SiC化の反応機構が異なり、その結果が恒温測定データに現れる。

 

すなわち、相溶化された前駆体炭化物ではSiOガス生成がなく、核生成の誘導期間を恒温測定データの曲線に観察できるが、相溶化されていない前駆体炭化物から得られたデータでは、いきなりSiOガス揮発による重量減少曲線となる。

 

これは高次構造のわずかな差でSiC化の反応機構が異なるからで、高分解能の電子顕微鏡観察をしない限り、このわずかな高次構造の違いを観察できない。

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40年以上前にはこのような高分解能な電子顕微鏡が無かったから、科学的に無駄な研究が多数なされた、といえるが、そのような時代を経験しても、科学100%のパラダイムによる開発の効率の悪さに気がつかない。

カテゴリー : 連載 高分子

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2020.01/29 高分子の熱重量分析(2)

TGAには二種の測定モードがある。一つは等速昇温測定であり、もう一つは恒温測定である。

 

前者よりも後者の方が詳細で精度の高いデータが得られる。ゆえにTGAの使い方として、等速昇温測定を行ってから、緻密なデータが必要な時に、特定温度で恒温測定を行う、という手順となる。

 

ちなみに、この両者で測定精度の違いがどのくらいあるか、評価をした経験がある。例えばSiC生成の速度論的解析を行ったときに、活性化エネルギーが等速昇温測定では恒温測定よりも10%から20%高めに得られた。

 

恒温測定で得られた活性化エネルギーの値がSiC中のカーボンの拡散における活性化エネルギーに近かったので、等速昇温測定では誤差が大きくなったと推定している。

 

この時、2000万円かけて室温から2000℃まで1分以内に昇温可能な超高速昇温熱天秤を開発して測定している。それゆえ恒温測定モードの値には自信がある。

 

しかも、反応が起きない1000℃まであらかじめ加温しておいてから恒温測定を行っているので測定データには誘導期間の情報まで現れていた。

 

等速昇温測定では昇温速度が問題となるが、昇温速度を早くすると誤差が大きくなるだけでなく、失われる情報も出てくる。また昇温速度を早くすると測定データは高温度側へシフトする。

 

ゆえに、TGAでは10℃/minよりも遅い昇温速度で測定すべきで、DSCや粘弾性測定もTGAの昇温速度に合わせて測定すると比較できて便利である。

 

また、実務では10℃/minで測定すると600℃まで一時間でできるので都合がよい。

 

注意しなければいけないのは、15℃/minの昇温速度で600℃まで精度よく測定できない製品を使用する時である。

 

TGAは少なくとも昇温速度30℃/minで600℃まで精度よく昇温できる製品を選びたい。

 

その理由は、サンプルの昇温速度がガス流量の影響を受けるからで、ガス流量を多くすると温度が上がりにくくなる。

 

酸素濃度の影響を調べたいときに、酸素濃度の異なるガスを同一ガス流量で測定するのがよいが、実務ではガスの混合比を変えるよりもガス流量を変化させた方が簡便である。

 

補足だが天秤部分の構造により、ガス流量を変化させたときの浮力の影響に違いが現れる機種も存在する点にも注意するように。

 

昔真空理工が浮力の影響を受けにくく昇温速度が速くても精度よく測定可能な赤外線イメージ炉の製品を供給していたが、最近見かけない。

カテゴリー : 電気/電子材料 高分子

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2020.01/28 混練の本

1月末までに料金をお振込み及びお申込みいただきましたお客様には、サービス価格送料及び消費税込み4600円で提供させていただいております。

1月末に出版されましたなら本サービス含めクリスマスサービス等すべて終了させていただきます。

2月以降は本体価格4800円となりますので消費税480円および弊社へお申し込みの場合には送料180円が必要となります。合計5460円となります。

是非今月中のサービス価格をご利用ください。

本書は実務における高分子について勉強したい方にも役立つ内容になっています。

カテゴリー : 一般 宣伝 電子出版 高分子

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2020.01/27 高分子の熱重量分析(1)

最近は分析機器が進歩し、高分子の構造分析も昔より便利になった。しかし、便利な装置は皆高価であり1000万円以上する。

 

熱重量分析(TGA)は、600万円もだせば解析ソフトウェアーまで揃った立派な装置を買えるが、最近企業の実験室に見かけないことがある。

 

1970年前後には、TGAを用いた研究が盛んに行われており、高分子材料の研究には欠かせない分析装置の一つで、実験室に何台もあった。

 

TGAやDSCの問題の一つとして、分析結果に機種の差異が現れる。ゆえに科学的解析装置として敬遠される研究者もいる。

 

また、熱分析結果をもとに論理を展開すると時代遅れとばかりに論理全体を否定する科学バカな研究者もいる。このような研究者は熱分析装置が経済的に迅速なデータが得られる評価解析装置と言う側面を忘れている。

 

粘弾性測定装置まで熱分析装置とみなせば、この装置と、DSC、TGAの3種を揃えることにより、高分子を階層的に評価解析できる。

 

この3種の装置において、TGAは、高分子の一次構造や側鎖の情報など最下層の情報を測定できる。

カテゴリー : 高分子

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2020.01/17 混練の本

本書は学術書ではない。混練について考えるときに必要な知識を整理してまとめた本である。2005年に混練の基盤技術も無い会社で、半年以内に混練プラントを建設しなければいけなくなったときに当方が読みたかった内容である。

当時8万円前後の混練に関する本や高価なシミュレーションソフトを購入したがいずれも役に立たなかった。本については自分の金で購入したので問題ないが、シミュレーションソフトは会社の経費で購入したので何らかの成果を出さなくてはいけないと思い、とりあえず結果を出したが、混練工場が稼働後だった。

驚いたことにゴム会社新入社員時代の手帳に書かれていた内容で今でも安定生産の行われているプラントができてしまったのである。そしてその手帳の内容は、8万円前後の本に書かれていたパラダイムと大きく異なる。

たまたま、ゴムタイムズ社から講演依頼があり、混練の講演をしたら、それを出版しようという話になった。これが、この本の背景である。40年前の知識に最新の高分子の知識を加えた体系として構成している。混練という技術のプロパティーを考慮し形式知だけでなく経験知も躊躇なく盛り込んでいる。

混練のプロからハンバーグや餃子をおいしく作りたいと考えている主婦まで一読の価値がある、と思っている。

また、高分子について勉強しようという方にも、役立つと思っている。

出版前のサービス価格を設定していますので弊社へお問い合わせください。

カテゴリー : 一般 宣伝 電子出版 電気/電子材料 高分子

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2020.01/10 iPS細胞の異常

「再生医療用のiPS細胞を備蓄する京都大iPS細胞研究所のストック事業で、出荷したiPS細胞の一部を目的の細胞に分化させた際、がん化に関連する遺伝子異常や、染色体の異常が起きていた。」

 

これは昨日WEBニュースで見つけた記事だが、書かれた内容から深刻な問題と思っている。

 

すなわち、京大の関係する研究者たちが、QCの実務について知らない可能性があり、さらには「米スタンフォード大医学部の遺伝学部長を務めるマイケル・スナイダー教授は「臨床用の細胞でのがん関連遺伝子の変異は極めて重大だと考えられる。事実を公表し、オープンな場で評価する必要がある」と指摘する。」

 

いくら研究段階とはいえ、事実の公表だけではだめである。すべての作業の標準書を作成し、それらをオープンにして議論する覚悟が必要だ。

 

おそらく研究者の中には、研究作業におけるノウハウを言いたくない場合も出てくる。あるいは、作業についてダミーの作業を書く研究者も出てくるかもしれない。

 

研究者を信じていないわけではなく、研究者が勝手な判断をする危険があるということだ。

 

メーカーでQCの実務を担当した人なら理解できるかもしれないが、作業標準書とは愚直なまでに細かく記載する。それがiPS細胞の場合に、研究者全員ができるかどうかである。

 

STAP細胞の時の騒動を思い出していただきたい。いい加減な手順書に対してだれも注意していなかったばかりか、作業記録も取られていなかった事実が存在する。

 

実務経験者ならば異常と感じる状態が、研究者集団の中では異常と感じない事例をSTAP細胞の騒動で学んだはずである。

 

この問題では、単にエラーの事実を公表するだけでなく、すべての作業標準書を作成し、それをオープンにする必要がある。それができなければiPS細胞事業化はうまくゆかない。

カテゴリー : 一般 高分子

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2020.01/07 混練の本

今年3月に混練ハンドブックが4800円で発売され、書店に並びますが、1月中はサービス価格消費税送料込み4600円で予約受付中です。

1月25日までにお申し込みの方に限り、1月末に弊社から発送いたします。お問い合わせください。

カテゴリー : 一般 宣伝 電子出版 高分子

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