高分子の難燃化技術はアカデミアで取り扱いにくいテーマである。燃焼は酸化反応の急激に進行する現象だが、急激に不均一に進行するので再現性のあるモデルをどのように立案し、それを解くのかという難しい問題がある。
この問題は、難燃性の評価技術についても同様で、結局高分子の用途に応じていろいろな規格が生まれてくる背景になっている。今となっては昔の話だが、建築研究所が科学的に研究して得られた結論を用いて制定した建築用高分子発泡体の難燃化規格があった。ところがこの規格に合格した材料が原因で大火になった事件が起き問題となったが、これは火災と言う現象において科学が万能では無かったことを示した事件である。
まず、
10月に豊富な実務経験に基づく難燃化技術について、2件講演会を企画しています。
ご興味のある方は、弊社へお問い合わせ、並びにお申込みいただければ、特典がございます。
特典その1:考案されたばかりの高分子の難燃化システムの情報が得られます。
特典その2:電子ブック「高分子のツボ」を進呈します。
という宣伝をさせていただきましたが、このたび、難燃助剤として高い効果のある新規化合物を開発しました。この化合物の特徴として、難燃剤の添加で問題になる樹脂の変色が軽減される実験結果が見つかっています。まだ開発されたばかりで、今後応用事例を増やしながらこの新難燃化システムの第一の特徴と言えるように開発を進めたいと思っています。
なお難燃剤セミナーは10月上旬と下旬に企画されており、難燃化技術の基本的な内容は共通ですが、それぞれの講義の趣旨は異なりますので両方を受けていただくと、難燃化技術のノウハウの全体像がご理解いただけます。もちろん片方だけでも他社の1日のセミナー同様以上の受講効果はございます。このようにセミナーを二種企画しました背景は、異なる視点でこの技術を眺めると見えてくるものがあるからです。二種受講される方には割引特典が付きます。ぜひご検討ください。
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SiCの反応機構について、1982年ごろの状況はすでに解明されている、という意見と不明点がある、という見解にわかれていた。これに近い問題として焼結反応についても同様に二つの見解があった。
原因は、セラミックスの研究が結果として生じた現象を中心にした科学として発展してきたところにあり、有機合成科学で大きな成果をあげた遷移状態の考察にエネルギーが割かれていなかった。
もちろん、セラミックスでも遷移状態を扱った研究もあったが、それが少なかった時代である。当時学会誌上を賑わした焼結理論の議論を見ていてもその状況を理解できた。過去の焼結理論を擁護する優秀な研究者の見解に遷移状態の考察を単なる速度論の問題と切り捨てる考え方すらあった。
少なくとも当時は、過去に発表された論文だけを引用してすべてを説明できるような状況ではなく、むしろそのような状況を素直にカオス状態と認識し、新たなテーマを見出す、あるいは最低限でも問題意識を持たなければならない。のんきに過去の論文の解説をしていては終わっているのだ。
ここで原子の拡散に着目して大きなテーマ設定をできる人は、ノーベル賞を受賞できるぐらいの能力を有しており、そして並みの能力の研究者は、問題意識を持ち問題設定してその問題を解く。それ以下は何もしない人だ。すなわち、終わっている研究者だ。
当方は並みの能力だったので、それまで公開されていたSiCの反応機構に疑問を持ち、反応速度論による解析を企画し、問題設定し、それを解いて学位論文にしたのだ。
解いてみて、新たな疑問が生まれた。そして本来設定すべき研究テーマも見えてきたが、当方が目指していたのは技術者であり研究者ではなかったので、趣味として進めることとして、それ以上の研究を企業で行っていない。ゴム会社ではただひたすら事業化を目指した。
小生の出したデータを基に論文を書かれた某大学の先生は、ひどいことにそれっきりである。せっかくそのあとに面白い研究フィールドが開けているのに新たなテーマ設定をすることなく粛々と小生のデータで論文を書いておられた。このような研究者は終わっているのである。
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築地移転問題について、WEBでは賛否両論である。高額な費用が発生する恐れがあるのに、何故小池知事は延期を決断したのか。それは環境問題の本質を知事は分かっているからである。
環境問題は、現在の福島原発の事例を見れば分かるように、問題が露見したときに天文学的な費用が発生する性質がある。すなわち、ここで延期することにより費用が発生したとしても、問題を抱えたまま将来に負の遺産として残すことに比べれば経済的なのである。
そこへ盛土の問題が出てきた。すなわち、本来盛土がされているべき所に盛土がされていなかった。ものすごく大きな問題であるが、WEBには、下記説明を掲げ、小池都知事のヒステリーと説明している人がいる。
以下はその記事の一部をそのまま抜粋したものであるが、この「頭の良い有識者」の見当違いを書くことになるので名前は伏せる。さらにこの人は間違った問題設定に対する自分の答えに酔って舞い上がっていて、かなり恥ずかしい。ただし、正しい問題がわからない人には受けるのかもしれない。
1) 07年5月(準備会合は07年3月)から08年7月にかけて、親会議である平田座長による「土壌汚染対策専門家会議(以下、専門家会議)」で2mの土壌入れ替えを行い、2.5mの盛り土を行うことを公開で決めた。
2) この専門家会議の結論を実施する子会議の「技術会議」(実施・施工会議)において、08年8月から14年9月までの期間に設置されていたが、なぜか地下水のモニタリングや汚染物質の遮蔽のため建物の地下に約5mの空洞を置く工法を決めて施工した(もちろん汚染土壌は2mから2.4m除去)
3) この子会議の結論は、すでに親会議である専門家会議が08年7月で解散していたため、子会議の議事として満了し、親の専門家会議には報告されなかった(だって解散してるから)。
4) その専門家会議の資料を見た「外部有識者」が、建築終了後の図面を見て「建屋の下に盛り土があったはずだ! 安全性が問題だ!」と小池百合子女史に近しい某氏に焚き付ける。実際、概要の図面自体は盛り土の上に建屋があるように見える。
5) 話を聞いた小池百合子女史、無事ヒステリー発症。都職員に推移の確認をきちんとすることなく記者会見に突入し、カーニバル発生。
以上は、WEBに載っていた記事からそのままコピー&ペーストしたものである。批判ではなく「これは、頭の良い人が成果を出せない事例」として用いるので出典は伏せる。但し繰り返すが上記の部分は当方の見解ではない、頭の良い人が問題設定を間違えた恥ずかしい事例である。
この筆者は、以上の説明をして、盛土問題を大した問題ではないのに小池知事がヒステリーで騒ぎ、経済的損失を大きくしている、と述べているが、そもそも都職員が上記経緯はもちろん,盛土を行わず空洞にしていたことまで都民に説明していないことが大問題なのだ。
また、上記説明には環境問題の心配が無いという証拠についてどこにも書かれていない。上記説明は、盛土をせずに地下を空洞にして建設した経緯を述べているに過ぎず、小池知事が問題としている、「都民の食の安全安心」について疑問を払拭できる内容を何も語っていない。
「間違った問題を正しく解いてもそれは正しい解を導かない」とか「頭の良い人が成果を出せない」とか故ドラッカーはその著書で「頭の良い人の問題」を指摘している。ここは、愚直に正しい「環境へ影響を与える問題」を探すことが重要である。
「安全、安心」の問題は、「絶対的正解を出すことが難しい問題」である。福島原発の問題で国民がおとなしくしているのは、優秀な原子力科学者達に騙されてしまったからである。皆が納得して問題が起きた以上あきらめなければいけないので、黙っているだけである。頭の良い人が間違った問題に対して素晴らしい答えを導いたとしても、設定された問題が間違っておれば素晴らしい答えも役に立たない。11月の講演ではこの辺りも講義する。
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先日研究論文を並べてSiCの反応機構を論じる先生を「終わっている研究者」と書いたことについて質問が来た。おそらく傲慢と誤解されたのかもしれないが、なぜ「終わっている研究者」と表現したのかその理由を述べる。
評論家の先生に反応速度論のペーパーでセカンドオーサーにされたこともあり、はっきり書くが、過去の論文についてただ解説するだけならば、研究者ではなく評論家である。すなわち研究の評論家は、研究者ではない。
研究者の能力として総説が書けることを重視しているアカデミアの先生がおられるが、総説が書けるのは当たり前で、そこから新たな研究の方向性を示し、従来にない斬新な研究テーマを企画立案できてこそ優秀な研究者なのだ。
大学の卒論研究では、大変優秀な先生に指導され、また周囲の先輩の学生も優秀だったので、優秀な研究者とはどのようなものか、さらにはSTAP細胞で問題になった研究者の倫理について自然と学べる環境だった。
「研究者の倫理」を自然に学べない環境は研究所としてレベルが低い。ましてや企業研究者が相談してきたデータで勝手に論文を出すようなアカデミアの研究者は最低である。このような研究者の指導では、社会で問題を起こす似非科学者を生み出すことになる。
さて、優秀な研究者とは、高い倫理観に基づき、社会に貢献しうる有益なテーマ設定ができる人のことである。公開された論文の評論をうまくする人のことではない。ましてや、研究データを科学知識に基づきうまくまとめる人でもない。
研究者の仕事として一番難しいのは、複雑怪奇な自然現象から人類に役立つ真理を導き出すような問題設定ができて、さらにそれら問題の集合体あるいは共通コンセプトをテーマとして設定する仕事である。
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浜名湖はウナギの養殖が盛んで、観光みやげはウナギにちなむ物品が多い。名古屋駅で売られなくなったうなぎパイもその一つである。JR東海は浜名湖土産を理由に名古屋駅でうなぎパイの取り扱いを中止した、という記事を見つけた。
新幹線の中では販売しているので問題はないという見解が、WEBを探したら載っていた。とんでもない話である。浜名湖土産のうなぎパイを名古屋駅で販売するのは少なくとも40年以上の歴史があり、当方が子供の頃から名古屋駅の定番の浜名湖土産であった。ひよこを東京駅で販売しているのと同じだ。なぜ赤福やながもちが販売できてうなぎパイがだめなのか。
どこかに陰謀めいた裏の話が出ていないか探したけれど見つからなかった。例えばうなぎパイには、ウナギのエキスが入っていることになっているが、それが入っていないと判明したので取り扱いを辞めたとかいう話を期待した。
どこにもそのような記事が出ていないので、ウナギエキスはわずかながら入っているのだろうと思う。源氏パイや不二家のホームパイよりも美味で独特の味がする。パイ生地の練り方がカオス混合であるが、プラント立ち上げの願掛けの食べ物としてパイ関係はふさわしい。
中間転写ベルトのコンパウンド工場を立ち上げるために10年ほど前、毎日豊川から袋井へ通う生活を3ヶ月ほど続けた。浜名湖のドライブインにはよく立ち寄り、袋入りの安いうなぎパイを買って帰った。
安くても正真正銘のうなぎパイで小腹の空いたおなかにはごちそうだった。豊川に着くと開化亭の白ラーメン大盛りを食べていたので不健康な毎日だった。単身赴任は自炊生活を習慣にしていたが、コンパウンドのプラントを立ち上げているときには自炊の時間が無かった。
浜名湖のドライブインに、平日は作業着の人が比較的多かった。当方も作業着だったので気楽に徘徊できた。そこで某会社磐田工場のSiCウェハーのプラントの噂話を聞いた。外で仕事の話をするのは注意しなくてはいけない。その道に詳しい人には、ちょっとした小声の話でも耳に届いてしまう。
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当方の所属している団体の一つで旅の本を出版するという。そのための一節を執筆するにあたり、愛知県を先月取材した。名古屋は当方の故郷だが、両親も亡くなったため実家を整理したので生活の拠点が無くなり朝早くから一日かけて日帰りの取材となった。
生活の拠点は無くなったが、思い出の地は幾つかあり、そこでデートすると恋は実らない、という伝説がある東山公園はその一つだった。しかし、伝説ではなく事実であることを体験してから行かなくなったが、名古屋大学のすぐ裏手の歩いて行ける距離に位置していることをこの取材で初めて知った。
学生時代にグラウンドでテニスなどをしていたときに、動物の声が聞こえており、近くにあることを知っていたが、歩いても行ける距離であることを発見した。昔は気の利いた散策のできる場所が少なかったので東山動物園はちょっとした繁華街だったが、今は平日閑古鳥が動物と一緒に鳴いている。
8月の暑い日なのでお客が少ないのかもしれないが、旅の本で取り上げることをやめた。地下鉄東山線で名古屋駅に出て徒歩12分でノリタケの森に着く。そこは東山動物園とは少し異なった趣のデートスポット(?)で、暑い日差しの中、日傘をさして相合い傘で歩くアベックが多い。但し平均年齢は60を超えている。
ノリタケの森には無料ギャラリーもあり、芸術の秋に向けて人で賑わうと思われるが、今回購入した旅行のガイドブックに取り上げられていない。旅の本では、この地を中心に取り上げて書くことにした。
帰りにお土産を買おうと駅の土産店を何件か見て歩いたが、有名な「夜のお菓子」が無い!売り切れかと思ったら名古屋土産ではないから名古屋駅に置いていないという。しかし、伊勢の名物「赤福餅」が置いてあるからおかしな話だ。なが餅もある。三重県の名物ならばOKで静岡県がダメだというのはどのような理由だろう?愛知県知事と静岡県知事とがけんかしたのか?
先日大阪府知事は小池知事に冷たい、という橋下氏の発言が記事になっていた。昔名古屋駅の定番だった土産物の一つ「うなぎパイ」が突然消えた珍事はどのような理由だろう。時間があるときに調査したい。
ところで、名古屋名物ならばういろうが有名だが、両口屋の千成りはどら焼きの最高峰だと思う。えびせんのゆかりもおいしいが、うなぎパイは方向性が異なるお菓子である。うなぎパイを名古屋で販売しても、それが浜名湖土産であることを誰でも知っている。是非名古屋駅の土産物店に、また、並べて欲しい。
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高分子材料は熱伝導性が悪い。ゆえに熱伝導性を向上するためには、熱伝導性の良好な微粒子を添加することになる。この時にもパーコレーション転移が問題となる。ただ、絶縁体である高分子に導電性を賦与する場合と異なるのは、微粒子の物性があまり大きく影響しない(注)。
すなわち、ある微粒子Aと熱伝導性が20倍30倍良好な微粒子Bとを高分子に添加してその熱伝導性の変化を比較しても、同じような挙動を示す。あたかも微粒子の熱伝導性の差の影響が無いような変化である。
あるセミナーに参加した時には、熱伝導性樹脂を設計する時に微粒子の熱伝導性はあまり影響しない、とはっきり言われた。熱伝導性樹脂を開発された経験のある方は、大抵は同様の体験をしている。
導電性の場合とどこが異なるのかと言うと、電子伝導ではトンネル効果で微粒子の接触抵抗の影響が小さくなるが、すなわち接触していなくてもホッピング伝導で電流は流れるが、フォノンではトンネル効果を利用できないので、十分な接触が無いと伝熱ができないという説明がもっともらしい。
すなわち、熱伝導性樹脂では微粒子どおしの接触状態が重要になる。そこで、粒度分布を制御したりして熱伝導を改善する、というアイデアが生まれ、過去にそのような発明が公開されたりしている。
しかし、それでも大きな改善は難しいし、このアイデアでは力学物性の制御が難しくなる場合も出てくる。そこで高分子そのものの熱伝導性を改良しようというアイデアが生まれ、幾つか熱伝導性の良好な高分子が開発されている。ただこのような高分子はえてして他の物性がダメな場合があり、結局汎用高分子に熱伝導性フィラーの分散技術の開発となる。またコストも安くなる。
(注)絶縁体と導電体では、材料の電気抵抗は10の14乗倍異なる。しかし、材料の熱伝導率の差はせいぜい10000倍程度である。ここでは、フィラーの電気抵抗を10倍、1000倍と変えるとパーコレーション転移の様子が大きく変化するが、フィラーの熱伝導率を10倍、1000倍と変えても同じようなパーコレーションの様子を示すという意味である。
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材料技術に関し、現代は基礎研究など不要で技術開発だけも良さそうな状況である。当方は研究が必要な領域の開発でも研究を無視してアジャイル開発をしている。しかし、それだから研究は不要と思ってはいない。例えば高分子科学やセラミックスさらには生命科学との学際部分には星の数ほど研究テーマがころがっている。
手前味噌で恐縮だが、高純度のSiC微粉開発を行っていた時に、偶然の結果ではあったが、最適製造条件が見つかり、いきなり量産設備をつくりあげることも可能となり、横型異形プッシャー炉という電気炉の特許も出願していた。この技術の重要なポイントは、SiC化の反応と冷却ゾーンとを間仕切りし、前駆体の反応終了後、別ゾーンで冷却を行うことを可能にする炉の構造である。
前駆体の製造条件も見つかり、SiC化を行う電気炉の設計もできて、技術開発としてほぼ完成に近い段階だった。すなわち、すでに研究は不要と思われた。しかし、それでも2000万円投資して超高温熱天秤を開発し、SiCの合成反応について、速度論的研究を行っている。これは、中部大学渡邉誠先生のご指導で学位論文としてまとめた研究の中心部分である。
なぜ、2000万円もかけて研究を行う必要があったのか。それは、当時SiC化の反応機構がよくわかっていなかったからだ。大学の先生の中には、幾つかの研究論文を並べて、反応機構を説明される人もいた。すなわち研究者として終わっている先生だ。
確かに従来の気相経由の反応機構でSiCの生成を十分に説明できそうな状況だったが、シリカ還元法においてウィスカーと粒子が共存したり、粒子だけ合成できたりする点について、研究データが不足していた。明確に言えば、SiC化の反応機構は当時わかっていた気相成長以外にも少なくとももう一つ反応機構があるように思われた。
有機合成について卒論で研究していた当方の目には、セラミックス研究者の反応機構に関する研究がザル研究に見えた。この点以外に、もし気相成長論が正しければ、当方の発明した前駆体はあまりありがたみの無い発明になる。前駆体法が他のSiC製造プロセスと大きく異なる、あるいはSiC合成のために大きな長所を持っていることを示す必要からもSiC化の反応機構解析は重要な研究だった。
超高温熱天秤を用いた速度論的解析により、フェノール樹脂とポリエチルシリケートとのリアクティブブレンドで合成された前駆体を用いた時のSiC化の反応機構は、気相を経由しない均一固相反応機構であることがわかった。この科学的研究成果から当時公開されていた多数の特許が同じ技術であることも証明でき、前駆体法だけが100%完璧に固相反応を実現できる方法であることも証明できた。そしてこれは前駆体法の簡便な品質管理技術の発明でもあった。
科学に基づく研究は新たな真理を生み出すために重要で、新たな真理が無くても技術開発は可能であるが、新たな真理が無ければその技術の本質を明らかにすることができない。技術の本質がわからなくても市場で安定に機能する製品をタグチメソッドで開発可能であるが、技術の本質がわかることで、本当に大切にしなければいけない技術、伝承すべき技術が明確になってくる。このために企業で研究が必要な時もある。
アカデミアで企業に先んじて研究を進める重要性は、この意味から明確であり、企業の現場から良い研究が生まれる状況をアカデミアは作ってはいけない。それがアカデミアの使命である。アカデミアで新しい真理が企業の技術開発に先行して生まれている状況が、アカデミアのあるべき姿である。SiCの反応速度論に関する投稿論文は、研究を着想からデータ収集まですべて行いながら当方がファーストオーサーになっていない問題がある。おまけに渡邉先生の名はそこには無い。企業研究者は注意すべき点である。
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独身寮の受信料についてどのような結末になったのかここでは書きにくいが、とにかく双方が納得する結論に落ち着くまで、かなりのエネルギーを消費した記憶がある。さらにそれだけのエネルギーを消費しても過払い金の返金を求めるためには訴訟しかない、と言う結果にかなりの理不尽を憶えた。
妥当なところでまとまったので、寮の管理人からは、いつまでも独身寮にいてください、ご協力ありがとう、と感謝されたが、受信料の結末以上に素直に喜べなかった。
もし受信機全機種からNHKの受信料を徴収したいとNHKが真剣に考えているならば、NHKは受信機全機種を管理すべきである。いまや放送は双方向になっており、技術的に可能なはずだ。そして受信料の支払いのない受信機には電波を受信できないようにロックしたら良いのではないか。
以前NHKの電波だけを受信できなくする受信機の発明が公開されていたが、普及していない。もしこれが普及したときにNHKの受信料支払いはどのように扱われるのだろうか。
NHKの受信ができない受信機では、受信料を支払わなくても良い、ということになったら、恐らく国民の大半はNHKを受信できない受信機を設置するようになるだろう。インターネットが普及しTVの視聴率が落ちている上に、いまやNHKの存在価値は災害情報だけである。
もし携帯用ワンセグでも受信料を支払うことになれば、おそらくワンセグ機能が付いていない携帯を選ぶ人も出てくるのではないか。iPhoneにはTVの受信機能がないのでこのシェアーが伸びる可能性がある。この裁判の行方は、どちらの結論になってもNHKにとって良い結果になると思えない。
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「研究者の6割が大学など所属先から支給される個人研究費が年間50万円に満たないことが、文部科学省による研究者約1万人対象のアンケート調査(回答率36%)で分かった。「10万円未満」と答えた研究者も14%おり、厳しい研究環境が浮かんだ。
10年前と比べて「減っている」とする回答は43%で、「おおむね同じ」(28%)や「増えている」(9%)を上回った。国公立大の方が私大より減る傾向が大きく、国立大では「おおむね5割以上減っている」との回答が24%に上った。
文科省学術研究助成課は減少の原因について「収入減などによる大学の経営環境の悪化が要因の一つだろう」と説明。特に国立大では、主な原資となる運営費交付金が過去10年で10%減少しており、その影響が大きいとみられるという。」
以上は、9月5日の毎日新聞の記事である。実は大学の研究費については、一般論で論じると昔から少なく、今が特に少ないわけではない。ただ、この10年文科省が運営費交付金を毎年減額しているのでその影響が大きい。
ところが運営費交付金が毎年減額されていることは分かっていることだから、研究者の数を減らせば良いだけである。それを実行していないので研究費圧迫が起きているのだろう。自助努力が足りない。
企業では容赦ないリストラが行われており、大学だけそれが行われない、というのは世間感覚からずれている。学会には時間の都合がつく限り参加努力をしているが、そこでの発表を見る限り、この研究者は引退した方が良い、と思われる研究がかなりある。学会にもでてこない研究者がいるとも聞いている。
一方で地味ではあるが、大学で是非今後も続けてもらいたい、という研究もあり、弊社が黒字であれば寄付もしたくなるような研究者が何割かいることも確かである。研究者への引退は言いにくいが寄付の申し出はできるので、黒字回復したら、毎年一定額このような研究者に寄付したいと考えている。
本当は儲かっている企業が弊社のような感覚で寄付を目指せば、アカデミアの研究者ももう少し淘汰が進むだろうと思われる。実は40年以上前の研究所ブームの時代は、企業からアカデミアへの寄付が多かった。そして研究費の多い講座は学生の人気が高かった。
また、これは旧無機材質研究所へ留学したときに所長から伺った話だが、故石橋正二郎氏は大阪工業試験場へ年間研究費に匹敵するほどの額を寄付されたという。この話を所長が記憶されており、当時セラミックスフィーバーで留学が難しかった研究所へ無関係の業界人でセラミックスの知識の無い当方だったが受け入れてくださった。
その結果所長や周囲の研究者のご指導もあり高純度SiCの研究を花開かせることができた。石橋正二郎氏という経営者のアカデミアへの寄付という社会貢献は時代を超えて生きていた。この例のように企業のアカデミアへの寄付は余裕があればどんどんすべきだろう。恩を受けた研究者がその恩を未来ある優秀な若人達に機会を与えるという別の形で社会貢献として還元する、このような健全なサイクルが回る社会が理想である。
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